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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2127話:首ちょんぱの確率は

「自分のレベルが上がったら、他の人がどれほど強いかというのがわかるようになりましたの」

「うん、レベルも二桁を超えてくると、徐々に察知する力がついてくるからね」


 ルーネビバちゃんと連れ立って施政館へ行く途中だ。

 相手が強いか弱いかってのは、あんまり冒険者経験や戦闘経験がなくてもレベルさえあれば察せられる気がする。

 ビバちゃんが喋る喋る。


「宰相グラディウスがすごいのです!」

「グラディウスのおっちゃんはやるよね。何であれで文官なんだか、わけがわからん」

「グラディウスよりあなたは何ですの? それこそわけがわかりません」

「あたしは美少女精霊使い兼ウルトラチャーミングビューティーだとゆーのに」

「ユーラシアさんは世界で一番レベルが高いんですよ」

「多分ね。あたしはレベル上限が一五〇になるっていう、レアな固有能力持ちなんだ。それでレベルカンストしてるから」

「ムチャクチャですわ!」

「よく言われる。ムチャクチャだのデタラメだの美少女だのって」

「美少女は関係ないのですわっ!」

「関係ないぬ!」


 アハハと笑い合う。

 まーレベルが一〇〇超えてる人間はあたし以外にいないんじゃないの?

 知らんけど。


「ま、女王になるんだから、人を見る目は大事だよね。今後ビバちゃんがレベルの高い、いかにもやるやつを見逃すってことはないじゃん?」

「ないわね。ありがたいことだわ」

「そこが落とし穴だぞ?」

「えっ?」

「確かにレベルが高きゃやれることは多くなるけど、できるやつできないやつはレベルだけじゃ決まんない。特に研究者技術屋発明家商売人なんかはそう。レベルで侮ってはならない。使える人材を見逃すと国の損失だぞ。いいね?」

「む、難しいのね?」

「難しい。でも自分だけの意見で決める必要は全くないからね」

「どういうこと?」


 ポカンとすんな。

 メイクがメイクだからアホ面に見えるのだ。


「明らかにやるやつ、しかも忠誠心が高いって人がいたら、その人の意見に乗ってみりゃいいよってこと。自分で独走するより遥かに失敗が少ない。ビバちゃんの場合だと、グラディウスのおっちゃんは大事にして、言うことよく聞くといいよ」

「グラディウスの忠誠は期待していいのかしら? ズケズケ文句ばかり言うのよ?」


 わかってないなー。

 文句言ってくれる人ほど重要だとゆーのに。

 わからせておかねば。


「フェルペダで当てはまるかは知らんけど、一般に宰相ってのは、国王に次ぐ国のナンバーツーってことでしょ? 政治上の」

「フェルペダでも同じですわ」

「グラディウスのおっちゃんのレベルだったら、文官であっても軍や騎士からの人気は高いと思うけど」

「その通りね」

「あのおっちゃんが本当に悪いやつだったら何も言わないよ。ビバちゃんが取り返しのつかない失敗したところで糾弾して、王族全員首ちょんぱすれば、勝手に王座が転がり込んでくるんだから」

「ま、また首ちょんぱ?」


 どこからでも首ちょんぱ案件になり得るんだとゆーのに。

 自分の立場の危うさを自覚しろ。

 油断すんな。


「ところがグラディウスのおっちゃんは、自分の立場が悪くなるかもしれないのに王様やビバちゃんに諫言してくれるじゃん? メッチャありがたいことだよ。だから王様もすごく信頼してるんだろうけど」

「そう……ね」

「ビバちゃんにギャースカもの言える人は、両親除くとグラディウスのおっちゃんハーマイオニーさんあたしくらいかな? 今のところ」

「ええ」

「その中でフェルペダ国政に影響力ある人は、グラディウスさんだけだぞ? 苦手意識持たずによくよく相談してください」

「わかったわ」

「本当は一人に寄りかかり過ぎるのは良くないんだぞ? 人は必ず間違いを起こすものだからね。思考が偏るのはよろしくない」

「じゃあどうすれば……」

「人とたくさん知り合おうね。フェルペダ国内でも、グラディウスさんやハーマイオニーさんが推薦してくれる人には会ってみるといいよ。意見してくれる人が増えてくれば、それだけ首ちょんぱの確率は減ると思えばいい」

「ひやっ!」


 ハハッ、どーしても首ちょんぱの可能性からは逃れられないのだ。

 でも『アイドル』をコントロールできるようになったビバちゃんは、人間関係において有利だと思うがなあ。

 今まで他人との接触が少なかった分、対人スキルが未熟なのはよろしくないが。

 ルーネにも同じことが言えるんだよな。

 なるべく連れ回して、密度の濃い出会いを経験させてやろう。


 ルーネが言う。


「ユーラシアさんから見て、今のビヴァ様の首ちょんぱの可能性はどれくらいなんですか?」

「あ、あなた他人事だと思って、意外と残酷なこと言うのね?」

「ルーネは割とシビアだぞ? あのお父ちゃん閣下の子だもん」


 今のビバちゃんの首ちょんぱの確率か。

 興味深いが、どれくらいだろうな。

 むーん?


「……確実にビバちゃんは進歩してる。これは間違いない。だから首ちょんぱの確率は減ってると思っていい」

「半分以下になったかしら?」

「楽観的過ぎるわ。まだ不幸な運命を辿る確率のがうんと高いわ」

「ええっ? ぶるぶる」

「いや、それはしょうがないんだ。まだビバちゃんが変わったってことを知らしめる機会がないから。ごく近い人以外、ビバちゃんを取り巻く人の意識が変わってないでしょ」


 イコールヘイトを払拭する機会がないとゆーことだ。


「初めて会った時みたいに、見た瞬間にこりゃ一〇〇%ダメだって思うほどじゃないよ。だから確率って言われても、細かい情勢を知らなきゃ出せないな」

「初めは一〇〇%ダメでしたの?」

「うん。今のビバちゃんならわかると思うけど」

「……わかります」


 今後も引き続き努力してください。

 進歩が著しいことは認めます。


「カル帝国の皇帝陛下はどんな人なの?」

「ビバちゃん好みのイケオジじゃないと思うよ」

「見た目はポチャッとした体形のお方です」

「今までビバちゃんの会ったことないタイプの人だよ。人当たりいいし威張ってもいないけど、この人の言うことは聞かなきゃって気になる。さすが帝国の皇帝だなって感じると思う」

「そうなのね?」


 ビバちゃんは様々な人に会うべきだ。

 高レベル『威厳』の持ち主と相対する機会なんてほとんどないだろう。

 これも経験だよ。

 さて、施政館にとうちゃーく。

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