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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2181話:やはりマルーさんはエルを知っている

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おや、アンタかい?」

「ユーラシアさん、いらっしゃい」


 カトマスのマルーさん家にやって来た。

 取り立てて用があったわけじゃないが、ハッキリさせておきたいことがあるのだ。

 好奇心旺盛な美少女精霊使いは真実を追究する、なんちゃって。


「これお土産のお肉と骨とクレソンだよ」

「いつもすまないねい」

「クレソン、ですか?」


 クレソン持ってくるのは初めてだったか。

 ニルエが首かしげてら。

 唐突だったかもしれないな。

 説明しとこ。


「これ魔境に生えてたクレソンでさ」

「ふん。アンタは魔境から食草を持ってくるのかい?」

「一々魔境に取りに行ってるわけじゃないってば。えらく繁殖力が強くて、水辺に植えておけば、ドーラの気候くらいだと冬でも増えるの」

「食用に植えていると」

「移民が大勢来た時の食料対策に有効だから、あちこちに植えてるんだ」

「ああ、なるほど。よく増える食草は移民用にはちょうどいいねい」


 納得してくれたようだ。

 今年は大量に海を渡ってくる移民にどう食べさせるかというのが大きなテーマだから。

 カトマスに住んでるとあんまりピンと来ないかもしれないけど、カラーズでは移民と無縁ではいられないのだ。


「うちで食べるために植えてたやつがわさっと繁殖してたから、少しおすそ分けだよ。炒めてもスープでもサラダでも食べられる」

「ありがとうございます!」


 ニルエに喜んでもらえた。

 マルーさんは野菜をあんまり食べないのかな?

 健康のために食べた方がいいと思うよ。


 マルーさんが言う。


「この前のおかしなメイクの王女様はどうなった? それを伝えに来たんだろう?」


 おかしなメイクか。

 やっぱ第一印象からそーゆー言い方になっちゃうな。

 まーアホメイクもビバちゃんの個性の内だわ。


「バッチリだよ。中級冒険者程度にまでレベル上げてきたんだ。今では完全に『アイドル』をコントロールできる。あとは自分次第だな」

「精神的に不安定だと危ないよ。放っとく気はないんだろう?」

「フェルペダへは時々遊びに行く予定だよ。ビバちゃんも構ってやろうと思うんだ」

「ふん、いいねい」

「フェルペダはドーラと気候が似ててさ。導入したいものがまだまだありそうなんだ。ドーラが豊かになるよ」

「そうかいそうかい」


 マルーさんの顔のしわが深くなる。


「アンタはよくやってるねい。で、『魔魅』はどうしたことだい?」


 当然聞かれるだろうと思ってた。

 この前言い損なったからな。


「元々『魔魅』持ちでバアルと組んでた帝国のドミティウス殿下ね。ルーネのお父ちゃんだけど。皇帝選に負けて思うところあったらしくて。もう『魔魅』が必要ないからもらってくれって言われたの」

「ドミティウス殿下はアンタが『強奪』持ちだったことを知っていたのかい?」

「いや、推測だったんだ。前に『強奪』の使い合いになった話したじゃん? それをバアルのあとに殿下付きになった悪魔が見てて殿下に報告、あたしが『強奪』持ちだと判断したみたい」

「ふうん、キレる男だねい」


 うむ、お父ちゃん閣下はキレるやつだ。


「で? アンタはアタシに聞きたいことがあるんだろう?」

「あるんだぬよ?」

「ちょっと面白いな、それ」


 ヴィルをぎゅっとしてやる。


「塔の村の精霊使いエルいるじゃん?」

「ああ、あの人形みたいな子だね?」


 思った通りだ。

 マルーさんはエルを知っている。


「デス爺がエルを見つけたことには、ばっちゃんが噛んでるんじゃないかなーと思ったの」

「ハゲ爺に聞いたんじゃないのかい? まったくアンタはカンがいいね」

「デス爺はあんまりそーゆーこと言わないんだよね」


 愉快そうなマルーさん。


「ハゲ爺の持つ固有能力『晴眼』は、その身体に触れていることで視覚の共有ができるってことは知ってたかい?」

「えっ? 意外だな。知らなかったよ」

「知覚強化系の固有能力は他人と感覚共有できるタイプが多いんだよ。アンタの持つ『閃き』も同じだねい」

「マジか。そんなカラクリがあったとは」


 じゃああたしがぎゅーしてる子はカンが冴えるってことか。

 頭がスッキリして気持ちがいいから皆ぎゅーしたがるのかな?

 知らんけど。


「とゆーことは、デス爺の固有能力『晴眼』と多分転移術の応用と、ばっちゃんの『鑑定』が合わさって亜空間中の小さな実空間に閉じ込められていたエルを発見。『精霊使い』発見で大喜びしたデス爺が、エルをこっちの世界に召喚したで合ってる?」

「違わないねい」

「やっぱばっちゃんが絡んでたのかー。どう考えてもそうだなと思ってさ」

「今更の話だろう? 精霊使いエルがどうしたんだい? 他人の過去を詮索することは趣味がいいとは言えないねい」

「『アトラスの冒険者』廃止に関わることなんだ。なるべく情報が欲しくて」


 これは意表を突いたろ。

 目をパチクリさせるマルーさん。


「『アトラスの冒険者』が関わる? わからないねい。話しな」

「ばっちゃんは異世界が『アトラスの冒険者』を運営してるってことは知ってたんだっけ?」

「パラキアスが伝えに来たねい」

「おおう、パラキアスさんもマメだな。わざわざ話しに来たのか」

「それ以上のことを知りたかったらアンタに聞けと。まあアタシは運営が誰であろうとさほど興味はないねい」

「あたしも詳しいわけではないんだけどな。『アトラスの冒険者』のトップ、本部所長がエルの母ちゃんなんだ。当然異世界人ね」

「ふうん?」


 これは興味津々ですね。


「向こうの世界で『アトラスの冒険者』は、転移転送と亜空間超越移動を扱ってる唯一の部署なんだそーな。だからエルの幽閉には間違いなく『アトラスの冒険者』が関係してる。ここまでいいかな?」

「所長が自分の娘を閉じ込めてたってことかい? それとも匿うつもりで?」

「うーん、匿うつもりがあったのかもしれないな」


 詳しくはわかんない。


「で、ちょっと話変わるけど、向こうの世界には昔悪い王様がいて、王族を打倒してこっちの世界に追放したっていう歴史があるんだ。その王族ってのがドーラでいう赤眼族。『アトラスの冒険者』は元々赤眼族を監視するための組織だった。第二休憩ポイントです。ここまでいいかな?」


 頷くマルーさんとニルエ。

 ニルエ何にも言わないけど、目がキラッキラしてる。

 すげえ楽しそう。

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