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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2139話:つがいの魚の話だよ

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「精霊使いじゃないか。いらっしゃい」


 うちの子達とともにイシュトバーンさん家にやって来た。

 片目を隠した美少女番警備員ノアが言う。


「行政府へ行くのか?」

「レストラン行政府だね。時間でわかっちゃう?」

「まあ」

「働いてるとお腹減っちゃっうんだよ」


 あ、イシュトバーンさんが飛んできた。


「行政府だな?」

「うん、皆察しがいいなあ」

「時間が飯時なだけじゃねえか。今日は精霊連れか」

「少しずつレイノスの人を精霊に慣らしていかないとね」

「単に昼飯の都合だろ?」

「バレたかー」

「バレたぬ!」


 アハハと笑いながらしゅっぱーつ。


          ◇


「ユーラシアさん、イシュトバーンさん!」

「密会ですか逢引きですかスキャンダルですか?」

「おおう、いらっしゃい。食いつきがいいなあ」


 すぐに新聞記者ズが現れた。


「イシュトバーンさんは、釣りやったことある?」

「あるぜ」

「エサ放り込んですぐ反応があると楽しいよねえ」

「「何の話ですか!」」

「つがいの魚の話だよ」


 新聞記者ズの口パクパクしてるところが魚みたいだ、アハハ。

 え? 釣りのこともつがいの魚のこともどうでもいい?

 記事ネタが欲しいんだよね?

 わかってるってばよ。


「イシュトバーンさんの美人絵画集第二弾帝国版の話ね? 帝都の新聞で誰をモデルにしたらいいですかっていうアンケートを取って、上位にランキングされた人には全部交渉に行くよっていうシステム取ってるんだ」

「なるほど、新聞読者の認知度も期待度も高める作戦ですね?」

「うん。何事も裏工作は必要」


 アハハ、売りたい思惑ばっかりじゃないのだ。

 マジで帝国人のことはよく知らないから、モデル候補を知りたかったんだってばよ。


「例えばどういう人が上位にいるんです?」

「一位がリリー、二位が汎神教の聖女、三位があたし」

「ユーラシアさんも入ってるんじゃないですか」

「最近帝都で話題の美少女だからね。四位が帝都のおっぱいさん」

「「帝都のおっぱいさん?」」

「人気の踊子なんだぜ。そりゃあ見事な胸だった」


 イシュトバーンさんの顔が緩んでる。

 キリアナお姉ちゃんの踊りはあたしも見たいな。

 いつかイシュトバーンさんとショーを見に行こ。


「五位がファンシーショップの看板娘、六位が施政館の広報担当官アデラちゃん、七位がリリーの親友の侯爵令嬢、八位がおっぱいピンクブロンド男爵令嬢、九位がドジっ娘女騎士、一〇位がルーネだよ」

「随分バラエティに富んだラインナップですね?」

「第二弾も絶対に売れちゃう寸法だよ。ランキング一〇位までは全員モデルになる予定」

「一〇位までは全員話通してあるんだろ?」

「……二位の聖女キャロだけは話してないな。でも一度描かせてもらってるし、断りゃしないと思う」


 キャロに画集モデルを頼みに行く時には、ライナー君を連れてった方がいいかなニヤニヤ。


「現在は何枚描けているんです?」

「九枚だよ。内アンケートベスト一〇入りが六枚」

「やはり前作と同じ、二〇人くらいがモデルになりますか?」

「同じ二〇人がいいかなと思ってる。ちょうどいい数じゃない? 少なくすると購買者から文句が出そうだから、減らすことはないな」


 盛んにメモを取る新聞記者ズ。

 画集の話題は読者の興味をそそるだろうから。

 えーと、他の話題といえば……。


「そーいやこの前ヘリオスさんとこ行った時、記者さん達いなかったな」

「ネタになるようなことがあったんですか?」

「これも本に関係することなんだけどさ。帝国の先帝陛下の第一皇女ヴィクトリアさんが本好きで、軽い読み物を増やしたいって人なんだ。ヴィクトリアさんの仕込みで、今ヘリオスさんとこのお店で『神話級魔物を倒してプリンセスをゲットしました』っていう本を刷ってもらってるの。帝国よりドーラで本作った方が安いから」

「つい手に取りたくなるタイトルですね。ドーラでも販売されるんですか?」

「うん。騎士と王女の恋愛物語なんだよね。ドーラじゃウケないかなーと思ってたんだけど、内容がコミカルだからイケるってヘリオスさんは判断したみたい」


 まだ本を読む女性は男性に比べて少ない。

 ビアンカちゃんの本がきっかけになって、本を読む女性が増えるといいなとは思う。

 いや、男性が読んだって悪くはないけれども。


「で、この本のモデルはあたしなんだ」

「「「えっ?」」」


 ハハッ、イシュトバーンさんまで驚いてら。

 販促用のネタだよ。


「おい、どういうことだよ?」

「ユーラシアさんがヒロインですか?」

「いや、残念ながらヒロインじゃなくてヒーローの方。あたしがヤマタノオロチを倒したことと、それより時系列は前になるんだけどウルピウス殿下に求婚されたってことがあってさ。エピソードを魔改造してほにゃらら」

「ははあ、男女逆にしてってことか」

「面白い試みだよね。あたしも読んで自分がモデルって気付かなかったんだけどさ。作者の子がそう言ってたんだ。ちなみに作者の子も画集第二弾のモデルになるんだよ」

「作者は女性なんですね?」

「新皇帝プリンスルキウス陛下のお従妹様だよ。あたしより年下の、新進気鋭の作家さん」


 間違っちゃいないはずなのに、どーもビアンカちゃんに新進気鋭という言葉は似合わない気がする。

 人畜無害の作家さんのがよかった。


「他のネタだと、今から行政府行く用事に関係するんだけどさ。火事って起こると大変じゃん?」

「また随分変わった話題ですね?」

「パワーナインの一人、ペペさんに消火魔法っていうのを作ってもらったの。個人で使えるタイプで、数発撃ちこめば普通の家の火事くらいは消し止められるってやつと、五〇×五〇ヒロくらい範囲を一発で消せるっていう大火用のやつの二種類」

「「素晴らしいですね!」」

「大火用のやつは、個人が撃つには消費魔力量が現実的じゃなくてさ。魔道具使って撃つことになる。実用化は先になるな。でも個人用のやつはできてるよ。『ヒナギ』って名前の風と水の複合魔法で、効果はレベルや魔法力に作用されない。レベル低くても一発は撃てるという仕様なの。ドーラでの小売価格は五〇〇〇ゴールド」

「「ありがとうございました!」」


 注文あればカラーズに入れてください。

 さて、行政府に着いたぞー。

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