第2285話:第二次魔物掃討戦開始
――――――――――三四一日目。
びゅーんと飛んでフワリと降り立つ、クララの見事な飛行魔法だ。
JYパークにやって来た。
「おっはよー」
「おはようぬ!」
「「「ユーラシア!」」」「ユーラシアさん!」
塔の村の三人娘エルレイカリリーのパーティーとルーネがいた。
ギルドからの転移石碑がバッチリ仕事してるってことなのだが、このメンバーがカラーズにいると違和感あるなあ。
皆でぎゅー。
……確かにエルの表情が若干硬いな。
今日は楽しもうぜ。
「遅いではないか」
「ハッハッハッ、主役はあとからやって来るものなんだ」
「我に遅いと言われて何とも思わんのか」
「……寝坊助のリリーに言われたと実感すると、何か来ちゃう」
「何かって何だ」
精神的な負担とゆーかストレスとゆーか自分がダメになった感とゆーか。
もう皆大体到着してるようだな。
「嬢よ。少しいいか」
「おっはよーございまーす」
マウ爺とピンクマンとフェイさんとサブローさんだ。
「ワシが東側の指揮を取ることになった。この地に詳しいサブロー殿の意見を聞きながらな」
「うん、マウさんなら安心だわ。お願いしまーす」
地図を見ながら話し合う。
「どうする? 魔物を南の谷に落として集中攻撃する方法と、むしろ北のクー川支流に追いつつ西へ向かう方法があるが」
「サブローのおっちゃんどう思う?」
「谷って言っても浅いところがたくさんあるんだ。魔物を落とすとさらに南の開拓地が危ねえ。後者のプランで」
「じゃ、そうしよう。誰か飛べるパーティー、ラルフ君がいいかな。空から谷を監視して、谷に元々いるやつとか図らずも転げ落ちちゃったやつを退治してもらおう」
皆が頷く。
ラルフ君が谷を担当してくれれば、さらに南側の開拓地にまで魔物が溢れる可能性はうんと減るだろう。
ピンクマンが言う。
「西のカラーズ側のことなのだが。ここを見てくれ。クー川支流が角度を曲げて北西に向かう地点があるだろう?」
「ふむふむ」
「ここまで前線を押し上げれば少人数で守れる」
「そーだね。フェイさん、これ柵はどうなるの?」
「魔物除けの札付きの杭がある。これを打ち込んでいって、仮の境界としておく。柵はおいおい現在のやつを移築だな」
うんうん、準備も万端だ。
あ、おっぱいさんも来た。
「全員揃いました。ユーラシアさん、挨拶をお願いします」
「あたしでいいのかな?」
皆が頷いてるけれども。
こーゆーのいつもあたしの役だな。
前へ出る。
「皆さん、今日はあたしのために集まってくれてありがとう!」
「違いますよ!」
「あながち間違っちゃいねえ」
アハハ、いつもの掴みだ。楽しいなあ。
「間違いなく世界最高のクオリティの魔物退治だ! つまんないケガしないように。恥ずかしいぞ?」
皆の顔がちょっと引き締まる。
「これほどのメンバーで魔物掃討戦やれることは、今後もうないかもしれないねえ。参加できて嬉しいな」
これは本心だ。
去年の掃討戦の時と比べてどれだけレベルアップしていることか。
特に前回参加してた人達からすると胸熱なんじゃないかな?
とても誇らしい。
「注意しなけりゃならないのは調理班への配慮だけだ! 昼にまた会おう!」
第二次掃討戦開始!
◇
「薙ぎ払い!」
灰の民の村北東部からアレクケスハヤテルーネとともに出撃した。
この面々だと全く心配ないのだが。
アレクが言う。
「ユー姉、黒の民と黄の民が心配なんだけど」
「贅沢な悩みだねえ」
心配がないことはない。
ピンクマンとサフランのコンビはともに後衛職なので、魔物が集中して寄られると危ないとかマジックポイント切れとか。
思ったより状態異常攻撃を使ってくる植物系の魔物が多いから、黄の民の輸送隊員が食らって被害が出てないかとか。
でもなあ。
「心配するのは失礼な気がする」
「そうだぜ。レベルがレベルだぜ?」
「それなー」
結局レベルが全てを解決しそうな場面なのだ。
前回より若干魔物が強いとは言え、参加者大体が上級冒険者だしな?
前回のデカダンスみたいなイレギュラーに強い魔物も確認されてないし、ハッキリ言って楽勝。
「目標のクー川が曲がってる地点までユー姉が先行して、ボク達が北へ向かい黒の民黄の民との合流を急ぐ手はあるよ。逆にユー姉達が北へ行く手も」
「あるね。アレクは心配性だな。最初の予定通り、なるべく討ち漏らしを少なくして目標のクー川が曲がってるとこ目指そう」
先行するあたし達が現地の状況を知っておくことと魔物を片付けておくことが、掃討作戦全体から見ると重要なのだ。
それくらいのこと西側指揮官のピンクマンはわかってるよ。
アレクは少々魔物の討ち漏らしが多くなっても、まず合流して安全と状況の確認をしたいみたいだけど、ピンクマンの思惑を外しちゃ悪いしな。
「ま、あたし達はあたし達のやるべきことを終えようじゃないの」
東へ急ぐ。
◇
「うん、重大問題発生」
目標地点を一早く確保して周辺の魔物を狩っていたら、直にピンクマンとサフラン、さらに眼帯君に率いられた黄の民輸送隊と合流した。
ここまで予定通りではあるのだが。
ピンクマンが聞いてくる。
「重大問題とは何なのだ?」
「うまーいお肉を狩れてないんだよ。ネズミのでっかいやつしかいなかった。これあんまりおいしくないんだよなー」
ヒポポタマウスだったか?
いや、笑い事じゃないんだが。
サフランが言う。
「ユーラシアさん。ヒポポタマウスの肉は醤油にしばらくつけてから焼くとおいしいんですよ」
「そーなの? ネズミをおいしくいただく方法を開発するとは、黒の民侮れんな」
眼帯男こと黄の民ズシェンが言ってくる。
「姐さん。フェイがァ、北辺に杭を打ちながら東へェ向かってやす」
「特に問題ないかな?」
「へェ。魔物も多くないィので」
「ユーラシア、どうする?」
「ピンクマンとサフランはこの場所をキープして、フェイさんが追いつくの待っててくれる? あたし達のパーティープラスルーネはここから真っ直ぐ東に向かうから、アレクケスハヤテは川に沿ってやや北側を東に掃討してってよ。眼帯君の隊は獲物の運搬と討ち漏らしの魔物の退治ね。いいかな?」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」「おうだぬ!」
ユーラシア隊及びふよふよいい子ワクワクルーネ出撃。
さて、ボチボチヴィルを南へ偵察に出すか。




