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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2123話:オープンな社会を目指す

「素晴らしい!」

「「「素晴らしいです!」」」


 描き上がったイシュトバーンさんの絵を絶賛する、うっかり元公爵と新聞記者トリオ。

 まードジっ娘女騎士メリッサは黙ってりゃオーソドックスな美人だし、絵が勝手に喋るわけじゃないからな?

 

「なかなかいい出来だぜ」

「ただの清楚系えっち絵じゃん。ドジっ娘メリッサの超面白いところがこれっぽっちも表現されてない」


 絵をガン見していたメリッサが言う。


「ドジっ娘の面白いところは表現されてなくていい!」

「ほら、本人もこう言ってるじゃねえか」

「ええ? 納得いかない」


 でも本人と絵師と購入者予備軍が納得だもんな?

 べつにいいのか。

 あたしの意見が通らないのはもやっとするけれども。


 ルーネとオードリーが楽しそう。


「私、描いてもらうのがすごく楽しみなのです」

「わらわもなのじゃ!」

「オレも楽しみだぜ。右手が疼くぜ」

「もー今度は疼くのか。どこからが病気だかわからんのが困る」

「至極健康だぬ!」


 アハハと笑い合う。

 今日もいい絵になりました。

 画集帝国版も少しずつ完成に近付くなあ。


「メリッサありがとう。これはお礼だよ」


 透輝珠を渡す。


「えっ……却って迷惑をかけてしまった気がするんだが」

「エンターテインメントのこと? 期待に違わぬ面白さだったわ。ごちそーさまです。それはそうと、魔宝玉はモデル代として一律に渡してるものだから、もらってちょうだい」

「そ、そうか。ではいただこう」

「さて、あたし達は帰るけど」


 まだ外は結構な嵐だ。

 外を歩くと危ないな。


「夏は天気も変わりやすい。しばし休んでいけばよかろう。何なら泊まっていっても構わぬぞ」

「ライナーとお泊りライナーとお泊り……」

「ドジっ娘メリッサは面白いなあ」


 新聞記者が困ったように言う。


「原稿の締め切りがあるんですよ」

「そろそろ帰らないといけないんですけど……」

「じゃあ転移で送ってくよ。ヴィル、新聞社に行ってくれる?」

「わかったぬ!」


 掻き消えるヴィル。

 ルーネが聞いてくる。


「ユーラシアさん、明日はどうします?」

「ビバちゃんと合流してから来るよ。朝、近衛兵の詰め所で待っててくれる? 帝都の悪天候が続くようなら、その時考えよ」

「わかりました」


 明日はフェルペダのビバちゃんと帝都観光の予定だったのだ。

 雨なら別のどこかへ行ってもいいしな。


『御主人! ビーコンを置いたぬ!』

「ヴィルありがとう。そっち行くね。じゃ、皆さんさよならー」


 新しい転移の玉を起動、イシュトバーンさんと新聞記者トリオを連れ新聞社へ。


          ◇


 お肉(加工前)とともにフワリと降り立つ。

 赤眼族の集落にやって来た。


「こんにちはー」

「おお、精霊使いの人じゃねえか。久しぶりだな」

「あんまり来れなくてごめんね。こっちの様子はどうかな?」

「おお、順調だぜ。あんたの持ってきてくれたクレソンあるだろう?」

「魔境のクレソンか。あれいいでしょ?」

「メチャクチャ増えるじゃねえか。最近毎日食ってるぜ」

「あはははは!」


 あれ冬でも増えるんだよな。

 食べ物に困らないことはいいことだ。

 あ、村長とミサイル来た。


「こんにちはー」

「ああ、よく来てくれた」

「お肉持ってきたから皆さんでどーぞ」

「いつもすまんね」


 解体作業が始まる。

 うんうん、おにくびみらー。

 骨スープもおいしいよ。

 ミサイルが聞いてくる。


「今日は遊びに来たのか?」

「何て言ったらいいのかな……赤眼族の展望を聞きに来たんだよ」

「「「赤眼族の展望?」」」

「うん。農業は絶好調みたいじゃん? 今後赤眼族はどうしていくのかなーって」

「漠然とした問いだな」


 笑いながらも村長が答えてくれる。


「今までの路線、この狭いコロニーに閉じこもって細々と生きていくことが全てだったやり方はつまらないな。魔物を倒せないか、コロニーを拡張できないかという考え方が住人の主流になってきているんだ」

「おお、いいことだね。でもこの辺の魔物、多分強いはずだぞ? むやみと倒そうとしない方がいい」

「『アトラスの冒険者』になりたい!」

「ミサイルごめんよ。『アトラスの冒険者』は来月廃止されることになったんだ」

「「「えっ?」」」


 まあ驚くだろう。

 これは話しておかなければ。


「赤眼族がどっかから追放されてきた一族って話があったじゃん? 亜空間に隔たれた異世界から追放されたんだそーな。あんた達は向こうの世界での王族で、『アトラスの冒険者』は元々、向こうの世界が赤眼族を監視するために作った組織なんだって」

「「「……」」」

「だから最初、『アトラスの冒険者』は敵だと言い伝えられてたんじゃないかな。とゆーことを知ったって何ができるわけでもないんだけどさ。自分達のルーツくらいは知っててもいいんじゃないかと思って」

「じゃあ俺が食べたかれえは、元の世界の本来のかれえなんだな?」

「おおう、かれえに突っ込むのか。ミサイルはなかなかやるな。そーゆーことになるね。あれが本来の伝承にあったかれえ。とゆーか本来のかれえのレシピから派生して、誰でも作れるようにしたもの、って言った方がいいかな」


 かれえは再現が近いよ。

 くみんの種はかなり確保できている。

 こりあんだあの種が取れるのが秋なので、それから試作にゴーだ。


「『アトラスの冒険者』が廃止されちまうと、あんたはここへ来られなくなるのかい?」

「いや、時々遊びに来るよ。あたしには『アトラスの冒険者』とは関係のない転移方法があるから」

「それは重畳だ。我々はオープンな社会を目指す。君の助力を期待していいだろうか?」

「もちろんだよ」

「過去のことは正直どうでもいい。未来のことが重要だ」


 うんうん、未来志向は当然だね。

 赤眼族の考え方は完全に他所の部族との協調路線に変わった。

 ともにドーラの発展を目指そうじゃないか。


「ところで赤眼族の成人年齢は何歳かな?」

「ん? 何故だい?」

「あたしらも急に『アトラスの冒険者』がなくなると困るから、新しい組織を作るんだ。さっき言った独自の転移方法を利用してさ。ミサイルも興味があったら、成人後に新『アトラスの冒険者』の一員はどうかなと思って」

「なる! 五年後だ!」

「よし、こっちもそのつもりでいるよ。新『アトラスの冒険者』を発足させたら詳しい話をしにくる。またねー」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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