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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2128話:アンヘルモーセンからの書簡

「……ユーラシアさん」

「……うん。あたしが開けるから、ルーネが受けて」

「……はい」


 施政館の皇帝執務室の前まで来たが、何故か不穏な気配がプンプンする。

 何事?


「どうしたの?」

「しっ、声を落として。何者かが悪さをしようとしている」

「そ、そうなのね?」

「ビバちゃんはあたしの後ろにいてね」


 ビバちゃんも中級冒険者くらいのレベルにはなってるんだが、まだこの手の危機察知は難しいか。

 ルーネに目配せ。

 準備はオーケー、扉を開けるよ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「とりゃああ!」


 木剣を持った襲撃者の手首をルーネが掴む。


「あ、ネポスちゃんだったか。なかなかの撃ち込みだったよ」

「無念!」

「いやあ、お見事!」


 レプティスさんが拍手している。

 ネポスちゃんのレベルも上がってるんだけど、まだ身体のできていない子供だしな。

 そのレベルもルーネとは倍の開きがある。

 いいイベントにはなったんじゃないかな。


 一方でお父ちゃん閣下。


「どうしてユーラシア君が受けないんだ!」

「えっ? ルーネの訓練にちょうどいいかと思って」

「危ないじゃないか!」

「危ないと思うんだったらネポスちゃんを止めてよ」


 何を言ってるんだかわからん。

 あたしが予定通り動くと思うな。

 まあルーネのレベルで最初から危険を察知してるんだから、特に問題ないわ。


「それでネポスちゃんは何なの?」

「鍛えてくれたお礼だ!」

「お礼だったかー」


 これまたよくわからん理屈だが、ネポスちゃんもレベルが上がって嬉しいんだろう。

 土魔法の練習もしてるのかな?

 ビバちゃんに紹介する。


「あちらがルキウス陛下、ネポスちゃんの爺ちゃんのレプティス宮内大臣、広報担当官のアデラちゃんだよ」

「初めまして。フェルペダ王女のビヴァクリスタルアンダンチュロシアにございます」


 硬くなってるな。

 プリンスルキウス陛下の『威厳』に当てられたか?

 いや、イケオジ閣下がいるから緊張してるだけだわ。


 プリンス陛下が言う。


「ようこそ。ゆっくりしていってください」

「はい」

「ユーラシア君に礼をしたい」

「何だろ? 喜んでいただきます」


 ネポスちゃんを遊んでやった礼として、レプティスさんが何かくれるらしい。

 何かの木の苗があることが気になってはいた。

 わくわく。


「まだ国内でも出回っていないナシの新品種『香水』の苗だ。甘くて汁気の多い大きな実がなる」

「レプティスさん、ありがとう!」

「ハハッ、ユーラシア君はこういうものを喜ぶと聞いたのでな」


 これは嬉しい。

 サイナスさんとこ持ってこーっと。

 ドーラがフルーツ天国になる日も近い。


「挨拶はした。もらうものももらった。用はすんだな。帰ろうか」

「「ちょっと待て!」」


 プリンスと閣下両方から声がかかった。

 何だろ?


「ウルリヒさんが移民受け入れの関係で弧海州の様子見に行きたいって言ってたな。連れてっていいかな?」

「もちろん構わない。他にも用はあるんだ」

「さすがプリンス陛下だね。昼御飯がまだだったよ。でも時間早くない?」

「「そうじゃない!」」


 アハハ、声が揃うの面白い。

 ビバちゃんが言う。


「ねえ、あなた皇帝陛下に対して失礼なのではなくて?」

「失礼かもしれないけど、ドーラには王様とか貴族がいないから、身分の上下がないじゃん? 感覚がわからんとゆーか」

「ドーラでも君以外は予に敬意を払ってくれたよ」

「植民地根性の染みついた年寄り世代は、何となく頭下げたくなっちゃうのかもしれないな」


 あたしみたいな若者はそーでもないから。

 何事もなかったかのようにプリンスが言う。


「これを見てくれ」

「えーと、書簡?」


『暑さもそろそろ本番といった折り、ルキウス陛下に置かれましてはますます御健勝のこととお慶び申し上げます。通貨単位統一の悲願についてですが、来たる火竜の月三〇日に我がアンヘルモーセン国シャムハザイにて、カル帝国ガリア王国そして我が国の外務大臣級会合を開くのはいかがかと愚考いたしております。御都合をお知らせくださいませ。カル帝国の御隆盛のほど、お祈りいたしております。アンヘルモーセン国外務大臣ヒジノ』


「今月三〇日っていつだ。一一日後? 何これ? えらく急なんだけど?」

「おかしいだろう?」


 おかしいっていうか、ムリでしょ。

 帝国はともかく、ガリアから一一日後にアンヘルモーセンで会合に出向くなんて、時間的に間に合うわけない。

 お父ちゃん閣下が腕組みをする。


「この前のヒジノ枢機卿の反応からして、通貨単位統一に乗り気だとは思う。ギル通貨圏を分裂させたくないのでアンヘルモーセンを理事国にという意図も通じてるだろうから、テテュス内海におけるアンヘルモーセンで会合をというのもよくわかる。しかし……」

「開催時期がおかしいと」

「この書簡が届いたのが昨日なんだ。アンヘルモーセンが意欲に満ちていて一刻も早く通貨単位統一を果たしたいのだと、良く解釈するとする。我が帝国はギリギリ間に合わなくもないが、ガリアが間に合うと思えない」

「ごもっとも」


 ガリアの首都ヴァロマからサラセニアまで騎兵で一二日。

 そこから海路でアンヘルモーセン行きとなれば、普通に行くんだったら半月かかっちゃう。


「この手紙はふつーのルートで来たんだよね? 天使が運んだとかじゃなく?」

「普通にタルガ経由で届いたよ」

「ヴィル、天使はワープできる子っているのかな?」

「知らないぬ。でもいるかもしれないぬ」

「質問を変えようか。天使が人間の使い走りで手紙運ぶなんてことある?」


 首を傾けるヴィル。

 よしよし、可愛いね。


「……天使はすごく威張ってるぬ。よほどの交換条件じゃないと難しいと思うぬ」

「だよね。よほどの交換条件をたかがお使いごときで使うわけないから、そのセンはないな。とすると……」


 天使が関与していないなら、ガリアは絶対会合に間に合わない。

 悪質な嫌味で話を壊そうとしてるなんてそれこそ考えられない。

 じゃああたしが間に入って、外務大臣を連れていくしかないじゃん。


「どうやらあたしに来いってことみたいだね。アンヘルモーセンの思惑がわからんけど」

「やはりそういう解釈になるか」

「あとで行ってくるよ。ルーネとビバちゃん連れて」


 ネポスちゃんの方チラッと見たら、レプティスさんに止められてら。

 用があるっぽい。

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