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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第224話:君が喜んでくれるのが一番嬉しい

「つみあげたにくくいつくして~やきあげたにくくいはらって~とめどな~い~たれとしお~へらしたはらうるおせ~」


 今晩はチュートリアルルームで焼き肉の日だ。

 バエちゃん絶好調だな。

 お得意の謎詩吟が炸裂している。


「いけるでしょ、この塩」

「控えめに言って最高ね!」


 海の女王にもらった、粉末フルコンブを混ぜた塩だ。


「海底で焼き肉を食べるのは女王だけでさ。他の料理だと塩と別に使った方がいいってことで、この塩女王専用の非売品なんだよね」

「海藻の方は買えるのね?」

「うん。このフルコンブが旨み強いんだけど、メチャメチャ高価」


 バエちゃんが何げなく言う。


「ふうん。でも普通のコンブでも、たくさん混ぜたらおいしいんじゃない?」

「おおう、バエちゃん冴えてるね。これが天才の発想か?」

「隠された才能が漏れ出ちゃった?」


 バエちゃんの言う通りだ。

 普通の乾燥コンブだって旨みがあるはずだから、普及品としてなら十分使えるかもしれないな。

 むしろ普及品を先に押し出しといて、あとから高級品のフルコンブをもったいつけて登場させた方がいいかも。

 まだ海産物をノーマル人市場に売る目処が立ってないけどな。 


「ありがとう。ナイスアイデアだね。いずれ試してみるよ」

「いえいえ、ところでクエストの方はどうなの?」

「順調って言えば順調なんだけど、魔境でドラゴン倒した次の日に至急のクエストが出てさ、至急ってのは困るねえ」


 困ったような顔をするバエちゃん。


「緊急性のあるクエストは、レベルの高い冒険者に振られる傾向があるのよ。ユーちゃんのクエストも、低レベルの冒険者じゃ難しい案件じゃなかった?」

「ムリだったと思う」


 トロルメイジを倒さないと、クエスト完了にならなかったみたいだもんな。

 宝玉どける前は物理攻撃無効だったし。


「至急のクエストはあんまりないはずなのよ」

「だよね。しょっちゅう来たら困るわ」


 特にうちの場合は『地図の石板』を海岸まで取りに行かなきゃいけないから、転送先の確認が遅くなるのだ。

 どーして直接うちに届けてくれないのか。

 今更ながら文句言いたくなる。


「ホンワカするぬぅ」


 あ、クララがヴィルをぎゅーしてる。

 精霊だとヴィルの感覚が違うのかな?

 いや、クララの性格が温和だからかもしれない。


「逆に今度のクエストが時間かかるやつなんだよ。いや、まだ請けるかどうか決まってないけど」

「え? 請けるかどうか決まってないってどういうこと? 石板クエストなんでしょ?」

「ギルド行きの魔法陣が新規にもう一つ設置されてさ。ギルド行ったら、あたしにしか請けられないようなお題があるわけよ。ただその依頼者にどーも問題があるみたい」

「よくわからないのだけれど?」

「つまり単にお題を請けてそれをこなせってことじゃなくて、依頼者のトラブルを含めて何とかしろっていうクエストなんじゃないかと思うんだ」

「難しいのねえ」


 確かに面倒なクエストっぽい。

 でも最終転送先がいいとこかもしれないし、実力者と知り合える機会なのかもしれない。


「お題自体も時間かかるの?」

「期限一ヶ月で希少アイテム持ってこい。相場の五割増しで引き取るぞってやつ」


 バエちゃんが眉を顰める。


「レアアイテムは難しいわよ? 巡り合わせもあるし」

「うん、でもどの魔物が落としてくか、わかってるんだ」

「あ、ドロップアイテムなのね?」

「レア魔物のレアドロップだから、難しいことは難しいんだけどね」


 本に載ってなかったくらいだから、相当ドロップ確率低いのかもしれない。

 けど一ヶ月あればどうにでもなるだろ。

 どの道魔境をガンガン探索するつもりではあるし。


「ユーちゃんだとすぐ拾ってきてクリアかもよ?」

「いや、個数制限がないんだよ。億万長者になるチャンスかと思ってさ、期限まで目一杯時間使ってたくさんゲットしたいな」

「依頼者を破産させると、依頼料もらえなくなるわよ?」

「おっとそれは一大事だ」


 アハハと笑い合う。


「例のテストモンスターの特殊設定のやつ、売り出すって話あったでしょ?」

「覚えてる。殴る蹴る用の変態とばらんすぼおるね」


 元はバエちゃんの運動不足&ストレス解消用の設定だった。

 が、テストモンスターの開発費回収のために一般販売するとかゆー話を聞いたな。

 その続報か。


「あれ大ヒットだって」

「マジか」


 バエちゃんの世界の人、どんだけストレス溜まってるんだ?

 いや、人口が多くて外で身体を動かすことが難しいのかな?


「でね? 私にもボーナスが出ることになったのでした!」

「おーそりゃよかったねえ」

「ごめんね? ユーちゃんが考えたものなのに……」

「君が喜んでくれるのが一番嬉しいのさ」

「いやーん、格好いい!」


 高速クネクネを披露するバエちゃん。

 最初の頃より腰にキレがある気がする。


「アトムー、お酒はその辺にしときなさいよ」

「へーい」


 アトムも段々飲めるようになってる気がするんだよなあ。

 レベルって飲兵衛度にも影響するのか?

 小食だと思ってたダンテも結構食べられるようになってるし、皆成長してるのかな?


「明日、ラルフ君と共闘するんだ」

「見込みありそう?」

「いい顔になってたよ。パーティーメンバーも揃えて、四人編成になってた」

「へえ、あのラルフ君がねえ。また魔境行くの?」

「行きたかったけど全力で断られた」


 バエちゃんが笑う。


「じゃあラルフ君の転送先で?」

「そうそう。でもあたしは正直ラルフ君の実家に興味があるんだよね。レイノス近郊だって言うから」

「レイノスってドーラの首都だっけ?」

「総督府があるから首都なのかな」


 バエちゃんが心配そうに言う。


「興味があるというのは、商売的な意味で?」

「商売的な意味で。今あたしはドーラを発展させたいって気持ちがあるんだ。となると人口の多いレイノスと繋がりが欲しいんだよね」

「冒険者辞めないでね?」

「辞めないぬよ?」

「よしよし、ヴィルよく言った」


 ヴィルのカットイン芸は割と面白いなあ。


「ごちそーさま。今日はもう帰るよ。ヴィル、バエちゃんが不安そうな顔してるから、ぎゅーしてあげなさい」

「わかったぬ! ぎゅー」

「ヴィルちゃん、ありがとう」


 バエちゃんがヴィルをぎゅっと抱きしめ、そして離す。


「また来るよ」

「じゃあね、またね」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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