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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第212話:職業冒険者は冒険なんかしない

 さて、例の六芒星大広間のところまで来た。


「ついにボスのところまで来たな! 腕が鳴るぞ!」

「リリーは好戦的だなー」

「ぬしは冒険者なのであろ? 強敵相手に胸が躍ることはないのか?」

「リリーは冒険者を誤解してないかな? 職業冒険者は冒険なんかしない。安全に確実に儲けたいんだよ」

「む、夢がないの」


 夢? 何それおいしいの?

 ボスことトロルメイジが肥満体で威圧してくる(笑)。

 まあ物理攻撃さえ有効なら、トロルメイジごとき敵ではないのだが。


「おお、武者震いするぞ!」

「落ち着け、冒険なんかせんでいい」


 レッツファイッ!


 ダンテの実りある経験! あたしのハヤブサ斬り・零式! 『暴虐海王』の効果でトロルメイジの全ステータスを下げる! 『あやかし鏡』の効果でもう一度ハヤブサ斬り・零式! リリーの鉄拳! クリティカルだ! 黒服の流突六連! よし、倒した!


「ん? 我のレベルがいくつか上がったようだぞ」

「レベルは大事だよ。よかったねえ。あ、何かドロップしてるわ。魔法のアクセサリーか。リリーもらっときなよ」

「よいのか?」

「いいのいいの。あたし達の装備品は特殊だから、普通のマジックアイテムは効果が干渉しちゃうことあるみたいだし」


 黒服が興味を持ったようだ。


「言われてみると変わった装備品ですね。差し支えなければ見せていただけませんか?」

「カードか? コレクションしてるのか?」


 グイグイ来るなあ。

 変わってるから見てみたいのか、武器自体に興味があるのか。

 あたしからすると武器なんてのは魔物を倒す手段に過ぎない。

 他人の戦い方に関心はあっても、持ち武器自体にはあんまり関心がないんだが。


「これ、パワーカードって言うんだよ。装備者の魔力で起動するの。精霊は普通の武器を持てないからこれ使ってる」

「ほう、ドーラには変わったものがあるな」

「一人七枚まで同時起動できるんだ」

「単純に武器というわけではなくて、防具も含めた装備体系ということですか?」

「うん。うちのパーティーだと、同じ前衛でも盾役のアトムは防御を重視してるし、メイン火力のあたしは攻撃系を多めに装備してるよ。工夫ができるとことが面白いかな」

「で、コレクションしてるのか?」


 何故コレクションに拘るのだ。

 こらアトム頷くな。


「こういうケースにはこのカードがいい、みたいな相性があるよ。だから結果としてカードは増えちゃうね」

「ユーラシア様が二度攻撃したのもカードの効果ですか?」

「一ターンに二回行動できる効果のレアなカードを装備してるから」

「ドーラでは皆がこれを使ってるのか?」

「いや、実はパワーカードって骨董品みたいな扱いでさ。あたし達だけしか使ってなかったんだ。最近使用者増えてるようだけど」


 黒服が聞いてくる。


「ところで戦闘開始時にダンテさんが用いたスキル、あれは何ですか?」

「その戦闘における経験値が倍になるスキルだよ」

「「倍?」」


 二人が驚く。


「……ボス戦で使うスキルではないのではないか?」

「ギリギリの戦いになるなら使わないけど、じゃなきゃ使ったほうがよくない?」

「つまりユーラシアにとっては、トロルメイジは大した魔物ではないと?」

「昨日の物理無効みたいな枷がなければね。冒険なんかしないって言ったじゃん。あたしはこう見えてもドラゴンスレイヤーだぞ?」

「「ドラゴンスレイヤー?」」


 あんまり驚くなよ。

 経緯が格好よくないから話すの嫌なんだ。


「……好きでドラゴンと戦ったわけじゃない。守るべきものがあったから、避けられない戦いだったんだ」

「意訳すると、貴重なアイテムをドラゴンが踏み潰しそうになったから、慌てて戦ったということか?」

「何でわかるんだよー、エスパーか!」


 笑い声の響く中、より奥へと進む。

 狭い通路を通っていると何かが襲ってきた。


「しめた! お肉だ!」


 レッツファイッ!


 ダンテの実りある経験! あたしの発手群石! ウィーウィン!


「これ帝国にいるかは知らないけど、洞窟コウモリって言ってすごくおいしいお肉なんだ」

「ほう」

「村の人のお土産に持ってってやろ」


 黒服が顔を顰めて言う。


「ユーラシア様は随分とあの村人達に甘いですね」


 『あの』の強めのアクセントに込められた感情を含め、黒服の言いたいことは理解しているつもりだ。


「黒服さんはお嬢様第一だろうけど、あたしはドーラの人間だからね。開拓民の生活の苦しさもわかるんだよ。さっきも言ったけど、なるべく人死にには避けたいし、皆でハッピーが一番いい。昨日、黒服さんが村人を殺さなかったことに関してはすごく感謝してるよ」

「しかし私は……」


 言いかけて黒服は苦笑する。

 あの場面、村人を全員倒すことができたとしても、リリーが帰ってくるとは限らなかったのだ。

 殺人でお尋ね者になったとしたら、いよいよリリーの身の置き場がなくなる。

 そーゆー計算があったことはあたしにもわかるよ。


「リリーは愛されてるねえ」

「愛らしいからな」

「ハハハッ。帝国のジョークは最高だねえ」

「何だとお!」


 笑いの中、さらに奥へ。


          ◇


「……暑くないか?」

「暑いねえ」


 どうなってるんだ?

 もう秋も秋、一〇の月も下旬だというのに。


 しかし六芒星大広間がこの遺跡の真ん中に配置されているとすると、そろそろこの道のりも終わりのはずなんだが。

 先に何があるというのか?


「とても明るいですね」


 突き当たり右側が、ヒカリゴケに慣れた目には非常に明るく感じる。

 おそらく外部の光が差し込むのだろう。

 だったら外気で寒くてもよさそうなのにな?


「ふわあ……」

「これは美しい……」


 突き当たりまで行くと、六芒星大広間以上に広い空間があった。

 植物に埋め尽くされている。

 中央と外縁が池になっており、その周りと壁が鏡のような石で覆われているのだ。

 上あるいは横から差し込む光を反射し、非常に明るくなっている。


「光の差し込まない方向は壁が高い。植物を育てる空間として工夫されているのだな」

「あっ、池の水が温かいじゃん!」


 どういう仕組みだかわからないが水温は高い。

 これで植物の生育に適した気温をキープしているのだろう。


「これは洞窟コウモリの天国だわ。少し狩っていこう」


 『発手群石』で簡単に洞窟コウモリ仕留められるな。

 お土産を十分確保したあと、クララの『フライ』で脱出する。

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