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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2251話:いい感じにエゴイスティック

「ここ?」

「にゃあ」


 自信満々のネコ様が案内してくれたのは鮮魚店だった。

 一見普通の店に見えるけどな?

 あたしにわからん面白みがあるのだろうか。

 一般にネコは魚が好物だから、魚横丁の中で最も美味い魚の店とゆーことなのかも。


 店主が声をかけてくる。


「おや、ひょっとしてカレンちゃんじゃねえか?」

「お久しぶりです、おじ様」

「おおう」


 どうやら上皇妃様の馴染みの店でござる。

 天下の上皇妃様に向かって『カレンちゃん』なんて言っちゃってるがな。

 ネコ様の案内してくれる店は面白いわ。

 やるなあ。


「陛下を亡くしてやもめ暮らしなんだろう? うちの息子なんてどうだい?」

「あら、嫌ですわ。こんなに大きい子供がいるんですのよ」

「ウルピウス様とリリー様かい? 嫁さん婿さん決まってねえんだろ? 紹介するぜ」


 ハハッ、ウ殿下とリリーがタジタジじゃねーか。

 実に面白いな。

 あたしの中のネコ様の評価がぐんぐん上がっていく。


「お客さんが多いじゃねえか。せっかくだ。刺身を試食していかないかい?」

「あっ、食べる食べる!」

「今が旬のスズキだぜ」

「うまーい! ネコ様も食べる?」


 首を振るネコ様。

 ネコ様は食べない子か。

 じゃあ代わりにぎゅっとしてやろう。

 ネコ様とヴィルをぎゅー。


 上皇妃様が言う。


「ネコ様はプライドが高いですので、他人からもらった魚は食べないんですよ」

「プライド高いことは高いんだろうけど」


 そーゆー設定で食べない理屈をつけているのか。

 面白い子だな。


 おお、スズキの刺身はおいしいじゃないか。

 うちの子達にも食べさせたいから、買ってって夜御飯にしよ。

 あ、ワサビがもうないんだったわ。


「ネコ様、どこかにワサビ売ってる店があったら教えて」

「にゃあにゃあ」

「ヤマワサビじゃない本物のワサビを売ってる? 風味がいいらしいじゃん。食べてみたいな」

「本物のワサビとな?」


 あ、ヴィクトリアさんが食いついた。


「帝都にはほとんど入らないのじゃ」

「そーなんだ? じゃあ帝都の近くで栽培するのは難しいか、誰も目をつけてないってことだな? ビジネスチャンスってどこにでもあるなあ」

「ユーラシアはすぐに商売目線に行くなあ」


 ウルピウス殿下が感心してるのか呆れているのか。

 アンテナは常に張っておきたい商売人聖女のあたし。

 でも本物のワサビは作るの難しいって話だったな。

 ゼムリヤの気候が必要なんだろうか?

 ワサビはヴィクトリアさんもお買い上げだ。


「楽しかったなー」

「ユーラシア、そろそろ昼だぞ。帰らねば」

「じゃもう一ヶ所だけ。ネコ様、ドーラに魚の加工品を何か導入したいんだ。簡単でおいしいやつ教えて」

「にゃあ」


 ウ殿下が怪訝な顔をしている。


「大丈夫なのか? 猫に聞いて」

「そりゃ大丈夫だよ。ネコ様だもの」

「にゃあ」


 メッチャ得意げなネコ様。

 ウ殿下はかなりネコ様の正体を怪しんでいるようだけど、まあ悪い子じゃないわ。

 あたしはもうかなりネコ様セレクションを信用してるわ。

 連れていってくれたのは……。


「何これ?」

「お嬢ちゃんは他所の人かい? これは魚のそぼろだぜ」

「そぼろ?」


 細かくしたクズ肉や魚などを茹でほぐして炒ってバラバラにしたものらしい。

 なるほど、お肉じゃ硬いんで面倒かもしれないけど、魚の身はボロボロになりやすいから作るの簡単だろうな。

 すぐ導入できる。


「傷ついちまった魚は売れねえだろ? 練り物にするかそぼろにするかなんだぜ」

「そーだったか。メッチャ賢いな」

「ゼムリヤでそぼろって言うと魚のものだ。隠れた名物なんだよ」

「あたしはおりこうなので、名物に美味いものなしって言葉を知ってる」

「おいこら! 試食させてやるから訂正しろ!」


 作戦成功。

 ふむ、細かくてパサパサだ。

 ここまで水分飛ばすと、ある程度保存が利きそう。

 あむり。


「あっ、おいしいおいしい。炊いた米にかけたら絶対イケる!」

「美味いだろう? 味付けは色々あるんだが、今のはシンプルに醤油だけのものだ」


 魚臭さがない。

 これならドーラ人でも間違いなく食べられる。

 少し買ってってクララに研究してもらお。

 米食普及のための一手法になりそう。


 さて最後に、と。


「ユーラシア、どこへ行くんだ?」

「目立たないとこだよ」


 つってもこの一行はどうやったって目立つので、結局魚横丁の外へ出る。

 ウ殿下が言う。


「結局何なのだ? その猫は」

「次期辺境侯爵のウ殿下は知ってるべきだよねえ。ネコ様喋れるんでしょ?」

「喋れるにゃあ」


 上皇妃様とヴィクトリア様が驚いてる。

 リリーと黒服は頷いてるし、あ、フィフィも何となく感付いてたか。

 フィフィも一人前の冒険者だなあ。


「ネコ様高位魔族なんでしょ?」

「そうだにゃあ」

「アガレスだぬよ?」

「アガレスっていう名前なのか。つまりネコ様ネコ様って持ち上げられるのが気持ちいいから、魚横丁をナワバリにしてるんだね?」

「そうだにゃあ」


 規模は小さいが、ソロモコのフクちゃんと同じようなシステムだな。

 おそらくナワバリの魚横丁が荒れると承認の感情を摂取できなくなって嫌だから、それとなく危険を排除したりしてると見た。

 つまり魚横丁の守り神的存在になっているとゆーことだ。


「全然問題ないな。むしろいてくれた方がありがたい」

「そうなのか?」

「うん。こんなに目立つネコ様のこと、メルヒオールのじっちゃんが知らないわけないし。なのに放ってあって、あたしも相談されたことないんだから」


 害のない悪魔だと認識しているんだろ。

 一応ウ殿下が知っていてくれればそれでいい。

 魚横丁に関することなら協力できるかもしれない。


「ネコ様が悪魔だったとは……」

「内緒にしといてあげてね。ネコ様悪い悪魔じゃないよ。でも悪魔ってだけで嫌がる人は世の中多いから」

「そうだぬ。多いんだぬ」

「ヴィルとネコ様は仲がいいの?」

「悪くはないにゃあ」

「特別仲がいいわけではないぬ。アガレスが悪魔バレして居づらくなると、わっちまで迷惑を被るんだぬ」

「おおう、いい感じにエゴイスティックだね」


 こういうとこヴィルも悪魔っぽくて面白い。


「ネコ様、今日はありがとうね。お礼だぞ」

「わっちも!」

「よーし、合わせてぎゅー」

「ふにゃあああああああ?」

「ふおおおおおおおおお?」


 ハハッ、可愛いやつらめ。

 よーし、じゃあ宮殿に帰るか。

 お昼御飯だ!

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