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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2177話:あたしのデタラメなところ

 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、チャーミングなユーラシアさん。いらっしゃい」

「ポロックさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 ギルドにやってきた。

 角帽のギルド総合受付ポロックさんはいつもにこやかだ。

 とてもいい人。

 ……ポロックさんの様子からすると、新『アトラスの冒険者』移行に伴う混乱はなしか。

 いいだろう。


「そちらはルーネロッテ皇女だね?」

「はい、よろしくお願いいたします」

「スカウトしたんだ」


 これだけで新『アトラスの冒険者』に勧誘したことはわかるだろう。

 いい人はどんどんメンバーに入れたいからね。

 面白そうにルーネに目を向けるポロックさん。


「ふむ、レベルは十分だね」

「細かいことはおっぱいさんに話しとくよ」


 ギルド内部、依頼受付所へ。


「サクラさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「俺もいるんだぜ」

「あんたは面白くなりそーな時にタイミングよくいるなあ。感心する」


 銀髪のツンツン頭ダンだ。

 ダンにも聞いててもらった方が都合がいいか。

 内緒話モード発動。


「ルーネを新『アトラスの冒険者』のメンバーに入れたいんだ」

「よろしくお願いいたします」

「いいじゃねえか。実力は十分で出身もハッキリしてる。大体新組織の黒字化のためには、構成員の数が多い方がいいんだろ?」

「私も賛成です。帝国人、しかも皇族にメンバーがいるということは、相互理解にも繋がるかと思います」

「反対する理由がねえ。あんたもメリットが大きいから連れてきたんだろうし」

「まー表向きの理由は今出たことくらいなんだけど、ルーネには事情があって」

「「「事情?」」」


 あ、ルーネ自身もわかってない。


「世界の通貨単位を統一しようっていう話が進んできてるんだ。五日後に帝国ガリアアンヘルモーセンの三ヶ国の外相級会談があって、多分大筋が決まると思う」

「ほう、貿易がしやすくなるってことだな? それで?」

「大体今の草案、ゴールドの価値でギルって名前にしようって感じでまとまるんじゃないかな」

「私達からすると、通貨単位の名前が変わるだけですね?」

「そうそう。わかりやすい」


 ダンが言う。


「お嬢を新『アトラスの冒険者』にすることと何の関係があるんだ?」

「通貨単位統一機構の本部なり事務局なりをドーラに置くことになりそう」

「あんたの差し金だな?」

「まあ。大国に本部があると、あーその国の思惑なんだって察してどっちらけじゃん? 参加してくれる国が少なくなっちゃうかもしれない。だったらドーラに本部があったっていいじゃん。転移があるんだから各国と連絡もつけやすいし」

「本音は?」

「ドーラがド田舎で侮られるのは嫌なんだもん。ちょっとでも知名度上げて注目させたいんだもん」

「実にあんたらしいぜ」

「御主人らしいぬよ?」


 あたしらしいらしい。


「通貨単位統一機構の事務方のトップが、ルーネのお父ちゃんになる予定」

「ドミティウス殿下ですね?」

「うん。建前はともかく、実際問題として大国の有力者に仕切ってもらわないと組織が動かないからさ。で、お父ちゃん閣下が帝国~ドーラ間を行き来する手段が必要になるから、ルーネにお願いする」

「だからルーネロッテ嬢を新『アトラスの冒険者』にするということですね?」

「っていう理屈でお父ちゃん閣下を説得しようかと」

「おい、どういうことだよ? 閣下に転移の玉を持たせればいいじゃねえか」


 これは説明が必要か。


「ルーネは昔から冒険者に憧れてたんだそーな。一方でお父ちゃん閣下は娘ラブだから、ルーネに危ないことして欲しくないわけよ。だからお父ちゃん閣下にルーネを新『アトラスの冒険者』にするということを認めさせるのには、ちょっと工夫が必要で」

「なるほどな」

「こっちだって優秀な人材は確保したいじゃん? ルーネはなかなかすごいんだ。レベル一の時のステータスパラメーターを比較すると、敏捷性と運以外はあたしより高いんだよ」

「それほどですか?」

「あんたのデタラメなところは数字じゃねえ」

「おおう?」


 あたしはよくデタラメって言われるけどそーなの?

 ルーネもコクコク頷いとるがな。

 いや、ルーネはやる子なんだけどな?


「もっともユーラシアが評価するくらい、お嬢ができるってのはわかるぜ」

「でしょ?」

「ありがとうございます。嬉しいです」

「ドワーフに依頼しなければならない転移の玉あるいは転移石碑は、どれくらい完成しているのでしょう?」

「えーと転移の玉が五〇セット、転移石碑が塔の村、カトマス、レイノス、カラーズ、魔境行きの五つが完成確認済み。汎用の転移石碑とビーコンのセット五つが明後日納品予定だよ」

「汎用の転移石碑とビーコンのセットってのは何だ?」

「ビーコンのところまで飛べる転移石碑ってこと。どこか適当な転移先が欲しければ、ビーコンを埋めてくればいいの」

「便利だな」

「そーだね。どこかいいとこある? こっちの汎用転移石碑五つは魔力吸い上げ装置の方がまだだから、来月一日には間に合わないと思うけど」


 今いい転移先持ってる人がいたら教えてもらいたいくらいだ。


「……ギルド指定職人の工房でしょうか?」

「うーん、パワーカード工房は外が魔物退治に向いてるんだよね。ああいうところは転移先でもいいけど、杖職人ナバルのおっちゃんとこなんかはそんなに用がないんじゃないかな」

「しかし連絡をしなければいけない時もありますから」

「あ、そーか。じゃ、いるか」

「黒妖石の入手元とかドワーフの職人のとことかも必要だろ。今はあんたが一手に引き受けてるが、ずっとあんた頼りのままでいいわけねえ」

「ダンの言う通りだな。とすると……」


 転移先は思ったよりもたくさん必要になるっぽい。

 手持ちの黒妖石じゃ全然足りないな。

 ガータン行ってもらってこないと。


「オーケー。転移の玉より転移石碑の方が先っぽいな。少しずつ注文出しとくよ。新『アトラスの冒険者』が発足したらボチボチやろう」


 頷くダンとおっぱいさん。

 ハハッ、ルーネがワクワクしてるのがわかるわ。 


「お父ちゃん閣下の説得は通貨単位統一の会合のあとだな。ルーネ、それまで気取られないようにしといてね」

「わかりました」


 いいだろう。

 内緒話モードを解除する。


「じゃ、お願いしまーす。今日は帰るね」

「バイバイぬ!」

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