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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2294/2453

第2294話:サヨ第一皇女

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 うちの子達とともに世界最大のダンジョンの入り口付近の大きな空間にやって来た。

 今日はシンカン帝国の皇帝陛下から使者が来る、あーんどウタマロのお嫁さんが寄越されてくるんじゃないか? っていうイベントの日だ。

 飛びついてきたヴィルとクララをぎゅっとしてやる。


 お、ウタマロの家来達だな。


「姐さん!」

「おっはよー」

「おはようぬ!」

「ウタマロは?」

「そろそろ皇帝陛下から使いが来そうだってことで、準備して待ってるんですぜ」

「そうなんだ? まだ朝早いのにな」


 時間に余裕を持って来たつもりだったんだが。

 カル帝国の艦隊が攻めてきた時も朝からだった。

 帝国ジャンルの人ってのは、どこもかしこも朝早くから働きたがるんだろーか?

 もっとゆっくり昼頃に現れりゃいいと思うのに。

 ま、あたしとしては午前中に用が終われば、午後を有効活用できるわけだが。


「こっちへ来てくだせえ」

「ありがとう。あたし洞窟の外は初めてだわ。楽しみだな」


 今まで買い物も食事も、洞窟入り口の広い空間で済ませてたからな。

 外へ。


「わあ」


 これはすごい。

 メッチャ急勾配の山がぼこぼこあるがな。

 ちょっと見たことない景色だな。


 全体としては山に囲まれた盆地になっている。

 獅子の洞窟の入り口は小高いところにあって、集落全体を見渡せる位置なのだ。


「『獅子の歯』って呼ばれてる山々ですぜ」

「へー『獅子の歯』か。これだけでも見る価値があるなあ。聖地扱いされてる理由も納得だわ」

「でやしょう?」

「そんで思ったよりデカい町だね?」


 山の中の小さい集落なのかと思ったらそんなことないがな。

 結構大きな建物もあるし、レイノスくらいの人口は軽くあるんじゃないの?


「巡礼地でやすからね」

「巡礼地?」

「死ぬまでに一度はシンカンを訪れたいって人は多いんですぜ」

「えっ? この町はシンカンって名前なの?」

「建国神話にも出てくる古い町だぜ」


 つまり獅子信仰の中心地ってことか。

 獅子信仰がどんだけ広まってるか知らんけど、国の名前に獅子を意味する『シンカン帝国』ってつけちゃうくらいだからかなりなんだろう。

 いよいよ聖地ってのが現実味を帯びてくるな。

 もっとも聖地であることが実際にどれほどの重みを持ってるかは、まだ全くわからんけれども。


「一つ聞くけど、前言ってた『獅子の民』ってのは、この町に住んでる人の中でも特別なの?」

「ああ。現人神たる初代の首長を育んだ、元々このシンカンの集落に住んでた一族なんだ。現人神様からこのシンカンの地の守護を申し渡された、という伝説があるんだぜ。あとから寄り集まった連中とは違う。王朝が代わっても帝国となっても、ずっと特別なんだぜ」

「なるほどなー」

「獅子の洞窟に入っていいのも獅子の民だけだ」

「あれ、そーなんだ? あたしみたいな他所者が入っちゃって悪かったね」

「いや、姐さん達は洞窟から出てきたんじゃねえか。入ったわけじゃねえよ」


 謎理論。

 そーか、獅子の民にとってあたしは洞窟から出てきた人なのか。

 実に面白い解釈だなあ。


「長老とウタマロさんが早く来てくれって言ってたんだ」

「りょーかーい」


 ウタマロの元へ。


          ◇


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「来たか、ユーラシア」

「あれ、何なん? お嫁さん迎えるにしては雰囲気硬くない? ひょっとして緊張しちゃってる?」

「少しな」

「で、長老までピリピリしてるのは何でなん? ひょっとして緊張しちゃってる?」

「少しな。様子がおかしいのじゃ」


 皆が整列し、貴人を迎える用意は整っている。

 ウタマロと長老の他にはボンボン父と先触れの兵士かな? がいる。

 先触れの兵士が言う。


「こちらが?」

「先ほど説明した異国の戦士殿じゃ。獅子の洞窟から現れた」

「異国の聖女様って言ってよ。ドーラの美少女精霊使いユーラシアだよ。よろしくね」

「ひやあああああ!」


 握手して悲鳴を上げさせるいつものやつ。

 軽く握っただけだとゆーのに。


「で、何がおかしいの?」

「おいでになるのは今上陛下の第一皇女サヨ様だ」

「えーと、マジでウタマロの婚約者として皇女が送られてくるっていう理解でオーケー?」

「そうだ」

「あれ、すごくない?」


 第一皇女だったらふつーに考えて正妃の娘か、でなくてもかなり重要視されてる存在なんじゃないの?

 ウタマロってかなり期待されてるっぽい?

 先触れの兵士が言う。


「サヨ様は亡くなられた先妃様の唯一の遺児でありまして」

「うわ、またそーゆー設定か。サヨちゃんは先妃様の美貌譲りのすげえ美少女で、皇帝陛下には愛されてるけど後添いの皇妃様には妬まれてる。聖地の傑物とゆー噂のウタマロを重視したい皇帝陛下とサヨちゃんをド田舎に飛ばしたい今の皇妃様の思惑が合わさって、聖地シンカンの集落に送られてくる、で合ってる?」

「そ、その通りで」


 まんまテンプレの設定やないけ。

 しかし事情がめんどくさいな。

 もうちょっとあたしの得意なゴリ押しで解決できるやつが好みなんだけど。


「ユーラシアはさすがだな。やたらと理解が早い」

「美少女だって。ウタマロよかったねえ」

「それ以前に考えねばならんことが多いじゃないか」


 ボンボン父が眉根を寄せる。


「小娘よ。お前の考えでは、集落の発展のためにはウタマロの嫁に国の有力者を迎えるべきだということだったな。条件が難しいではないか」

「今そんなこと言われたってしょうがないじゃん。あの時点ではベストの選択だったし、集落の皆が納得したことだぞ? あたし一人が決めたみたいにゆーな」

「我が娘を連れ合いとした方がよかったのに」

「何言ってんだ、お父様のいけず」


 アハハ。

 でも確かに対応が難しいな。

 どーすべ?


「これもうサヨちゃん側によっぽどの非がないと断れない話だと思っていいのかな?」

「うむ。サヨ様を温かく迎えるのがワシらにできる唯一の手段だろうと思うが、現皇妃様派に煙たがれることになりかねん」

「実に厄介なことになったな。むーん?」

「どうするのだ!」

「どうもこうも、サヨちゃんに会ってみないことには始まらないじゃん」


 全員が頷く。

 事情がうっすらとしか見えてない時点では決めつけられない。

 サヨちゃんがどう考えてるかってこともあるしな?


「む、来たようだ」


 衛兵と輿が見えてきた。

 どうなることやら。

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