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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第214話:ともに塔の村へ

 どうやったら『アトラスの冒険者』になれるかなんて、多分誰も知らん。


「主催側の選抜みたいでサッパリわからないよ。あたし冒険者になるつもりなんか全然なかったのに、いきなり魔法陣作られて詳細は転送先で聞け、みたいな感じだった。ここも本当はウシ飼う予定の場所だったんだ」

「むう、仕方ないな」

「リリーは諦めが早いね。いや、『アトラスの冒険者』に関してはマジでどうにもならんのだけど」


 『アトラスの冒険者』は、多分異世界にある本部でメンバーを決めてるんだろう。

 でもこっちからも推薦できりゃいいのになあ。

 お勧めが何人かいますよ。


「『アトラスの冒険者』のパーティーメンバーにはなれるかも知れない。けど、リリーがやりたいのはそーゆーんじゃないんでしょ?」

「うむ、自分のやりたいようにしたいのだ」

「レイノスにいる皇帝の代理人ドーラ総督に許可を取れば、かなり好き勝手できるんじゃないの? お嬢様らしい気もするし。ダメなん?」


 リリー達のスタンスがイマイチわからないんだよな。

 黒服が顎に手を当て、難しい顔をして発言する。


「……いえ、可能な限り身分は隠したままで」


 なるほど、戦争にも政争にも無関係な立場でありたいということか。

 お嬢様第一主義は本当らしい。


「……さっきも言ったけど、ドーラと帝国はおそらく戦争になるんだ。万一の場合は帝国に帰れなくなるよ。ドーラに骨を埋める気でいいのかな?」

「そのつもりで国を出て来たのだ!」


 何故か誇らしげなリリー。

 色々あったんだろうな。


「よし、オーケー。じゃあ当面リリーの身分は隠すとして、行くのは塔の村がベストだな」

「おお、先ほど話に出ていた、大規模なダンジョンのある村か?」

「そうそう、冒険者サイドから言うと、ダンジョンで素材やアイテムを手に入れてきて、村で売って生計立てるってやつ。もちろん魔物も出るから腕試しになるよ」


 黒服が聞いてくる。


「危険はありませんか?」

「ダンジョンの難易度的な話なら、あんたらの実力があれば問題ない。脱出用の札が売ってるから、それ買っとけばさらに間違いないと思うよ。立場的な話なら戦時に最もヤバいと思われるレイノスから一番遠いし、塔の村の村長がドーラの大実力者の一人なんだけど、ドーラ独立派とちょっと考え方が違う人なんだ」


 ふむふむと聞いている二人。

 リリー、あんた内容頭に入ってるか?


「身を隠すだけならここにいるか、あるいは聖火教徒に身をやつして匿ってもらう方が安全だと思うけど、そーゆーの嫌なんでしょ?」

「うむ、そういうのは嫌だ」

「清々しいな。なら塔の村へ行くものとして、最低限塔の村の村長と信頼できるあたしの仲間には身分を明かしておくこと。ドーラで最大の影響力を持つ、『黒き先導者』ことパラキアスさんには皇女が来たってことを話しておかなきゃいけないけど、いいかな?」


 『黒き先導者』と聞いて顔色が変わる黒服。

 パラキアスさんって、帝国本土でも名を知られてるんだな。


「パラキアスと言えば、ドーラ独立派の急先鋒ではありませんか。ユーラシア様の意見といえど承服いたしかねます」

「いや、秘密にし通せるならいいんだけど、あの人多分リリーが国を出てきたこと知ってるぞ? もうドーラにいるってことまでは掴んでないと思うけど」


 愕然とする黒服。


「パラキアスさんの一番おっかないのは、細かい情報まですぐ仕入れてるところだよ。でも理性的な人だから、うちのじっちゃん、あ、これ塔の村の村長のことね。じっちゃんが庇護するリリーを強引に何とかしようとはしない」


 あちこちに足を運び、対話を最も重視する今までの姿勢からの推測だが。


「何故なら戦争になった際、後方から物資面で支援する役割を担う塔の村にそっぽ向かれるのは困るからさ」


 ふむふむと聞いている二人。

 リリー、あんた本当に内容頭に入ってるか?

 目がとろんとしてるように見えるのは気のせいか?


「ただここでパラキアスさんに話しておかないと、どーしてそんな重要な情報を持ってこないんだってあとで絶対揉めるでしょ? ドーラの実力者同士で諍いが起きると、こっちがまとまんないんだよ」

「よく理解できました。全てユーラシア様にお任せいたします」

「ヴィルカモン!」


 ビクッとしてリリーが目を覚ます。

 やっぱ寝てたろ。


「何だ、今のは?」

「悪魔を召喚する呪文みたいなもんだよ」

「「悪魔?」」


 二人が驚いている間にヴィルが現れる。


「ヴィル参上ぬ! 御主人、この二人は誰かぬ?」

「リリーとセバスチャンだよ」

「よろしくお願いしますぬ!」


 黒服が若干引いてる中、リリーが食いついてくる。


「何ぞ、この可愛いのは?」

「うちのヴィルだよ。幸せの感情が好物の悪魔」

「ヴィルだぬよ?」

「ふつーの悪魔は悪感情好きだから人間を嫌な目に遭わせようとするけど、好感情好きのヴィルはすごく愛想がいいの。ずっと人間と仲良くしたかったんだけど、悪魔ってだけでなかなか信用されなかった子でさ。だから仲間にしたんだ。うちの偵察係で、とってもいい子だよ」

「とってもいい子ぬよ?」

「ぎゅーしていいか?」


 リリーの行動パターンはあたしに似てる気がする。


「いいぬよ?」

「ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」


 リリーも愛情を一杯注いでくれたようだ。

 よかったね。


「……とっても気持ちいいぬ」

「ヴィル、パラキアスさんが明日、カラーズに来るのは間違いなさそう?」

「間違いないぬ、灰と白の民の村だぬ。今日礼拝堂泊まりなので、カラーズに到着するのは明日の午前中だと思うぬ」

「うん、ありがとう」


 すぐシャンとするところは偉いな。

 情報もしっかりしてる。


「さて、塔の村へ送ってくよ」


 うちの子達に声をかける。


「あたしの帰りはおそらく遅くなるから、御飯は三人で食べちゃっててね。あたしは向こうで済ませてくるよ」

「「「了解!」」」


 塔の村への転送魔法陣に二人を案内する。

 今日はヴィルも一緒だ。

 ヴィルを連れていくのは、リリーに注目が集まらないよう他人の視線を分断する意味合いが強いが。


『塔の村に転送いたします。よろしいですか?』

「うおお、何じゃこれ、頭に直接聞こえてくるぞ?」

「面白いでしょ。転送お願い」


 光と音が強くなり、上下が曖昧になるような感覚と同時に視界が遮断される。

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