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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第223話:師匠にお願い

 依頼受付所での用はすんだ。

 充分におっぱいさんを鑑賞した。

 買い取り屋さんで手持ちの不用品を処分でもしようかと思ったところ、背後から声を掛けられる。


「師匠!」


 いい響きだな。

 誰だあたしを人生の師と呼ぶのは?


「ラルフ君じゃないか」


 緑髪のひょろっとした新人冒険者、固有能力『威厳』持ちの子だ。

 ラルフ君に会うのは五日ぶり。

 魔境を連れ回してレベル上げをした日以来だ。

 魔境はちょーっと刺激が強かったのか、あの日は感情の抜け殻みたいになっていた。

 どうなることやらと思ったけど、随分明るい表情になってるじゃないか。


「ヴィルさんもこんにちは」

「こんにちはぬ!」


 ヴィルをさん付けで呼ぶ人は初めてかな。

 うむ、見所がある。


「精霊使いでドラゴンスレイヤーのユーラシア師匠と、その従者である高位魔族のヴィルさんだ」


 ラルフ君が後ろの面々に説明している。

 パーティー組んだのかな。

 あ、悪魔? って声が聞こえてくるけど悪魔ぬよ?


「パーティーを組んだんだね? メンバーを紹介してよ」

「剣士のゴール、敵の攻撃を自分に集め反撃する固有能力持ちで、将来的には盾役を期待してます。魔法剣士のムオリス、風魔法を使えます。アーチャーのウスマン、魔物のドロップ確率が上がる固有能力持ちです」

「「「よろしくお願いします!」」」


 ほう、固有能力持ちで固めたか。

 やるじゃないか、さすが『威厳』持ちだけのことはある。

 こういうパーティー構成だとすると、ラルフ君の役割は後衛ヒーラーになるな。

 いずれは、だけど。


「いいじゃん。ラルフ君、冒険者辞めちゃうんじゃないかって心配してたんだぞ」


 主にバエちゃんの給料が下がらないかの心配だが。

 ラルフ君の心配はまあ。

 冒険者辞めても、レベル一四『威厳』の恩恵は出まくるだろうし。


「御心配おかけしました。もう大丈夫です」


 ラルフ君が頭を下げる。

 目がキラキラしてるし問題ないだろ。

 魔境から帰ってきた時はウサギの糞みたいな目だったからなあ。


「それにしてもウスマン君、ドロップ確率が上がるってすげえ! 魔境一緒に来てくれない?」

「「「「いやいやいやいや!」」」」


 メンバーまで拒否し過ぎだろ。

 ひょっとしてラルフ君から魔境は怖いところだとかゆー、根拠のない話を聞いてるのかな?

 今のあたしは五日前よりかなりレベル上がってるから、より安全な魔境ツアーをお届けしますよ。


「よう、ドラゴンスレイヤーとその弟子」


 愉快なところには必ず首を突っ込む男、ツンツンした銀髪のダンだ。

 コイツが相当ラルフ君をおだてて立ち直らせたんだろうな。


「ダンさん、こんにちは」

「ダン、御苦労さん」


 ダンが少し片側の口角を上げる。

 ラルフ君を再び遊べる玩具に修理してくれてありがとう、とゆーあたしの意図が伝わったようだ。


「ダンから見て、この子達どう思う?」

「レベル差で苦労するな」

「まあねえ」


 ラルフ君が聞いてくる。


「どういうことでしょうか?」

「見たところ、メンバーのレベルは五前後ってとこだろ?」

「クエストは『アトラスの冒険者』のレベルに合わせて配給されるから、いかにラルフ君の『威厳』で魔物を委縮させたとしても厳しいかな。ラルフ君のレベル以上の魔物が出たら手も足も出ないと思う」


 ラルフ君が頷いている。

 気付いてたっぽいな。


「低レベルの内はレベル差で強弱の割合が大きいしな。何か対策練った方がいいぜ」


 ラルフ君パーティーの面々が身を乗り出す。


「どうしたらいいでしょうか?」

「簡単だ、師匠に泣きつけ」

「魔境行く?」

「「「「いやいやいやいや!」」」」


 魔境を知らないはずのメンバーにまでもんのすごく拒否される。

 相当ラルフ君の恐怖が伝染してるんだろうなあ。

 危機意識を発達させるのは冒険者として必要だと、あえて前向きに捉えてみる。


「レベル上げるのが一番簡単なんだけど」

「ユーラシア式強引レベリングが嫌なら、下位の転送魔法陣で弱い魔物と戦ったり、依頼所クエストをこなして経験値上げるのが定番だな。実力の近い冒険者を誘って共闘する手もアリだぜ」


 うむ、ナイスアドバイス。


「地道にやってくのが一番だと思うぜ。インチキするとこんなんになる」

「こら、こっち指差すな。まあでも急ぐと歪みは出るよ。あたしなんかお金足りなくて困ったもん。特にラルフ君ところはスキルスクロールがたくさん必要だろうし」


 特にラルフ君に魔法のスキルスクロールがね。

 こんなに真摯に意見するのは初めてだろうってくらい、あたしとダンがアドバイスする。

 しかしラルフ君には何やら考えがあるようだ。


「師匠には一つ、お願いがあるのですが」

「いいよ、いつにする?」


 ダンが驚いたような顔をする。


「おいおい、どういうことだよ?」

「この展開で頼みがあるっていうなら、ラルフ君の次のクエストに付き合ってくれってことなんでしょ?」

「御名答、さすが師匠です」

「はーん、なるほど?」


 ラルフ君の転送先クエストなら、魔境と比べると危険度は月とスッポン。

 でも今のメンバーのレベルじゃ不安のあるところなんだろう。

 ダンテの『実りある経験』があれば経験値を倍稼げるしな。


「実は自分の今までのクエストには、レベル上げに適当なところがなかったんです。しかし次の転送先には回復魔法陣がありまして」


 おお、なるほど。

 ちょっとレベルが上がれば『威厳』で何とかなるという皮算用だろうな。


「入手したアイテム・素材は全て師匠のもので結構ですので」

「え? いいよ。じゃあ素材はもらうから、その他のアイテムはラルフ君達のもので」

「よろしいのですか?」

「ラルフ君達だってこれからすごくおゼゼが必要なんだぞ?」


 明日午前中にギルドで待ち合わせということにした。


「俺も行きたいところだが……」

「特に面白いことないと思うけど」

「あんたが行くのに、面白いことが起きないわけはないんだよなあ」


 ダンがニヤニヤする。

 変なフラグ立てるなよ。


「回復魔法陣があるところって、クエスト開始時の状態に比して高レベルなんだろ?」

「そーゆー傾向はあるね」

「何があったかあとで聞かせろよ。奢るからさ」

「もー絶対何かあるって確信してるじゃん」

「楽しみになってきたろ?」

「ちょっとだけ」

「ハハッ、じゃあなヴィル」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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