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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2185/2453

第2185話:デニス封爵大臣の用とは?

 ――――――――――三三〇日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「やあ、精霊使い君。いらっしゃい」


 今日はイシュトバーンさんにビバちゃんの絵を描いてもらう日だ。

 ルーネを迎えに皇帝宮殿にやって来た。

 サボリ土魔法使い近衛兵が聞いてくる。


「今日はフェルペダへ行くんだろう? 王女殿下の絵を描きに」

「そうそう。ルーネに聞いた?」

「絵師殿はどうしたんだい?」

「あとだね。ルーネとぎゅーしてるとそれ描かせろって言うもん。面倒でかなわん」


 サボリ君笑ってら。

 でもフェルペダの皆さんを待たせちゃってるし、時間のムダなんだもん。

 あたしは賢いのでちゃんと学習しているのだ。


「施政館から呼び出しがかかっているよ」

「そーなんだ? でもサボリ君の顔からして緊急じゃないんでしょ? 重要な用でもないと見た」

「どうしても俺の顔が判断基準に」

「情報をバラ撒いているからだぬ!」


 ハハッ、顔面体操したってムダだとゆーのに。


「で、何の用だって?」

「一つは君の給料と年金の受け渡しのこと」

「思ったより重要な用だったわ。でも今更かい」

「もう口座を作って振り込んであるそうなんだ。ただ先月は皇帝選や先帝陛下の大葬があったろう? 総務省がバタバタしてて伝え忘れてるんじゃないかって」


 総務大臣は確かエックハルトさんだったか。

 まーでも給料だ年金だなんて大臣がやるような仕事じゃないわ。

 あたしはいつも施政館にいるわけじゃないから、後回しにされちゃってたんだろうな。

 すぐに下ろさなきゃいけないおゼゼでもないし、口座があるのがわかればそれでいいや。


「一つはってことは、まだ他にも用があるって?」

「封爵大臣デニス様からだ。君ゼンメルワイス侯爵家とドレッセル子爵家、それにバルリング伯爵家ペルレ男爵家まで関係した、ややこしい婚約と婚約破棄の話に詳しいだろう? その辺りの情報交換がしたいみたいなんだ」

「デニスさんは仕事熱心だなー」


 職務ではあるんだろうけど、あの人の場合趣味が半分入ってる気がする。


「朝から来てくれってことなんだ。日はいつでもいいらしいが」

「えっ?」


 ラブインフォメーションについてなんてすぐ終わっちゃう話だ。

 朝から来いってことは別の用件があるみたいだが?

 デニスさんがあたしに用ってどういうことだろ?


「デニスさん、他に何か言ってた?」

「いや、そこまでは知らない」

「だよね。デニスさん自身が詰め所まで来たわけじゃあるまいし」


 何だろ?

 絶対に何かあるけど、全然見当がつかないな?


「施政館に呼び出されるなら、仕事の話なんじゃないか?」

「それもそーだな。封爵省のお仕事ってことは、どこぞの貴族が揉めててあたしに連れていってくれってことかな?」

「大いにあり得ると思うよ」


 表に出せない話だから内密にってことか。

 辻褄は合う。

 またどこぞの貴族と知り合いになれるみたいだ。

 嬉しいなあ。

 いつでもいいから朝来てくれって理由はわからんけれども。


 さて、近衛兵詰め所にとうちゃーく。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「ユーラシアさん!」


 飛びついてくるルーネとヴィル。

 いつもの黄金パターンだ。

 よしよし、いい子達だね。


「お茶会の日が決まったんですよ」


 ウルリヒさんの奥さんマヤリーゼさんの主催するお茶会か。

 おそらくハムレット君の嫁候補が集まるやつ。

 ルーネはハムレット君と相性がいいから、婚約者になっても全然問題ないんだけど?


「いつになった?」

「三日後の午後です」

「あ、ちょうどいいな」


 天使国アンヘルモーセンの首都シャムハザイで、通貨単位統一についての外相級会合が行われる日だ。

 外相級とは言っても、お父ちゃん閣下は事務方トップが内定なので当然同行する。

 つまりルーネがお茶会に参加しててもバレないだろうニヤニヤ。


「まーお父ちゃん閣下がウルリヒさんの息子であるハムレット君を気に入るわけないってのは明らかなんだけどさ。ルーネ自身はどうなの?」

「ハムレット様をどう思うかということですか? と、言われても……」

「お茶会の参加者で一番身分が高いのはルーネでしょ? マヤリーゼさんは完全にルーネをターゲットにしてるんだよ。他に参加する令嬢方も、ルーネの目がないんだったら私がっていう気でくると思うんだよね。サボリ君どう思う?」

「え? 俺の意見?」


 興味深そうに聞いてただろうが。

 あんた貴族の事情に詳しいんだから知恵を出せ。


「あたしの見立てで、ルーネとハムレット君の相性がいいのは間違いないんだ。家格もちょうどいいんでしょ?」

「もちろんだ。しかしドミティウス様とウルリヒ様の相性が悪過ぎる。それに……」


 サボリ君は言葉を切ったが、言いたいことはわかる。

 皇帝選に敗北した皇族と決して政府に従順といえない地方の大貴族が婚姻で結ばれたとなると、世間にどういう憶測を生むか?

 あんまり考えたくない事態になるかも。


「サボリ君の懸念はどうにでもなるとするとどうよ?」

「それこそルーネロッテ様とハムレット様のお気持ち次第じゃないか。親同士でぜひにという話じゃないんだし」

「ハムレット君もグイグイ来るタイプじゃないと思うんだよね。とするとルーネの姿勢次第だな。方針を決めていかなきゃいけないよ」

「精霊使い君の言うことももっともです。ルーネロッテ様がある程度態度を決めていかないと、カルテンブルンナー家にも他の令嬢方にも迷惑がかかります」

「さても複雑な恋愛事情。波間に漂う乙女心はいずこに辿り着くのか?」

「完全に面白がってるじゃないか!」

「そりゃそーだ。真剣に決めなきゃいけないことは、傍から見れば大体エンターテインメントだわ」

「大体エンターテインメントだぬ!」


 アハハ。

 さて、ルーネの結論は?


「……どうもハムレット様のお気持ちが見えづらいと言いますか」

「わかる。ハムレット君スカしてるもんな」

「ユーラシアさんは賛成なんですよね?」

「というわけではないよ。ルーネと相性がいいってだけ。あたしはルーネがどう決めても応援するから、お茶会には気楽に行ってらっしゃい」


 頷くルーネ。

 お母ちゃんの意見をよく聞いとくといいよ。

 お父ちゃん閣下の意見は聞いたってムダだから、どうでもいいけど。


「さて行こうか」


 転移の玉を起動して一旦帰宅する。

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