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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2210/2453

第2210話:どんなカオスなフリだ

 ――――――――――三三三日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「やあ、精霊使い君。いらっしゃい」


 皇宮にやって来た。

 今日はアンヘルモーセンで通貨単位統一に関する外相級会議だ。

 参加者を連れていかねばならない。

 しかし?


「何かあった?」

「わかるかい?」


 サボリ土魔法使い近衛兵の表情がやや冴えないのだ。

 ちょっと困ったことが起きたって顔だな?

 どーした?


「ドミティウス様だ」

「またかい」

「ルーネロッテ様について」

「またかい。何なんだ。ルーネはいい子だわ」

「いい子だぬよ?」

「ヴィルもこう言ってるわ。ヴィルはウソ吐かないぞ?」

「ハハハ、まあルーネロッテ様はな。ただドミティウス様が、いい子過ぎると仰られてな。一悶着あったんだ」

「そんなことないわ。ルーネだって適当に悪いことも覚えてるわ」

「どっちなんだ」

「どっちもだぬ!」


 アハハと笑い合う。

 両方とも一面の真実ってことだわ。

 しかしお父ちゃん閣下は何を懸念しているのだ?

 閣下は今日の会談で、ある意味主役に近い立場なのだ。

 他所事に気を取られていては困るのだが。

 あたしに都合のいい世界の現出に支障があったらどーする。


「大体お父ちゃん閣下は何を言ってるのよ? いい子過ぎるってどゆこと?」

「いや、俺じゃ詳しいことはわからないから、ドミティウス様本人に聞いてくれよ」


 まー近衛兵の職務じゃないことはわかるけれども。


「昨日、デニス封爵大臣とその息子さんを連れ、ドーラを案内してたんだろう?」

「息子のキーファー君が将来どうするかっていう話でさ。説得するのにドーラが都合よかったね」

「ドーラは魅力的なところなんだろうなあ」

「ド田舎だぞ? キーファー君本人は料理人になりたいみたいだけど、デニスさんの希望通り宮廷魔道士になりそう」

「現役大臣の息子なら、魔道の素質さえあれば宮廷魔道士になれそうだよな」

「サボリ君は宮廷魔道士って目はなかったの? 土魔法使いじゃん」

「考えてもいなかったな。自分が土魔法使いと知ったのは、近衛兵となってからだ」

「最初から知ってれば目指したかも?」

「どうだろう? 魔道研究所って天才ばかりが集まるところだろう? 俺は魔道には全然縁がなかったし、向いてるとも思えないよ。給料の多さには魅かれるけど」


 魔道研究所行くと、天才ばかりというより変人ばかりって気もする。

 宮廷魔道士ってあんまり目指すものじゃないということは伝わった。


「貴族から平民になる人って、問題になっちゃうことが多いんだ? 昨日施政館でそーゆーニュアンスだったから」

「領主貴族と平民とでは求められることが全く違うからな。そもそも汗水垂らして働くという感覚からして、貴族は持たないだろう?」

「あたしの会ってる皇族貴族はすげえ働いてる人が多いんだけど」

「働いてない人には会う機会がないだけなんじゃないか? 例えばハインリヒ様とか」

「ハインリヒ? 誰だっけ? 名前は聞いた覚えあるけど」

「侍女失踪事件の」

「ああ、金髪ブタ男爵か。会ったことないな。舞踏会でもそれらしい脂肪塊は見なかった」

「脂肪塊って、ピッタリ過ぎる表現を」


 金髪ブタ男爵もまさかこんなところで食材扱いされてるとは思うまい。


「爵位を継げない次男以下は、騎士や文官を目指す者が多いな。あとは領主の補佐として家に残るか、あるいは従者コースか。運がよければいいところに婿入り」

「女性は?」

「多かれ少なかれ上流階級の教育とマナーを身につけているわけだろう? 選びさえしなけりゃ嫁ぎ先はあるね。行儀見習いのために侍女として働いていて、後妻や側室に望まれるケースも少なくない」

「わかってきたぞ? 平民になる時の問題って主に男性の事情なんだな?」

「ああ。いつの世も男には厳しい」

「で、お父ちゃん閣下は何て言ってるの?」

「そこが要領を得なくて。又聞きだからなんだろうけど」

「むーん?」


 これはわからんな。

 ルーネがいい子過ぎるとは?

 閣下が何かに気付いているのも、あたしから情報を得ようとしているのも間違いないが……。

 とにかく近衛兵詰め所に到着。


「おっはよー」

「おはようぬ!」


 お父ちゃん閣下と確かニコラウス外務大臣、及び文官二名か。


「ユーラシア君」

「うん、行こうか」

「その前に。昨日の件でデニスが大変感謝していてね。礼をどうしようかって言ってたが」

「いらないよ。デニスさんには前にブタ試験飼育関係で、ギレスベルガー家のゴタゴタを抑えてもらったからさ。あたしも借り作ってたみたいで気持ち悪かったんだ」

「昨日の件についてなのだが」


 そら来た。

 何だ?


「ルーネロッテが大変詳しく説明してくれたのだ」

「報告は大事だね。あたしだとさらにエンターテインメント性を求めるけど」

「今までこんなことはなかった。何かがおかしい」

「えっ?」


 詳しく説明してくれたからおかしいって、えらく寂しいところから感付いてるぞ?

 今日はカルテンブルンナー公爵家でお茶会の日だ。

 ルーネもお父ちゃん閣下に秘密ってことで浮かれてたのかな?


「しかも今日ついて来るって言わなかった」

「ルーネは剣術道場がある日でしょ? 外相級会談はあたしだって部外者なくらいじゃん。ルーネには全然関係ない」

「いいや、絶対におかしい。予の知らない何かが裏で進行している。ユーラシア君は知ってるだろう! 教えろ!」

「どんなカオスなフリだ」


 ニコラウスさん以下の面々が困ってるやないけ。

 会談中この調子でイライラされたら、あたしだってどえらい迷惑だわ。

 どーすべ?


「閣下は鋭いな。あたしもルーネの考えが一〇〇%わかるわけじゃないけど、見当はつく。ダニエラさんから聞いてない?」

「ダニエラ? いや、何も」

「家族で話し合うべき事柄だと思うから、奥さんも娘も閣下に伝えてないならあたしからは言えないな。予言してやろう。閣下にとってショッキングな出来事が午後にあるのだ。ただし結果はショッキングにならないから、心配する必要はない」

「ショッキングな出来事……」

「知らなきゃ知らないですんじゃう程度だってば。会談に集中して」

「わかった」

「……ショッキングな結果にならないといいなあ」

「何か言ったかい?」

「空耳だよ。ヴィル、アンヘルモーセンの聖務局へ飛んでくれる?」

「わかったぬ!」

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