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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2308/2453

第2308話:偽ロリと真ロリのコンビネーション

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんばんはー」

「お招きありがとうございます!」

「やあ、精霊使いと姫ですか。いらっしゃい」


 午後もまた魔境探索という優雅なひと時を過ごしたあと、晩御飯を食べに、うちの子達とたわわ姫を連れてイシュトバーンさん家にやって来た。

 美少女番警備員のノアが言う。


「旦那様が君に相談があるようなんだ」

「らしいねえ。女性トラブル? また右手の病気?」

「何でそうなる?」

「それくらいしかイシュトバーンさんがあたしに相談って思いつかんのだけど」


 だってノアが内容知らないようじゃ、屋敷のお姉さん達がセクハラで辞めたいとかゆー話じゃないんでしょ?

 まあどうでもいいけれども。

 あ、イシュトバーンさん飛んできた。


「こんばんはー」

「本日はお世話になります」

「おう、よく来たな。これ、絵だぜ」

「ありがとう!」


 クリームヒルトさんとシシーちゃんの絵だ。

 偽ロリと真ロリのコンビネーションとも言う。

 姉妹の絵みたいになるかと思えば、必ずしもそうとは言えないな。

 クリームヒルトさんの母性が表現されていて、ちゃんと母娘の絵に見える。

 イシュトバーンさんの絵はすごいなあ。


「とても可愛らしいですね」

「うん、エロ可愛い」

「ちょっとこの絵はどうなんだと思ってるんだぜ」

「何で? メッチャいい絵じゃん」

「二人を別々に描いた方がよかったかと思ってな」

「イシュトバーンさん、やるね」

「ん? 何かあったのか?」


 あったんだよ。


「クリームヒルトさんには同腹の双子の兄ちゃんズがいてさ」

「今まであんたの話に出てこなかったところからすると、大したことのない皇子なんだろ?」

「まあ、モブだね。同じ顔してるのに仲悪くてさ。何でだって聞いたら、生まれた時からおっぱいを取り合う敵同士だからだって。面白いのはそれくらいだったな」

「当たり前の理由じゃねえか。どこが面白いかわからねえ」

「あたしが一人っ子で聞き慣れない理屈だったからかなあ?」


 イシュトバーンさん的には当たり前の理由だったらしい。


「モブ双子皇子はそれぞれ帝国本土の北西部の領主を継ぐことになって、社交シーズンが始まるまでは帝都に帰ってこないんだよ」

「ああ、ダールグリュン家の謹慎明けで、シシー皇女をお披露目に行ったのか」

「そゆこと。行ったのここ。チョップ男爵家領ブラウンシュヴァイク」


 地図を見せて説明する。


「チョップ男爵家当主ルイトポルトさんは、双子皇子とクリームヒルトさんの伯父さんに当たる人ね。この帝国北西部ってのは帝国の穀倉地帯らしいんだけどさ」

「帝国は穀物余ってるだろ」

「現在はね。内乱時代には舞台にならなくて、食物供給を支えたらしいの」

「今は発展から取り残されちまってるってことか」

「うん。帝国北西部の再開発は一つの重要なテーマなんだって。で、地図ではここに山越えの道があるように見えるじゃん?」

「あるように見えるってどういうことだ?」

「この山魔物が多いんだよ。実際にはほぼ使われてない街道なの。ゼムリヤの領主メルヒオールさんが若い頃、この街道を整備しようとしたらしいんだけどさ」

「ははあ、地方領主が力を持つことを良しとしない中央政府に潰されたと」

「バカな話だと思うね。でも今は状況変わってるじゃん? メルヒオールさんの娘が皇妃になったり双子皇子が北西部に婿入りしたりしたから。今日山越え街道の再開通式だったのでした」

「で、その街道の話は絵とどう繋がってくるんだ?」


 焦らないでちょうだいな。


「もちろん街道には魔物除けが設置されてるんだけど、一〇〇%信頼できるものじゃないでしょ?」

「おう、わかる。ドーラでも同じだな」

「ブラウンシュヴァイクで冒険者ギルドを作った人がいるんだよ」

「ほう? 先を見る目があるじゃねえか」

「と、思うじゃん? ところが山も道も封鎖されてて入る人いなかったから、魔物退治できる人いないの」

「何だそりゃ? 未経験者じゃ役に立たねえじゃねえか」

「何とかしてくれっていう感じで領主のルイトポルトさんの方から言われたから、冒険者ギルドの戦闘員を連れて山に入ってさ。レベル一〇以上まで上げてきた。装備が揃えば働けると思うよ」

「いつものレベリングだな?」

「得意技だねえ。で、レベリングにシシーちゃんも連れてったから、ちょっと面白いことになったよ」


 イシュトバーンさんの目がえっちになる。

 いや、いつもえっちか。

 多分シシーちゃん一〇歳くらいになったら、双子皇子二人がかりでも勝てないと思う。


「よく嫌がらなかったな?」

「シシーちゃんは何でも楽しいって子なんだよ。魔物の首刎ねても解体してても、お肉お肉って大喜びしてんの」

「あんたが教えたからだろ」

「違うんだってば。ずっと閉じ込められてたからかなあ? 実に好奇心旺盛。モール虎っていうトラの魔物がいるんだけどさ。乗りたいって言いだしたから、背中に乗せてあげた」

「ええ? 危ねえだろ」

「いや、トラも物わかりのいい子だったわ。人形系魔物の亡骸あげたら喜んで食べてたな。こんな美味いものは食べたことないって」

「わかるんですか?」

「わかるわかる。何かレベルが上がったら、そういうのすごくよくわかるようになった」


 固有能力『閃き』もレベルの影響が大きいのかな?

 レベル九九だった時よりも、今の方がよっぽどよく理解できるようになった。


「シシーちゃんメッチャ興味深い子だから、シシーちゃんだけの絵を描きたいってのはすごく共感できるね。でも今の絵はこれでいいんじゃないかな」

「成長を楽しむってことか?」

「うん。ヴィルと同じくらいの背になったらまた描かせてもらおうよ」


 これもまた楽しみなのだ。


「その関係で今日持ってきたお肉は角ウサギとオニカモシカなのでした」

「早く言えよ。料理人が困るだろうが」

「ごめんね。そーだ、その冒険者ギルド作った人ってのが二〇歳の女性なんだ。地元の網元の娘って話だった」

「美人か?」

「仮面つけてる変な人だよ。でもあたしのカンはイシュトバーンさん好みだと告げている」


 画集の候補でいいと思う。

 今度行った時に顔確認してくるわ。


「ヴィル参上ぬ!」

「お招きありがとう存じます!」

「よーし、よく来た!」


 ヴィルとガルちゃん、クララとたわわ姫も合わせてぎゅー。


「上がってくれ」

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