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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2163話:訂正注文

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 フェルペダで昼食をいただいてから、施政館に飛んできた。

 フェルペダの鳥料理は大変結構です。

 ヴィルとルーネをぎゅっとしてやる。

 いい子達だね。


 プリンスルキウス陛下が聞いてくる。


「フェルペダへ行ってたんだって?」

「そうそう、この前の王女ビバちゃんいたじゃん? 今日旦那さん候補五人と顔合わせでさ。お相手は宰相グラディウスさんの息子サラマンダ君にほぼ決定でーす」

「めでたいことだね」

「顔合わせだってことだったから、どんなんがお相手候補なのかなーってからかいに行くつもりだったんだ。あたしも有力者の令息と知り合いになれたら嬉しいし。そしたら王様が『グラディウスの息子サラマンダをビヴァの配偶者とする』って。ちょっとビックリした」

「ふうん。宰相グラディウス殿の権力が強化されることになるか……。ゴタゴタする要素はあるかな?」

「気になるよね。揉める要素がなくはないけど、ビバちゃんもこの方がいいですって、自分でサラマンダ君を連れてきて言ったんだ。王様が独断で決めるよりはうんとマシだと思う」


 貴族達や議会の反応見ながら正式発表になるんじゃないの?

 でも王様とビバちゃんの意見が一致してて、昼食会の感じだと他の令息方も納得してた。

 これは決まりだわ。


 フェルペダのことはともかく。


「帝国はミドルティーンで婚約ってのが多いみたいだけど、ルーネはまだなん?」

「まだ早い!」

「そーですか」


 お父ちゃん閣下はルーネを嫁にやる気はないのかもしれないな。

 もっともルーネもまた今はいろんな経験をしたり、あちこち行ったりするのが楽しいみたいだ。

 自分の運命の相手を決めることは、まだ早いと考えてるようだしな?

 変なところで親子の意見が似通ってるんだから。


 しかし今のお父ちゃん閣下の反応からすると、やはりカルテンブルンナー公爵家マヤリーゼさんのお茶会のことは、お父ちゃん閣下知らんらしい。

 公爵令息ハムレット君はルーネにピッタリですぞニヤニヤ。


「ユーラシア君はどうなんだい?」

「いや、あたしもドーラの人口増加に貢献したい気持ちはあるんだけれども」


 条件に当てはまる人がなかなかいないとゆーか。

 閣下が言う。


「昨日の消火魔法だが」

「話題の転換が急だね。何だろ?」

「万全の消防体制を整えることは施政において重要だ。現在の帝都の消防団には放水車と打ち壊し隊しかない」

「へー。帝都には消防団があるんだな」


 ドーラだと家の間隔開けるくらいしか対応してないと思う。

 レイノスはどうしてるのかな?


「早期に消火魔法を導入したいのだが、実際に『ヒナギ』で消火するところを見てみたい」

「あたしが使えるから、火の準備ができるなら見せてもいいよ」

「施政館庭で行おう。アデラ、エックハルト総務大臣を呼んでくれ」


          ◇


「ヒナギ!」

「おお、見事!」


 結構ぐおおおおって炎が立ち上ってたけど、問題なく一発で消火できた。

 皆さん大喜び。


「これほど完璧に消し止められるのか。驚きだな」

「風と水の複合魔法なんだそーな。あたしじゃ理屈わかんないけど、ただ水かけるよりよっぽど効率がいいってことだけ理解した。細かい理屈を知りたいなら詳しい人呼んでくるけど?」

「いや、いい。理屈が必要なら宮廷魔道士に解説させればいいし」


 それもそーだな。


「確認するが、ユーラシア君のレベルがあってこの効果ということじゃないんだね?」

「貿易商ベンノさんが『ヒナギ』使ったの見たんだ。効果は一緒だよ。ただ実際に運用することを考えるなら、最大マジックポイント多い人の方が何発も撃てていいと思うけど」


 興奮気味のエックハルト総務大臣が言う。


「陛下。人口の多い帝都にはすぐにでもこの魔法を使える人員が必要です。実績を見て他の直轄領地方領にも紹介を!」

「わかっている。ユーラシア君、ベンノと今すぐ連絡取れるかい?」

「えっ?」


 無茶言うなあ。

 えーと、ベンノさんに会ったの三日前だから……。


「多分帰路の海の上だな。ヴィル、ベンノさんと連絡取れる?」

「ベンノの船は知ってるぬ。連絡取れると思うぬ」

「ヴィルは偉いなあ。ベンノさんとこ行ってね」

「了解だぬ!」


 掻き消えるヴィル。

 閣下が言う。


「実に優秀だね」

「うちの子は皆優秀なんだよ。あたしに似て」


 アハハ。

 赤プレートに反応がある。


『御主人! ベンノだぬ!』

「そっち行くよ。ビーコン置いてね」

『わかったぬ!』


 新しい転移の玉を起動、プリンス閣下ルーネエックハルトさんを連れて転移する。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 ヴィルとルーネをぎゅー。

 いつものやつ。

 当然驚くベンノさん。


「これはこれは、皆様お揃いで。いかがされたのでしょうか?」

「早速ですまないがベンノ、消火魔法『ヒナギ』を早期に仕入れたい。何とかならないか?」

「帝都の消防体制をとっととどうにかしたいんだそーな」

「ドーラからの輸入分である来月分のスキルスクロールは、水魔法二〇〇〇本及び盾の魔法一〇〇〇本で注文を入れたところです。再来月になってしまいますが……」

「来月分の注文は製造元にあたしがキャンセルして、新しい注文を入れることはできるよ。ベンノさんは都合悪くない?」

「そういうことでしたら。消火魔法『ヒナギ』は何本御入用ですか?」

「現役の騎士正隊員と近衛兵に習得させたい。とりあえず三〇〇本だ」

「承りました。ではユーラシア殿。来月のスキルスクロールは水魔法二〇〇〇本、盾の魔法七〇〇本、消火魔法三〇〇本に訂正注文願います」

「りょーかいでーす」

「ベンノ、『ヒナギ』は一本いくらになる?」

「直接施政館に納めるということなら、八〇〇〇ゴールドにさせていただきます」

「安いな。実にありがたい」


 『ヒナギ』のドーラでの販売価格は五〇〇〇ゴールドだ。

 行政府の取り分とベンノさんの儲けを考えると良心的な価格だな。


「なるべく早く各領主貴族にも消火魔法を紹介しよう」

「いやはや、施政館の行動があまりにも早くて驚きました」

「火事の備えは一刻も早い方がいいからね」


 もっともではあるよ?

 でもこっちにしわ寄せが来るんだが。

 ヴィルがいい子だからムリが通ったけど、普通じゃ不可能だぞ?


「じゃ、帰ろうか。ヴィル、もう一度施政館に行ってね」

「はいだぬ!」

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