第226話:身体で払ってもらう
「自分の実家です」
「ほへー」
フレンド連携で転移の玉を使用、ラルフ君の家に連れてきてもらった。
大豪邸やないけ。
いや、いきなりパワーカード七枚買おうとしてたくらいだから、金持ちだとは思ったけど。
もうちょっと武器・防具屋さんの売り上げに貢献してやってもバチ当たんないな。
「順番に教えてもらおうかな。ここはレイノスのどの辺に当たるの?」
「レイノス東門からすぐの郊外です」
「ははあ、いい場所だな」
「ずっと東北へ強歩一日弱行くとカラーズ諸村ですね」
「了解。で、どんなあくどいことしてラルフ君家は金持ちになったの?」
「あくどいって。西側ほどじゃありませんが、レイノス東にも自由開拓民集落がいくつかあるでしょう? 当家がその物品の流通を仲立ちしているのです」
ほう、レイノス東の物流の元締めみたいなことしてるんだな?
好都合じゃないか。
カラーズの産物を売り込む際にも仲介してもらお。
「こちらへどうぞ」
ラルフ君に案内される……何だよ、これ。
「え? 転送魔法陣ですけど。クエスト行くんですよね?」
「クエストはあと! まずラルフ君の御両親に挨拶させなよ」
「なるほど! さすが師匠」
ぞろぞろと一行はラルフ君の後ろをついて行く。
やたらとデカい玄関だ。
「お坊ちゃま、お帰りなさいませ」
「うん、父様と母様はいるかい?」
「はい、御在宅にございます」
広い廊下を真っ直ぐ行く。
……ふむ、結構レベルの高い護衛を揃えてるな。
大きな屋敷だから当然と言えば当然か。
レイノス市街に比べりゃ治安も悪いだろうしな。
突き当りに大きなドアがある。
「父様、母様、ラルフただいま帰りました。自分のパーティーメンバーと、師たるドラゴンスレイヤー、精霊使いのユーラシアさんパーティーをお連れしています」
「入りなさい」
両開きの大きなドアが開けられ、中に通される。
用心棒らしい男にジロジロ見られたが、そんなに魅力的だっただろうか。
悩殺しちゃうぞ?
あたしのレベルを感じて本当か? って思ってるだけだろうけど。
「どうぞこちらへ」
緑髪緑ヒゲの恰幅のいい父親と、上品そうなスリムで長身の母親。
なるほどラルフ君の両親だ。
二人ともあたしに注目している。
美少女だからだな。
「ヨハン・フィルフョーと申します。精霊使いユーラシアさんですな? あの難しいカラーズを取りまとめ、商機を窺っていると聞き及びますが」
「お耳が早い。一流の商人は違いますねえ」
「いかがでしょう? 我々どもにお任せいただければ、カラーズの品々をレイノスに売り込むお手伝いができると思うのですが」
ラルフ君パパもカラーズに目をつけていたか。
話が早い。
物流を任せるのにやぶさかではないが、ゴッソリ中抜きしようったってそーはいくか。
「カラーズ各村と応相談だな。あたしに全権があるわけじゃないんだ。で、カラーズと言っても、各村で事情が異なるの。例えば灰の民の村の農作物は、既にレイノスに入ることが決まってるとか」
パラキアスさんとの約束があるからウソではない。
帝国と戦争になった場合ってことだけどね。
しかし断片的な情報としてこれだけ聞かされれば、目先の利く商人がもうカラーズに入ってるかと焦るに違いない。
「いやいや、精霊使いさんが間に入っていただければ。もちろん我々どもの手数料に関しては勉強させていただきますので」
「うん。ラルフ君の親御さんだから信用してるよ」
口だけとはいえ妥協を引き出し、あんたらの息子は手の内だぞというアピール。
ファーストコンタクトとしては十分な成果だな。
「師匠、そろそろ……」
何だよ、いいところなのに。
あんたあたしの弟子なのに、ラルフ君パパの回し者か?
息子だったわ。
「ラルフちゃん、失礼ですよ? お父様とユーラシアさんの話を邪魔するなんて」
「そうだぞラルフちゃん。商売とクエストのどっちが大事だと思ってるんだ」
「えっ? だって師匠は冒険者……」
「冒険者は片手間!」
「片手間でドラゴンスレイヤー……」
何かブツブツ言ってるけど、ドラゴンスレイヤーはおまけというかついでだとゆーのに。
デカダンス倒してるほうが稼げるから、ドラゴンなんか倒そうと思わなくていいわ。
ラルフ君パパが話を変える。
「まあまあ、今日は有名なユーラシアさんと有意義な話ができてよかったです。ところで商売の話とは別に、冒険者としてのユーラシアさんの手を借りたいのですが」
ちっ、逃げられた。
やるじゃないか。
でも頼りになる商人と知り合いたかったからまーいーや。
「何だろ?」
「実はこの数日、近辺に盗賊が住み着いたという報告がありましてな……」
「盗賊?」
西域に盗賊村があったかと思えば、東でもか。
聖火教の巡礼者が襲われたのが最初らしい。
「すぐに告知し、巡礼者も自由開拓民も集団で動くことを徹底させました。結果、以降の被害は出ておりません。しかしずっとこのままというわけにもいかず、退治したいのです」
ふーん、被害は最小限か。
大したもんだ。
ただあたしの考える交易重視の社会に盗賊は邪魔だ。
「お宅の警備員さん達はかなりの腕のようだけど、それでも不足なんだ?」
「武装した者が出張ると、さっと逃げてしまうのです」
盗賊もバカじゃないな。
しかし被害者が最初の一組しか出ていないとなれば、実入りがなくてヤキモキしてるに違いない。
誘き出せばすぐに決着つくだろ。
「わかった、引き受けるよ。今すぐ退治してくる」
「師匠!」
「ラルフ君、ちょっとは考えようよ。盗賊とクエスト、どっち片付けるのが先だ?」
「……わかりました」
残念そうなラルフ君。
でもきっと時間かかんないぞ?
「詳しい状況知ってる人に話を聞きたいな」
「隊長、説明を」
隊長と呼ばれた警備員の話によると、出没するのはここから東北へ強歩三〇分くらいの道沿い、人数は五人とのこと。
やはり放っといては、将来のカラーズ~レイノス間交易に支障をきたす。
美少女精霊使いの邪魔をするやつは排除してくれる。
「とにかくすぐ逃げるんで埒が明かない。逃げた先からアジトらしきところも発見しているが、迂闊に踏み込むと罠にかかりそうでな」
「賢明だねえ」
ふむ、やっぱり襲ってきたところを返り討ちだな。
「わかった。行ってきまーす」
「あっ、依頼料は……」
「身体で払ってもらうんでいいでーす」




