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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2179話:色々話したいことがある

 ――――――――――三二九日目。


『御主人、パラキアスだぬ!』

『ユーラシアだな?』

「そう、いずれ世界の公認聖女になりたいあたし。朝早くからごめんね」


 色々話したいこともあるので、パラキアスさんと連絡を取ってもらったのだ。

 まず当たり障りのないところから。

 メインイベントは残しておきたい乙女の心理。


「今月の移民って昨日来たんだっけ?」

『いや、一日遅れると早船で連絡があった。今日到着すると思う』

「遅れるんだったか。カラーズは知らないはずだな。伝えとくね」

『ああ、頼む』

「この前の消火魔法『ヒナギ』あったじゃん?」

『いい魔法だな。火事は怖い。レイノスで一旦大火事が起きると、行政府の指導力が問われるし治安の悪化も気になる。ドーラでも早期に導入したいが』


 政治家は皆そう考えるみたいだな。

 あたしは単純に蓄えてきたものがパーになって、発展が遅れるのが嫌なのだ。

 若干視点が違うってことなんだろう。

 

「新『アトラスの冒険者』に必須にしとく手はあるかな? プリンスルキウス陛下とドミティウス閣下に紹介したら、メッチャ食いつかれたよ」

『防火対策は重要だ。当然帝国なら火事対策はあるんだろうが、あの消火魔法ほどフレキシブルで機動性のある運用のできる手法はあるまい』

「来月のスキルスクロールの注文の一部がキャンセルになって、その分が『ヒナギ』になったわ。まず現役の騎士と近衛兵に覚えさせるみたい」

『セオリー通りだな。税金が高い分、帝国には金がある』


 何でもない話題から入りました。

 まったり。


『今ユーラシアはどんなクエストに取りかかっているんだ?』

「正規の石板クエストはモイワチャッカっていう、東方の戦争中の国のやつ。どーもガルーダの雛が巣立つまで付き合わないといけないみたい。あと一ヶ月くらいかかりそう」

『ハハッ、妙なクエストがあるんだな』

「マジでそう。もう一つ『世界最大のダンジョン』ってのもらってて、これが何と現場がシンカン帝国の中なんだよね」

『ほう? 放熱海以南の大帝国という?』

「うん。これダンジョンのクエストそのものよりも、周りの集落が面白くてさ。ひょっとするとシンカン帝国の偉い人に会えるようになるかもしれない、って流れになってきたの」

『実に興味深い。が、遠過ぎるな』

「うーん。でもドーラに全く知られてないものや技術もあるんじゃないかな」

『そっちが本題か?』

「パラキアスさんは鋭いね」


 愉快そうな雰囲気が伝わってくる。


『知られていないものや技術といえば異世界だ。何かあったか?』

「パラキアスさんは、異世界とこっちとでは管轄する神様が違うってのは知ってたんだっけ?」

『イシュトバーン殿に聞いたな。ユーラシアが胸の大きな女神を飼い馴らしていると』

「飼い馴らしてるんじゃないんだけどな。神様は世界を発展させるのが仕事で、あたしも全く異議はないから協力してるの。これがこっちの世界のひっじょーに単純なあたしとたわわ姫の関係」

『たわわ姫』


 あれ、パラキアスさんのツボだったか。


『異世界では協力関係が成立していないのか?』

「とゆーか、向こうの世界の神様は自分の成績を優先してるみたい」

『異世界の技術が進んでいるということは、神の成績もいいんだろう?』

「多分。でも成績なんてのは他の神様との比較で決まるんじゃないかな」

『どういうことだ?』

「亜空間超越移動は、自分の世界の優れた技術が流出しちゃうデメリットがあるじゃん? 『アトラスの冒険者』は向こうの世界の神様のボーナスになったけど、廃止後はそうはいかない。異世界の人達は、おそらく神様の意向で亜空間超越移動をしなくなる」

『ふむ? 異世界の利益にはならなさそうだが?』

「もっと利益になんないのがエルを向こうに連れ帰ることだよ。向こうの世界の神様はこっちにエルを置いておくことで進んだ技術をサービスしちゃうのが業腹だ、連れ戻せくらいに考えてるんだと思う。でも旧王族の血を継いでる高レベルの美少女なんて、向こうの世界の現在の政権にとっては地雷じゃん?」

『ユーラシアらしい視点だな。もっともだ。放っておけばよいものを』

「ってな話を向こうの世界のお偉いさんとする機会が昨日あってさ。神様の言うなりになるなよってことで、共闘できそう。情報流してもらえることになった」

『信用し過ぎるなよ?』

「わかってる」


 副評議長が向こうの神様に取り込まれることも、ブラフの情報を掴まされることもあり得るからだ。


『ユーラシアが狙ってるのは何だ?』

「エルを囮として注目させといて、その隙に向こうの世界の優れたものや技術をごそっとこっちに導入することだよ。あたしの大好きなぼろ儲け」

『ハハッ、大胆な作戦だな。可能なのか?』

「実はあたし、向こうの世界に繋がるらしい、管理者用の転送魔法陣を持ってるんだ。バアルのお宝の『地図の石板』で出たやつ」

『本物か?』

「重要な転送魔法陣であることは疑ってないよ」


 ほこら守りの村のマーシャが最後の魔法陣って言ってたくらいだ。

 間違いなく本物。


「だけどこれ、一回しか使えないじゃん?」

『普通に考えれば当然だな。ユーラシアのような超高レベル者が自由に行き来できたのでは、安全保障も何もあったもんじゃない。一度使用したならすぐ使えなくされるだろう。『アトラスの冒険者』も即廃止だ』


 パラキアスさんの見解もあたしと一致。

 心強いな。


「使うタイミングが難しいけど、一度ヴィルを連れていけば向こうの世界に行けるようになるじゃん? 昔『アトラスの冒険者』のチュートリアルルームの職員やってて、今スキルスクロール屋として独立してる人がいるんだ。その人と連絡取りたいんだよね。うまくいけば、『アトラスの冒険者』廃止後も隠れて向こうと行き来できそう」


 シスター・テレサも消火魔法は欲しいんじゃないかな?


『その魔法陣を使うタイミングは?』

「向こうの世界の人員がエルを取り戻しにこっちへ攻めてきた時かな」

『パーフェクトだ』


 混乱に紛れてこっちからも逆侵攻だ。


「あんまりパラキアスさんには関係ないかもしれないけど、一応知ってて欲しかったんだ」

『いや、面白かった。健闘を祈る』

「またね。ヴィルありがとう。こっち戻ってきてくれる?」

『はいだぬ!』

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