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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2148話:地母神ユーラシア様の思し召し

『ユーラシアじゃな?』

「そうそう、あたしオブあたしことあたし」


 ペルレ男爵家ハムで御飯をいただいた。

 おいしかったです。

 その後イシュトバーンさんを送り、さらに皇宮の近衛兵詰め所まで戻ってきて、ヴィクトリアさんとヴィルで連絡を取っている。


「上皇妃様とゼムリヤへ遊びにいくとか聞いたんだけど」

『おお、そうなのじゃ。一ヶ月ほど避暑に行こうという話になった。妾もゼムリヤには行ったことがないので楽しみでな。ユーラシアに転移してもらえば、気軽に行けるのではないかと気がついたのじゃ』

「いいねえ。いつがいい?」

『三日後はどうじゃろう?』

「オーケー。じゃ、三日後の朝に迎えに来るよ。ゼムリヤのメルヒオールさんにもそう連絡しておくね」

『すまんの。今茶会をしておるのじゃ。カレンシーもおるぞ? ユーラシアも来ぬか?』

「あ、ごめん。あたし今から魔道研究所に行くんだ。でもルーネはお茶会行きたがるかもしれない」

『さようか。待っておるぞ』

「ヴィクトリアさんじゃーねー。ヴィル、ありがとう。ゼムリヤのメルヒオールさんとこ行ってくれる?」

『はいだぬ!』


 よしよし、ヴィルいい子。

 ルーネが不満げだ。

 どーした?


「私は魔道研究所に連れていってもらえないんですか?」

「魔道研究所? 今日は単なる作業だよ。マーク君捕まえてヴォルヴァヘイム近くに聖風樹植えてくるだけだから、面白いことないぞ?」

「ユーラシアさんの面白いことないは信用できないんですよ」

「え? 笑いの神様に見込まれてるって? まいったなー」


 アハハと笑ってる内に赤プレートに反応がある。


『御主人! メルヒオールだぬ!』

『ユーラシアだな?』

「そうそう、澄み渡る空のような美少女ことあたし」

『どうした? 緊急事態か?』

「緊急事態ではないな。いくらあたしでもしょっちゅうトラブルに巻き込まれるほど、人生愉快ではないんだ」

「ユーラシアさんの人生は愉快じゃないですか」


 ルーネよ。

 お話し中なんだから、横から入ってこないでよ。


「上皇妃様とヴィクトリアさんがゼムリヤに避暑に行きたいんだって。一ヶ月間くらい」

『ほう?』


 ん? 意外だったか?


『カレンとヴィクトリア殿下の関係が改善されているという話は聞いた。が、一緒に余暇を楽しむほどなのか?』

「みたいだねえ。あたしも詳しい現況は知らんけど。面倒な立場の違いさえなきゃ、あの二人はウマが合うんだと思うよ。ひっじょーにいい傾向だね」

『ユーラシアが間に入ってくれたのだろう? 感謝する』

「いや、大したことはしてないし」


 あたし自身にも利があることだからいいのだ。

 でもメルヒオールさんにしてみると、先帝陛下の死後どうしても立場が弱くなる娘の上皇妃様とヴィクトリアさんの関係が良くなることはありがたいことなんだろう。


『こちらへはいつ来るという話だ?』

「えーと、三日後の午前中」

『三日後? もちろんユーラシアが転移で連れてくるんだな?』

「そゆこと」

『ちょうどいい。精霊達も伴ってくれ』

「うちの子達も? わかった」


 厄介な魔物でも出たか?

 いや、魔物で困ってるならそれこそすぐ来いって話になるだろうしな?

 じゃあ草食魔獣狩りするからパーティーしようぜってことかもしれない。

 楽しみ。


「じゃ、またねー」

『うむ、三日後を楽しみにしておるぞ』

「ヴィル、ありがとう。こっち戻ってきてくれる?」

『わかったぬ!』


 さて、連絡は終わったぞ。

 ん? ルーネどうした?


「三日後の午前中では、私はゼムリヤに行けないではありませんか!」

「剣術道場のある日ってことか。まーたまには遠慮しときなさい。道場は道場で楽しいでしょ」

「……はい」

「ヴィクトリアさんと上皇妃様が、お付きの人を一人ずつ連れてくるとするでしょ? となるとうちの子達合わせてちょうど八人だわ。どっち道人数オーバーになっちゃうから、ルーネは連れてけないわ」

「残念ですねえ……」

「でもないぞ? あたしにばかり構われてないで、色んな経験しろっていう神様の思し召しじゃないかな」

「何の神様ですか?」

「地母神ユーラシア様」


 アハハと笑い合う。

 このノリは好き。

 あ、ヴィル帰ってきたな。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 最早定型化した儀礼のようにヴィルとともに飛びついてくるルーネ。

 疑問も違和感も感じなくなってきたけど、いつまでもこのままでいいんかしらん?

 あんまり甘やかすとルーネのためにならん気もするけど。


「御主人、ウルピウスが御主人に会いたがっていたぬよ?」

「そーだったか。ウ殿下はゼムリヤで次期領主として学ぶことたくさんあると思ってたけど、案外暇なのかな?」

「きっとユーラシアさんラブだからですよ」

「御主人ラブだからだぬ!」


 と、言われてもなー。

 もちろんウ殿下がいい男であることは間違いないんだけど、あたしはドーラをともに盛り立ててくれる人がいいしなー。


「ウ殿下の嫁におっぱいピンクブロンド、ってセンはあってもいいんだけどな。ルーネはどう思う?」

「ユーラシアさんは、マイケ様がA太嫁という可能性が濃厚と見ますか?」

「まあね。A太がベタ惚れで伯爵のグスタフさんがおっぱいピンクブロンドを評価している。領同士の繋がりを強化したいっていう条件が揃っちゃうとね」

「A太はバルリング伯爵家の嫡男でしょう? マイケ様は婿取りするんじゃないかと思いますけれども」

「あっ、おっぱいピンクブロンドは一人娘なんだ?」

「はい」


 そーいや今日もおっぱいピンクブロンドのきょうだいの話はなかったわ。

 ちょっと条件が難しくなったな。


「ま、A太のことなんかどーでもいいや」

「乙女の貴重な時間を使う価値はないですよね」

「おおう、いかにもあたしの言いそうなセリフを取られちゃったぞ?」


 何でちょっと嬉しそうなんだよ。


「ルーネは今からお茶会行くでしょ? ルーネにとって貴族女性との繋がりは大事だからね。ヴィクトリアさんと上皇妃様には可愛がってもらいなさい」

「はい」

「ついでにビアンカちゃんの本確認しといてくれる? 印刷の方へはおゼゼ回したけど、貿易商と小売りの方、ヴィクトリアさんとどういう取り決めになってるかわかんないんだ。避暑の間に出版になりそうだから、一応聞いといてよ」

「わかりました」


 さてと、魔道研究所行くか。

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