第228話:反省会始めまーす
フイィィーンシュパパパッ。
ラルフ君家で昼食をいただいてから、目的の地にやって来た。
すなわちラルフ君の持つ新しいクエストの転送先だ。
「うん、大体予想通り」
「そうですか?」
「ラルフ君は掃討戦参加してなかったんだっけな」
転送魔法陣の行く先は『クー川左岸』だった。
ラルフ君のレベルからすると、掃討戦の行われたアルハーン平原のクー川右岸域より強い魔物が出現すると思われる。
ラルフ君はともかく、レベル一桁だと確かにキツいだろうなー。
ドーラの将来を考えると、クー川下流域は全てノーマル人居住域になるべきだ。
多くの人口を支えられる大平野だもんな。
もっとも現在は掃討戦の行われたクー川右岸域の利用さえ検討中の段階だから、ここ左岸にまで手を入れるのは相当先のことになりそう。
「作戦会議を始めまーす。まずラルフ君から。クエスト完了条件を教えてください」
「回復魔法陣の側の立札にも書かれていますが、一五回戦闘に勝利することです」
「共闘の場合、戦闘回数は半分で計算されるとゆーギルドのルールがあるので、今日は三〇回の戦闘をこなす目標になりまーす」
ラルフ君パーティーから三〇回か、という声が聞こえる。
特にどうってことない。
作業だ作業。
「君達のレベルを上げるのが目的なので、別に三〇回なんて遠慮しなくてもいいでーす。適当な時間まで戦っていきましょう」
「「「「えっ?」」」」
顔色が変わった気がするけど、ただの一〇代にありがちな顔面変色期だろ。
そんなものはない?
「戦闘の開始で、オレンジ髪の精霊ダンテがその戦闘の獲得経験値が倍になるスキルをかけます。その後あたしが『薙ぎ払い』を放ちますので、残ったヘロヘロの魔物を寄ってたかって片付けてください。ただし」
ちょっと気を引き締めとくか。
「人形系レア魔物、具体的に言えば踊る人形などが出た場合には全力で防御してください。やつら相手に先手は取れません。しかも飛んでくる攻撃魔法は結構痛いです。油断して連続で魔法食らったりするとやられるぞ? 御注意を」
皆頷いている。
クレイジーパペットの『フレイム』に耐えた経験があるラルフ君は、人形系レアの危険性は身に染みて知ってるだろうけど。
しかしこんなとこにクレイジーパペットほどの人形系が出るわけない。
踊る人形か、せいぜいもう一つ上のクラスの人形系だろう。
油断さえしてなきゃ大丈夫。
「さあ行こうか」
◇
「はい、反省会始めまーす。といっても皆さん優秀でした。何の問題もないっ!」
疲れは見せているが満足げなラルフ君パーティー。
うんうん、よくやったよ。
ラルフ君はクエスト完了含め、二つレベルが上がって一六に、他の三人は一二になる計算だ。
戦闘にも慣れ、連携もうまく取れるようになった。
ここまでレベルが上がれば、かなり楽に戦えるだろう。
ラルフ君の固有能力『威厳』で魔物を委縮させることもできるだろうしな。
「何か質問はあるかな?」
「師匠は人形系レア魔物を普通に倒してましたが、何か秘密がありますか?」
剣士ゴール君が聞いてくる。
いつの間にか君達も師匠呼びなのな。
「人形系レアに効果があるのは、一般に防御力無視系と呼ばれる衝波属性の攻撃だけなんだ。あたしの使ってるパワーカード『アンリミテッド』は衝波属性付きだから、人形系にもダメージが入る理屈」
ラルフ君が聞いてくる。
「自分がそのカードを手に入れれば、人形系を普通に倒せますね?」
「もちろん。ただこのパワーカードは特注だよ。かなりレア素材がないと作れないらしいから、頑張ってね」
「なるほど、一筋縄ではいかない……」
ふふふ、ラルフ君悩め悩め。
「では、我々が人形系を倒すにはどうしたら?」
「人形系を倒すっていう思考方向が実にいいね。冒険者は儲かる魔物を倒さないといけない」
褒めたった。
いやでも掃討戦の時の状況からすると、人形系は出遭ったら逃げるものという考え方が主流みたいだから。
「レベルの低い内は、チュートリアルルームで売ってるスキル『経穴砕き』が唯一の手段だよ。敵単体の魔法防御をかなり下げるっていうバトルスキルなんだけど、必ず一ダメージ与えるっていう特徴があるんだ。全員覚えててもいいと思う」
うんうん、考えてるね。
今日はたまたま踊る人形を四体も倒せたということもあるかもしれない。
人形系レアを倒した時の経験値とドロップ品の効率の良さはよーくわかったろうから。
それにしてもウスマン君のドロップ確率が上がる固有能力すごくね?
四体倒した踊る人形の内、二体がレアドロップの墨珠落としたぞ?
レアドロップ率も明らかに上がってるよね?
黄金皇珠が欲しいんだけど、一緒に魔境行かない?
「師匠の『薙ぎ払い』は購入したスキルですよね? 『五月雨連撃』じゃなくて『薙ぎ払い』なのは何故ですか? ノーコストだからですか?」
「『薙ぎ払い』には武器の持つ攻撃属性が乗るけど『五月雨連撃』には乗らない。つまり人形系レアが複数体出現した時、さっきのパワーカード『アンリミテッド』と『薙ぎ払い』の組み合わせなら一撃で全部倒せるからだよ。『五月雨連撃』に武器の属性は乗らないけど、素の攻撃力は高いし会心は出る。毒とか麻痺とかのステートは『薙ぎ払い』と同じように乗るから、どっちが優れてるとかはないと思う」
会心確率が高くなる固有能力持ちのアトムは、『五月雨連撃』が向いてるんだよな。
ただしうちのパーティーはあたしの『雑魚は往ね』がメイン火力だから、あんまり必要性がないってことはある。
「自分らのパーティーはどういう方向性で行くべきと、師匠はお考えでしょうか?」
ようやく人形系の話題から離れたね。
「当然だけど盾役ゴール君には誰より厚くしなよ。コンセプトは『勘違い四人組』でいいと思う。レベルに困ったら魔境連れてくから頼って。この前ラルフ君連れてったところより内部のドラゴン帯に、もうちょっと経験値効率のいいレア魔物がいるんだ」
「「「「いやいやいやいや!」」」」
『勘違い四人組』を完全スルーするほど魔境に対して遠慮深い。
真面目というか慎重というか臆病というか。
冒険者はもっとガツガツ食いついてもいいと思うんだが。
「じゃあ狩ったクマを持って帰ろうか。おいしいかどうか検証せねば」
遠慮し過ぎは冒険者にとって美徳じゃないと思う。
だから魔境行かない?




