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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第217話:無乳は固有能力

「御迷惑をおかけしました。平静を取り戻しました」


 正気に戻ったエルが頭を下げる。

 皆の心の距離が近くなってよかったんじゃないかな。

 結果論だけど。


「うむ、苦しゅうない。よきにはからえ」

「どうしてユーラシアが偉そうなんだ」

「偉そうなことを言ってみたかっただけだろう?」

「オチがないと何となく落ち着かなくて。いや、今のはギャグじゃなくてさ」

「病気じゃないか?」


 エンターテインメントを欲する本能をビョーキとかゆーな。

 ってのはさて置いて。


「あたし塔の村のことは詳しくないからさ。リリーと黒服さんに塔について教えてあげてよ」

「じゃあボクの方から」


 エルが挙手して発言する。

 先行偵察してるヒカリとスネルの精霊コンビを除けば、エルは最も上階まで探索を進めているはずだ。

 コツもわかってるだろ。


「この塔は『永久鉱山』のせいか、不思議な特徴があるんだ」

「「『永久鉱山』?」」

「魔力が集積する関係で、いくら素材を取ってもいくら魔物を倒しても、ある程度の時間で復活するダンジョンなんだ」


 黒服が驚く。


「何と、そんな現象が!」

「村長デス爺がここを開発しようとした理由がわかるでしょ?」

「はい。まさか『永久鉱山』などというものが存在するとは……」


 エルが続ける。


「冒険者として注意しなきゃいけないのは、上階に昇ると階段が消えること。五階ごとにしか脱出魔法陣がないんだ」

「ほう、少々恐ろしげだの」

「ボクのパーティーが偵察の任務に当たっている精霊達と連動して先に探索しています。今までのところ階が上がったからといって、極端に魔物が強くなるということはない。特に最初の脱出魔法陣のある五階までは魔物の種類は一定です。心配なら道具屋で一回限り使用できる脱出の札を売っているから、購入していくといいと思います」

「うむ、脱出の札についてはユーラシアに聞いた」


 レイカが頷く。


「脱出の札は必要だろうな。見えている危険に対処するのは冒険者の基礎だと思う。ただし各階の情報もかなり充実したし、要所に看板も立てられているから、低層階はレベル一桁だけのパーティーでもイケるくらいだ」

「あたしも五階までは一度潜ったことあるけど、同じ印象だわ。比較的中は広いから、一回も戦闘しなくて魔物を避けながら五階脱出口に辿り着くこともふつーに可能だよ」


 リリーをサポートする立場である黒服が真剣に聞いている。

 要所に看板が立てられているとか、かなり初心者に配慮したダンジョンになったんだな。

 それにエルもレイカもまともな冒険者みたいな言いようだ。

 もうちょっとこう……。


「真面目な話は肩が凝るな」

「同感だね。あたしは背中が痒くなる」

「き、君達はもう!」


 リリーとあたしの言葉にエルが癇癪を起こす。

 いや、塔のダンジョンで気をつけなきゃいけないことって、結局脱出だけなんだわ。

 リリーもそれを察したからもういいやって思ったんだろうし。


「こっちはさっきエルが愉快なところを見せてくれたお詫びに、もっと愉快なところを見せてくれるのだろうと思って待ち構えてたんだよ? 普通にダンジョンの説明始めるとか、拍子抜けもいいところじゃないか」

「うむ。最上のエンターテインメントを期待してたのに、脈絡もなく勉強時間になった切なさを思い知れ!」

「塔のこと教えてあげてって言ったのユーラシアじゃないか!」

「そんな昔のことは忘れたわ。あたしだってちょこっとは意見を補足したわ」

「あははははっ!」


 レイカが大笑いする。

 レイカは自分のことだと視野が狭くなるけど、他人事だとすごく冷静だな。

 バエちゃんに似たタイプだろうか?


「さほど注意の必要なダンジョンではないということだ」

「入ってみる方が早いよね」

「ユーラシアとリリーは性格が似てる気がするな。気のせいかな?」

「あたしも何となくそう感じてた」

「レイカは姉のようだな」

「お姉ちゃーん」


 リリーの何でもない呟きにエルが噛み付く。


「どこが姉だ! サイズか? サイズの問題なのか?」

「「「「黙ってろ妹」」」」


 あたしは聞き逃さなかった。

 ノーマル人がいる場合通常口を出さない、精霊のコケシまでハモったことを。


「君達はボクを何だと思ってるんだ!」

「「「可愛い妹」」」

「どこが可愛いんだ!」

「「「無慈悲なことは言えない」」」

「うわーん!」

「ヴィル、鎮静剤」

「はいだぬ。ぎゅー」

「癒されるー!」


 素晴らしいテンポだったなあ。

 この芸はかなり完成された気がする。

 リリーが黒服に話しかける。


「セバスチャンよ。ドーラの芸人はレベル高いな」

「ボクは芸人じゃない! 君達はボクをどんな目で見てるんだ!」

「シンキングターイム!」


 え、何? といった顔で見るエル。


「ただ今のエルさんの発言の重要性に鑑み、我々は審議時間を要求します!」

「き、許可します」


 エルと精霊、ヴィルを除く六人で作戦会議だ。

 さっきと違って見張りが必要な相談内容じゃないけどね。

 リリーが口火を切る。


「大体、エルの発言はフラグを立て過ぎではないか?」

「だよねえ。ツッコんでくれって言ってるようなもん」

「あれをスルーしてはこっちのセンスが疑われるの」

「リリーも結構エンタメを求めるなあ」


 レイカが発言を促す。


「男性陣はどう思う?」

「無乳は固有能力」


 ハオランからいきなり諸刃の刃発言キター!


「そ、それは援護しているようでとどめを刺す……」

「絶対本人に言っちゃダメだぞ?」


 あービックリした。

 加減を知れよ。

 罪がない分コケシより破壊力がある……コケシってもう蘇生魔法使えるんだったかな?

 ジンがとりなすように言う。


「エルさんって、見た目は可愛いですよ?」

「だよねえ。どーしていらんことを口走って修羅の道を歩もうとするのか」

「ユーラシアさんも同じこと言われませんか?」

「心外だな。あたしは計算して喋ってるし、普通に可愛いわ。生きがいい、とは言われるけど」

「生きがいい? 魚の褒め言葉かの?」


 帝国本土ではドーラより魚食が一般的なのかな?

 えらく場違いな感想が思い浮かんでしまった。


「シンキングタイム終了時間が迫っているぞ」

「終了時間なんて設定してなかったわ。まったくリリーはせっかちだな」

「結論はどうしましょうか?」

「ジン、書くもの持ってる?」

「え? はい」


 あたしは第一案と第二案を書きつける。

 普通にリリーが馴染んでいます。

 めでたし!

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