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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2145話:本能爺の変

「御主人!」

「ユーラシアさん!」


 飛びついてくるヴィルとルーネ。

 よしよし、あんた達も飽きないね。

 おっぱいピンクブロンドに絵を描かせてもらう約束なので、ペルレ男爵家領ハムへやって来た。

 が?


「あれ、本当に領主屋敷の前みたいだな」

「そうぬよ?」


 悪魔であるヴィルがゴソゴソやってても何も言われなかったのか。

 随分とのんびりした町だなあ。

 嫌いじゃないわ。

 ヴィルもあんまり詮索されないこういう町だったら、住民とうまくやっていくことができるかもしれない。


 門番が話しかけてくる。


「貴女がヤマタノオロチ退治の勇士ユーラシア殿?」

「うん。ヤマタノオロチ退治の聖女ユーラシアだよ」


 門番は特にこっちを怪しんでる様子はない。

 ゴットリープさんかおっぱいピンクブロンドから話を聞いていると思われる。

 とゆーか屋敷前に転移で飛んでくる人は他にいないんで、疑いようもないのか。

 ハハッ、ヴィルが門番に頭撫でられて気持ち良さそうにしてるわ。


「ドミティウス殿下の娘のルーネロッテ皇女に絵師のイシュトバーンさん、悪魔のヴィルだよ。よろしくね」

「うむ、マイケお嬢様が絵のモデルになるとは聞いているが……」

「そうそう、お願いしたんだ。ちなみにこんな感じのやつだよ」


 ナップザックから画集を取り出す。

 まだハムみたいな田舎では出回ってないんじゃないかな?


「こ、これは? うおおおおおおお!」

「帝都でメチャクチャ売れてる画集だよ。これの第二弾帝国美人版が出ることになって、誰をモデルにするのがいいかって新聞で人気投票やったんだ。マイケさんも上位にランクされたから、モデルを頼んだの」

「うむ、そうであろう。マイケお嬢様は凛々しいからな」

「「「凛々しい?」」」


 上乳オープンおっぱいピンクブロンドが?

 凛々しいというイメージは全くなかったわ。

 ルーネが首かしげてる。

 この門番の目には、あの魔性の女おっぱいピンクブロンドが凛々しく見えているのだろうか?

 田舎者の感覚はわからん。


「少々待っていてもらえるか。もうじきお嬢様は戻られるはずだ」

「どこかへ出かけてるんだ?」

「うむ、涼しい時間帯に朝駆けに出られているのだ」

「朝駆け?」


 ってウマ?

 おっぱいピンクブロンドって乗馬できるんだ?

 あっ、白馬を引いて戻ってくる人がいる。


「お嬢様、お帰りなさいませ」

「ええ、ただ今。皆さん、お待たせしてしまいましたね」

「マイケさんは乗馬の嗜みがあるんだ?」

「そうなんですよ。領に帰ってくると楽しみで」


 誰だこれ?

 えらい爽やかで魔性の女の欠片もないんだが。

 乗馬服に身を包んだおっぱいピンクブロンドは、確かに凛々しいと言っていい姿だ。

 帝都の令嬢生活はかなりムリしてるのかな?


 イシュトバーンさんが突っついてくる。

 小声でこそこそ。


「おい、どういうことだよ」

「いや、あたしもわかんない。帝都のおっぱいピンクブロンドとはまるで別人」


 帝都にいる時と領地とでは違うんだろうなという予想はできていた。

 でも上乳じゃなくて下乳あるいは全乳を出してるとかゆー方向性だと思ってたわ。

 まさか人間性が違うようなのが出てくると思わなかったぞ?


「大きいことは大きいが、言うほどの胸じゃねえじゃねえか」

「あ、おっぱいが気になるのか。イシュトバーンさんはブレないなあ」

「詐欺だぜ。オレの純情をどうしてくれる」


 何が純情だ。

 煩悩の間違いだろ、この本能爺の変が。


「ところで、ウマの脚どうかしちゃった? ケガかな?」

「わかりますか? 少し痛めてしまったみたいで」


 ウマがちょっと気にしている様子があるのだ。

 動物の脚のケガは結構難儀だと聞いたことがある。

 まあ『ホワイトベーシック』持ってきてるから。


「よしよし、あたしが治してやろう。ヒール!」


 うん、魔力の流れも正常。


「もう大丈夫だと思うよ」

「シルバー、よかったわね!」

「ひひーん!」


 弾けるような笑顔を見せるおっぱいピンクブロンド。

 マジで誰だあんた。

 双子の姉妹とかゆーオチじゃないよね?


 あれ? ウマが鼻を擦りつけてくるがな。

 よしよし、可愛いね。


「乗せてくれるの?」

「ひひーん!」

「そーかそーか。ちょっと借りていいかな?」

「もちろん。シルバーがいいと言ってるんですもの。ユーラシアさんは乗馬の経験は?」

「普通のウマはないな。ユニコーンやスレイプニルに乗せてもらったことはある」

「えっ?」

「マジぬよ?」


 ルーネとイシュトバーンさんがニヤニヤしてるけど、ヴィルの言う通りマジなんだってばよ。

 足引っ掛ける馬具が装着してあるから乗りやすいな。

 手綱の使い方がわからんけど、言い聞かせりゃいいだろ。


「街中だから飛ばすと危ないな。いや、屋敷の周りを軽く一回りしてこようか。ゆっくり歩いてくれる?」

「ひひーん!」


 かっぽかっぽ。

 独特なリズムの心地良い揺れだ。

 視点が高いと気分がいいなあ。


「あんたは毛並みが綺麗だねえ」

「ひひーん」

「おっぱいピンクブロンドが領にいる時は、毎日ブラシかけてくれるって? へー、すごく大事にされてるんだねえ」

「ひひーん」

「まだおっぱいピンクブロンドとの付き合いは三年くらいなのか」


 ウマの耳がリズミカルに動いている。

 機嫌がいいんだろうな。


「ひひーん」

「脚? いいんだぞ。ケガくらいならすぐ治してやるから」

「ひひーん」

「おっぱいピンクブロンドの尻肉は柔らかいから乗せ甲斐があるって? おっぱいだけじゃないんだな。重要な情報だね」


 屋敷を軽く一回りして戻ってきた。

 ウマから降りて頭を撫でてやる。


「よしよし、ありがとうね」

「ひひーん!」

「ユーラシアさん、シルバーとお話していませんでしたか?」

「してたしてた。ウマは賢いからこっちが言ってること理解してくれるし、大体何言ってるかもわかるね」

「どんな話をしてたんですの?」

「マイケさんが毎日ブラシかけてくれるの、三年くらいの付き合いになるの、尻肉が柔らかいから乗せ甲斐があるのって言ってたぞ?」

「はあ、個人情報が筒抜けではないですか。しょうがない子」


 と言いながらもウマの背を優しく撫でるおっぱいピンクブロンド。

 信頼関係があるんだなあということがよくわかるよ。

 イシュトバーンさんの丸い目が、おっぱいピンクブロンドを捉えて離さない。

 おっぱいを抜きにしても相当気に入ってるみたいだな。

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