第2162話:ビバちゃんの超ファインプレイ
「ただいまー」
「ただいまぬ!」
あれ、外でお待ちのやんごとなき方々の方が緊張してるやんけ。
何でなん?
ビバちゃんが令息方と顔合わせする本番はこれからだぞ?
テンション上がり過ぎて、『アイドル』の出力も上がっちゃったりすると面白いなニヤニヤ。
ビバちゃんが聞いてくる。
「どうでしたの?」
「ビバちゃんを首ちょんぱから救ってくれるナイトがいるね」
「ほんと? どの人?」
「まず全員に挨拶してきなよ。全員有力者の子弟で、親しくしておくべきなんでしょ? ビバちゃん好みのいずれイケオジもいるぞー」
「きゃっ、恥ずかしい!」
機嫌よく花婿候補五人の待つ部屋に入室するビバちゃん。
今日はまだ顔合わせの段階なんでしょ?
気楽にどーぞ。
グラディウスさんが問うてくる。
「ユーラシアの感想はいかに?」
「皆なかなかだね。ビバちゃんの花婿候補に推される理由はわかった。ルーネはどう思った?」
「二番か三番の人がいいと思います」
「うん。三番がダントツだな。三番にダメな理由があるなら二番でも仕方ないかって感じ」
ルーネはレベルで判断してたみたいだな。
レベルは大体何でも解決するから間違いじゃなさそうだけど、この場合どーだろ?
「ユーラシアの一番四番五番の評価が聞きたい」
「一番は多分ビバちゃん好みの顔。五人の中で最も身分が高い人なんじゃないかな。自然に仕切る器量はあるんで、平和な国の王配は務まると思うよ。でもビバちゃん自体が爆弾みたいなもんだから、わざわざ選んで結婚させるほどじゃない」
頷く皆さん。
やはりそう思われてる人か。
あんまりビバちゃんと合いそうにないけど、ビバちゃんに選ばせると一番に決めそう。
「四番はかなり実務能力はあるんじゃないの? でもビバちゃんと相性が全くよろしくない。くっつけるとちょっと可愛そうなことになると思う」
「五番は?」
「評価保留だね。ビバちゃん自身が子供っぽくて足りないところあるのに、さらに年若の子選んでどーするって感じがする。でも何かの固有能力持ちだよ。調べてないならチェックしとくといいかも」
驚く王様。
「ユーラシア嬢は『鑑定』の能力をお持ちですかな?」
「いや、違うんだけど、『閃き』っていうすごくカンがいいっていう固有能力を持ってるんだ。多分そのおかげで、固有能力持ちかそうでないかはわかるの」
「ちなみに固有能力持ちは五番だけですかな?」
「三番も固有能力持ちだね」
「三番を二番より推す理由は? 固有能力持ちだからか?」
「いや、違うよ。ビバちゃんとの相性、持ってる雰囲気、そしておそらく政治的な実務能力も二番より上だから」
「ふうむ、そうか……」
考えに沈む皆さん。
誰がどんな人か種明かししてくんないかな?
「一番が公爵令息、二番が将軍の息子で現役の騎士、三番がそれがしの子、四番が伯爵令息で宰相府のホープ、五番が侯爵令息だ」
「三番グラディウスのおっちゃんの息子さんなんだ? 言われりゃなるほどの身体の大きさだった」
デカさ以外あんまり似てるとこないけど。
いや、グラディウスさんもビバちゃんと相性いいから、そゆとこ親子で似るのかも。
「むーん、おっちゃんの息子だったかー。ビバちゃんの婿には最高に向いてるんだけどなー」
「グラディウス様の息子だとまずいんですか?」
「まずいってほどでもないよ。でもおっちゃん自身がフェルペダから見ると他所者じゃん? パワーバランス的には、貴族の令息が婿さんの方が収まりがいい気がしない? フェルペダの事情はあんまり知らんけれども」
「それがしも同意見だ。王よ、よくよく御勘案くだされ」
ははあ、王様がグラディウスさんの息子を評価してて、ビバちゃんの婿候補に入れたのか。
グラディウスさんが遠慮していたにも拘らず。
王様が結論を下す。
「貴族の中でも派閥争いはあるのだ。ならば能力と相性を重視でよい。グラディウスの息子サラマンダをビヴァの配偶者とする」
思わずグラディウスさんと顔を見合わせる。
ビバちゃんの意見も聞かずに決定かよ?
いや、ビバちゃんの意見なんて全く参考にならんわな。
グラディウスさんを評価して重職に就けている王様が、その息子の出来の良さを認めて娘婿に据えるとゆー考えはわかる。
あたしも三番の人がベストだってのは同感だけど、もう決めちゃうのか。
今日はまだ顔合わせの段階じゃなかったの?
王様が果断なのは大変結構だ。
でもこれは揉めるに違いない。
貴族の反発がどれほどになることか。
政権運営に支障をきたさなきゃいいけどなあ。
せめてビバちゃんが選んだって格好になればいいけど、どうせビバちゃんは一番の顔にしか興味ないんだろうからな。
あっ、扉が開いた?
ビバちゃんが候補者の一人を連れてくる。
あれえ? ビバちゃんがそーゆー行動を取ると、お相手が決まってしまうんだが。
「お父様、この方がいいです」
「ビヴァ……」
しかも伴ってきたのは三番。
マジかよ?
大当たりじゃねーか。
感動してる王様。
「どーしたビバちゃん。絶対一番を選ぶと思ってたけど」
「お顔は一番が良かったわ。でも私は学習したのです。あなたに散々顔で選ぶなと言われたことを思い出したのです!」
「へー。三番のどこを気に入ったの?」
「急かされないので話しやすいですわ。話題も豊富ですし、ためになりますわ」
「おめでとう、ビバちゃん。正解です。しかもパーフェクト!」
「正解なの? やった! 首ちょんぱは回避できる?」
「回避できる可能性がかなり高くなったね。マジでビバちゃんは成長してるぞ?」
喜んで変な踊りを踊るビバちゃん。
悲哀の踊りとどこが違うんだか全然わからんけど、枝葉のことだ。
しかし五人の令息と直に喋ってビバちゃん自身が一人を選び、誰の目にも明らかなようにこっちへ連れてきた。
令息達が今日の経過を誰かに聞かれたとしても、密室の出来レースではない。
王女であるビバちゃん自身が選んだのなら仕方がないということになるだろう。
これ以上の成功があろうか?
ビバちゃんの超ファインプレイです。
王様が部屋に入り言葉を発する。
「皆の者、大儀であった。これにて本日の顔合わせの会は終了である。昼食を用意させるまでには間があるゆえ、ゆるりと歓談されよ」
わあい、フェルペダの金の卵達とじっくり話ができるぞー。




