第227話:二仕事終えた気分になろうか
ミッション:盗賊五人を速やかに倒せ。
喜んでー。
とゆーわけで、ラルフ君と二人でカラーズへ至る東北への道をてくてく歩く。
「デートっぽいねえ。ドキドキするよ」
「『身体で払ってもらう』って、自分の身体ですか! だからどうして自分と師匠の二人だけなんですか!」
もームードがぶち壊しじゃないか。
そーでもないか。
傍からは痴話ゲンカみたいに見えるかも。
「だって精霊連れてたらあからさまに怪しいし、ラルフ君とこのメンバーは武器持ってるから論外だし。パワーカード使いは一見手ぶらに見えるからね。男女二人なんて、盗賊にしてみればよだれが出るほどおいしいでしょ」
「師匠一人で十分でしょうに、何で自分を巻き込むんですか!」
「ラルフ君はか弱い女の子を一人で行かせるほど薄情なのか、それともあたしとデートするのが不満なのか、どっちだ?」
「師匠の質問が卑怯過ぎる!」
女一人だと却っておかしいだろ。
よっぽど腕に自信があるのかと、逆に警戒されちゃうかもしれない。
男女だからこそ怪しく見えないんだってばよ。
ちなみにラルフ君パーティーのメンバーとうちの子達は、捕縛用のロープを持ち、物陰に潜んで待機している。
合図すればクララの飛行魔法『フライ』にて飛んでくる手筈だ。
「あたしレイノスからカラーズへの道って初めてなんだよ。しっかりしたいい道だねえ。こんな感じでずっとカラーズまで続くのかな?」
未知の道、なんちゃって。
「カラーズまでに、というかレイノスに近い側に三つの自由開拓民集落があるんです。そこまではこれくらいの道ですよ」
「三つの自由開拓民集落か。ソル君がレイノス東の自由開拓民集落出身って言ってたな。どの集落だかは知らんけど」
「ソールさんはレイノス東の出でしたか。自分は三つの自由開拓民集落より先は行ったことがないんです。道もどうだかわかりません」
なるほど。
でも聖火教徒の巡礼が行き来してるくらいだから、貧弱な道でもないと見た。
「三つの自由開拓民集落群がレイノスに売ってるものって、やっぱり食料が主なのかな?」
「はい、レイノスは消費都市ですから。ドーラ全体の人口も徐々に増えていきますので、食料が一番間違いないと。父が主導して作らせている側面はあります」
「ラルフ君ところのお父さんは有能だねえ」
「……自慢の父です。転送魔法陣が設置され、自分が『アトラスの冒険者』をやってみたいと言った時も、笑って送り出してくれました。母は反対しましたけどね」
「『アトラスの冒険者』はね。視野が広がることとやれることが増えるのがメリットだと思うよ。あたしも『アトラスの冒険者』になる前は、冬越しどうしようかなーくらいしか考えてなかったけど、今は本当にいろんなこと考えるようになった」
「……」
「ラルフ君はパーティー組んでから初めての石板クエストなんでしょ?」
「ええ。リーダーとしてどう立ち回るべきか、悩みはありますね」
「ラルフ君は『威厳』持ちじゃん。今は冒険者として手一杯だろうけど、すぐに余裕出るって」
ラルフ君が天を仰ぐ。
「そんなもんですかね?」
「そんなもんだよ……お出でなすった。思ったより早いね。事前の決め通りに」
「了解です」
左右の草むらから素早く現れた男達に取り囲まれる。
ヒゲ面でいかにもモブ盗賊っぽい。
「何だ、お前達は(棒)」
「きゃあ、怖い(棒)」
「へっへっへっ。真昼間から見せつけてくれるじゃねえか」
「身ぐるみ置いてけ。そうすりゃ勘弁してやるよ」
「いやーん、えっち(棒)」
「悪漢どもめ、そうはいくか(棒)」
「おっと、男の方はまあまあ威圧感あるじゃねえか」
「女連れでオレらに刃向かおうなんざ、甘ちゃん過ぎるがな」
もー想像通り個性のない盗賊で萎える。
あたしのレベルに気付かないんじゃ、あんたらの方が舐め過ぎなんだってばよ。
おかげであたしもラルフ君も演技に身が入らない。
冷静に盗賊どもを観察する。
装備品からすると冒険者崩れみたいだな。
しかし頭目と思われるヒゲ男は、中級冒険者くらいのレベルはありそうだ。
これだとラルフ君の『威厳』の効果はないだろうな。
『薙ぎ払い』じゃ逃げられちゃうか?
「……ラルフ君、防御で耐えて」
レッツファイッ!
盗賊Aの舐めた一撃! ラルフ君が躱す。盗賊頭はニヤニヤしている。盗賊Bの舐めた一撃! ラルフ君がダメージを受ける。盗賊C、盗賊Dは様子を見ている。あたしの雑魚は往ね! はい、それまでよ!
「師匠、何ですか、今のスキルは?」
「レアな必殺技。魔境の魔物みたいに強い相手には効かないんだけどさ。溜め技でごめんよ。盗賊達のレベルが想定より高かったから、半端なスキルだと逃げられそうで」
笛を吹いてクララ達を呼び、縛って猿ぐつわを噛ませてから蘇生魔法をかける。
「こいつらはあたしとラルフ君が転移で運ぶよ。あんた達はクララの飛行魔法で戻っておいで」
「「「「「「了解です!」」」」」」
盗賊五人とともにフレンドで転移の玉を起動、ラルフ君家へ。
「へーいお待ちっ! 盗賊の活け造りだよ!」
「「「早っ!」」」
ラルフ君の両親や警備員を含め、屋敷の者ほとんどが飛び出してきた。
警備員の隊長に指示する。
「盗賊のアジトは潰しといてくれる? 似たようなのがまた住み着いても困るし、もし罠があったら知らずに誰か入った時危ない」
「心得た!」
「お願いしまーす」
ラルフ君パパが話しかけてくる。
「ありがとうございます。いや、迅速な対応で驚きました」
「ラルフ君が働いてくれたから」
「いや、自分は……」
「素晴らしい演技だったよ。『悪漢どもめ、そうはいくか(棒)』」
「棒読み大根ですよ!」
笑いが起きた頃、残りの面々が『フライ』で帰ってきた。
「よーし、じゃあクエスト行こうか」
「「「「えっ?」」」」
ラルフ君パーティーが素っ頓狂な声を上げる。
何か驚くようなことあったかな?
「い、今からですか?」
「あ、何か用あった?」
「い、いや、今日はもう一仕事終えた気分だったので……」
「二仕事終えた気分になろうか」
ラルフ君パパが笑いながら声をかけてくる。
「勤労精神旺盛で大変結構ですな。しかし昼御飯くらい召し上がってはいかがですかな?」
「あっ、ありがとう! 喜んでゴチになりまーす!」
お腹減ってたところだ。
やったぜ!




