第222話:あたしじゃないと請けられない依頼
フイィィーンシュパパパッ。
「やあ、ユーラシアさん。今日もチャーミングだね。ヴィルちゃんも一緒かい」
「こんにちはー、ポロックさん」
「こんにちはぬ!」
本の世界で肉狩りをして、ギルドへやって来た。
ちなみに本の世界のマスターであるアリスにもパワーカード『刷り込みの白』とバトルスキル『コピー』のことを聞いてみたが、何も情報はなかった。
文献に残されてるもんじゃないらしいな。
謎は深まるが、使い道はもっと気になる。
新しい石板クエスト『ドリフターズギルド・セット』のことをポロックさんに聞いてみるか。
面倒ごとだったら一旦帰っちゃお。
「ポロックさん、あたしん家にギルド行きの二つ目の転送魔法陣が出ちゃったんだよ。どーゆーことなのかなと思って」
「ほう? 珍しいね」
「珍しいけどなくはないんだ?」
「クエストのきっかけはギルドで始まるけど、最終的にどこか別の転送先に振り替わるってことだと思う」
「やっぱそのパターンか」
「新しい転送魔法陣を設置するより、既にある魔法陣の転送先を変えたほうがずっとコストが安いらしいんだ」
コストの問題があるのか。
でもギルドなんてしょっちゅう来るんだから、ギルドで教えてくれりゃよかったのにな。
いや、石板クエストだから、依頼されてるわけじゃない案件なのか?
となるとクエストを探さなきゃいけないのかもしれない。
面白そう。
ポロックさんが言う。
「ユーラシアさんじゃないと請けられそうにない依頼が来ているんだ。サクラさんの話を聞いてみるといいよ」
「あれっ?」
「どうしたんだい?」
「いや、石板クエストは依頼者いないんじゃないのっていう頭があったから、依頼所行ってみろって言われると違和感があるとゆーか」
「ハハッ、依頼者がいても、依頼者以外の人が困ってる場合もあるしね」
「えっ?」
何それ?
どゆこと?
「おっと、依頼者のことは俺も話すことはできないんだ。ごめんね」
「いや、守秘義務もあるだろうから当然だけれども」
「依頼所の件は、ユーラシアさんの石板クエストとは関係ないのかもしれないしね」
「ええ? いよいよわけがわかんなくなっちゃうよ」
「なっちゃうぬ!」
アハハ。
よしよし、ヴィルいい子。
でも確かに石板クエストと依頼所は無関係かもな?
「ともかくまず、サクラさんの話を聞いてみることをお勧めするよ」
「うん。どっちにしろあたしのお仕事みたいだしな。ポロックさん、またねー」
「バイバイぬ!」
ギルド内部へ。
依頼受付所へと、あっ、おっぱいさんが手招きしてら。
あたしも時々おっぱいさんを鑑賞したい気持ちもある。
「こんにちはー」
「こんにちは、ユーラシアさん。ヴィルちゃんもこんにちは」
「すごいお姉さん、こんにちはぬ!」
ヴィルは正直だな。
あたしも正直なので、すごいおっぱいさんと言ってみたい気持ちはある。
でもさすがに失礼だろうからなー。
こんなことで悩める一五歳の乙女って魅力的?
「あたし向けの依頼があるらしいってポロックさんに聞いたんだけど」
「はい。少々お待ちください」
あたしでなきゃ請けられないってどんな依頼だろ?
ドラゴンスレイヤー指定の依頼とかだろうか?
「ワクワクするぬ!」
「よしよし、あたしの気持ちを代弁してくれてありがとう」
「どういたしましてぬ!」
うちの家風に慣れてきたのか、ヴィルがちょっと面白くなってきた気がする。
将来性抜群だ。
おっぱいさんが机の下から依頼書を出してくる。
揺れる。
あ、掲示板に張り出してないんだな?
本当にあたし向けに取っといてくれたみたい。
「こちらです。いかがでしょうか?」
『期限は妖姫の月の末まで。黄金皇珠以上の魔宝玉。相場の五割増しで引き取ることを依頼料とする』
期限は約一ヶ月か。
ふうむ?
「『黄金皇珠以上の魔宝玉』というのは、市場価格が黄金皇珠以上のものってことでいいのかな?」
「結構です。少なくとも魔境トレーニングの転送先をお持ちの冒険者でないと請けられない依頼ですね」
「ふむふむ。逆に言うと上級冒険者なら請けられると思うんだけど、サクラさんがあたし向けだと思った理由は何かな?」
「上級冒険者でも、現在魔境で積極的に活動していらっしゃるのは、ユーラシアさんのパーティーとキーンさんヤリスさんのコンビだけなんですよ」
「確かにお兄さんズよりはあたしのほうが、高級魔宝玉を手に入れられる可能性は高いもんな」
「はい。実際にユーラシアさんは、黄金皇珠をデカダンスのドロップで手に入れたことがあるとも伺っておりますので」
あたしんとこにこの依頼が回ってきた理由はわかった。
ただいつも冷静なおっぱいさんが、ややイライラしているように思える。
とゆーかこの依頼に対してだ。
ヴィルがあたしにひっついてるしな?
「請けていただけますか? 正直期限は厳しいと思いますが」
「依頼者の情報を明かすことはできないんだっけ?」
「ドリフターズギルドの規約上、できかねます」
「……ちょっと請けられないかな」
おっぱいさんがクイッと眼鏡を上げて姿勢を正す。
「理由をお聞かせ願えますか?」
「個数の制限がないじゃん。例えばすんごい魔宝玉を一〇〇個持ってきたとして、この依頼者が正当な依頼料払えるかどうかがわかんない。あたしが損しちゃう。保証なり信用なりがなきゃ請けられないなー」
そーゆー理由が飛び出してくるとは思わなかったか、おっぱいさんが瞠目する。
あれ、おっぱいさんの機嫌が良くなったような気がするな。
つまり問題は依頼者にある?
「保証ないし信用。ユーラシアさんの要求はもっともですね。確認を取ってまいります」
おっぱいさんが微笑を浮かべて言う。
「これは私見ですが、依頼者は間違いなく持ってきただけ払うと言います。もし払えない場合、それを責め立ててやれば、必ずユーラシアさんにとって有益な結果になると思います」
ほう、おっぱいさんが太鼓判を押すからには、依頼者は相当なお金持ちなのかな?
ポロックさんも含みのある言い方してたし、多分依頼者は有名人なんだろう。
関係ないけど、クール眼鏡美人にはサディスティックな物言いが似合うなー。
「わかった、ありがとう。依頼がどうなろうと、魔宝玉集めとく方向でいくよ」
「では一応この依頼書はお持ちください」
「はーい」
おっぱいさんニッコリ。




