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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2268話:トラブルメーカーの異名をほしいままにする

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルとルーネとついでにビバちゃんもぎゅー。

 フェルペダの王宮にやって来た。


「ユーラシア」

「グラディウスのおっちゃん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 ややグラディウスさんの顔が緊張気味だな。

 何かあったか?


「ユーラシア、不測の事態が起きたらどうする?」


 おおう、いざという時の打ち合わせか。


「閣下とビバちゃんはグラディウスさんの側から離れないでね。あたしとルーネはガルーダぴー子の世話係だから、ちょっと離れたところにいると思うけど、すぐ飛んでそっちに合流する。逃げるか揉め事に介入するかは様子見て決めよ」

「うむ、命に代えてもお二人はお守りいたす」

「さすがにユーラシア君の指示は的確だな」


 不安げなビバちゃん。

 今日は踊らないのかな?


「ねえ、どういうことなの?」

「モイワチャッカとピラウチは戦争してる国同士じゃん? 些細なきっかけで揉め始めるかもしれんから、何かあった時のために対応決めとこうねってことだよ」

「えっ? 危ないの?」

「ちょっと頭の回る人達なら危ないことないよ。でも両国の代表は初めて会う人達だから、バカさ加減がわからん」


 会談の席上でオラつくということは、敵国と傭兵隊、帝国、フェルペダにケンカを売るということだ。

 何の得もないどころか、戦略的にも戦術的にも自国を不利にしてしまう。

 でも頭に血が上ったアホウは何やらかすかわからんからなあ。

 現に目の前にいるアホメイク王女はやらかした前科があるわけだし。


「もし危ないと思ったら、ビバちゃんも『アイドル』の能力を目一杯解放するんだよ。相手が興奮状態にある時どんだけ効果あるかわからんけど」

「わ、わかったわ」


 まーでもそんなに心配することないと思うよ。

 できる男カムイさんの仕切りだもんな。


「一旦戻るよ」


 新しい転移の玉を起動しホームへ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 『傭兵』の転送先であるモイワチャッカにやってきた。


「おお、タンネトだな」

「懐かしい?」

「そうだな。一〇年ぶりくらいか」

「昔と比べてどう?」

「全然変わってないな。新しい建物も建ってないんじゃないか? 古くなってるだけだ」

「うはー、建てる余裕もないんだろうな」

「タンネトが戦場になってないということもあるな。安心した」


 グラディウスさんはかつて、モイワチャッカ・ピラウチ近辺を遍歴していたことがあるという。

 おそらく五〇を超えるそのレベルも、このあたりに生息する魔物と戦ったことで得られたものなのだろう。


「皆さん、ようこそ」

「隊長さん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 隻腕の傭兵隊長カムイさんだ。

 今日の主役でもある。

 グラディウスさんが不審げな顔をする。


「カムイ、右腕をどうしたんだ?」

「ちょっと落とし前で必要なことがありましてね」

「お主ほどの傭兵がか。残念なことだな」

「ところがそうでもないんですよ。鳥が飛んでますでしょう? 見ててください」


 飛ぶ小鳥をピシッと切り落とすカムイ隊長。

 お見事。

 とゆーかまだあんまり時間経ってないのに、かなりすごいぞ?


「ほう、何だ今のは?」

「精霊使いユーラシアに揃えてもらったドーラの装備品でしてね」

「すげえ使いこなしてるじゃん。ビックリしたよ」

「今のオレにピッタリなんだ」


 よっぽどパワーカードを気に入っていただけたらしい。

 ドーラで普通に売ってるタイプのパワーカードの一覧を渡してやってもいいかもな。


「今日は外で会談なんだ?」

「天気がいいからな。ぴー子のお披露目にいいだろう」

「モイワチャッカとピラウチの代表ももう来ているんだな?」

「ええ。モイワチャッカからはナンバーツーの副書記長が、ピラウチからは……」


 ん? 誰か来た。

 ピラウチの代表団か?


「やあやあ、カムイ殿ではないか。御機嫌よう」

「ヘレグフト陛下自らおいでくださるとは。ありがたきことでございます」

「いやいや、モイワチャッカと対話できる貴重な機会を作ってくれるとはな。さすがは『神の親』だ」


 カムイ隊長と視線を交わす。

 ふむふむ、ピラウチは王様が自ら来たのか。

 そして問題起こすとするとこの人なんだね?

 了解。

 でも王様上機嫌みたいじゃん。


「そちらの方々を紹介してもらえるかな?」

「じゃああたしが。こちらがフェルペダの第一王女ビバちゃんと宰相グラディウスさんだよ」

「おお、有名なビヴァクリスタルアンダンチュロシア王女殿下と高名なグラディウス殿であったか」


 互いに礼を交わす。

 グラディウスさんが高名なのは当然で褒め言葉なんだろうけど、ビバちゃんは何で有名なんだろうな。

 ニュアンスの違いがユーモラスで笑える。


「で、こちらがカル帝国の先帝の第二皇子ドミティウス殿下とその娘ルーネロッテ皇女だよ」

「これはまた遠いところからはるばるようこそ」


 こっちも問題なし。

 基本歓迎されていると思っていい。


「それでそなたは?」

「あたしはドーラの美少女精霊使いユーラシアだよ」

「ドーラ?」

「ユーラシア……」


 あっ、王様の衛兵の中にあたしのこと知ってる人がいるみたい。

 何で東方の小国があたしのことまでチェックしてるのよ?

 聖女ファンかな?


「ふむ、ドーラとは西方外洋の国であろう? 何ゆえこの場におるのだ?」

「あたしは帝国の役人やってるんだ。また帝国とは関係なくて、カムイ隊長のことも知ってるんだよ。その縁で」

「ふむ、今日はモイワチャッカとピラウチにおいて重要な会合なのだ。邪魔するでないぞ」

「おいこら。あたしの重要性がわかってないの、この場で王様だけだからな?」

「何、そうなのか?」

「そうだとゆーのに。疑うなら連れてきた御家来衆に聞いてみ?」


 衛兵はあたしのレベルくらいわかるだろ。

 王様に耳打ちするおそらくは衛兵の隊長。


「ヘレグフト陛下。あの少女はドーラの冒険者にしてヤマタノオロチ退治の勇士にございます。トラブルメーカーの異名をほしいままにする並外れた問題児です。でき得ることならば関わりあいになることなきよう」

「おいこら、全部聞こえてるからな?」


 何だ、トラブルメーカーの異名をほしいままにするって。 

 失礼な王様だと思ったら家来まで失礼だった。

 そして何故閣下ルーネビバちゃんグラディウスさんは含み笑いしているのだ。

 全く解せぬ。

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