第210話:どっかん(キュート補正)
上を見上げ、ダメかもわからんとゆーあたしの発言を聞いて声を荒げるリリー。
「こら、何しに来たんだ精霊使い!」
「まあ落ち着きなよ。ロープを引き上げられちゃうところからすると、どうやら村人達は敵で確定だな」
「ぬしは何を落ち着いているのだ!」
「だから黙ってろとゆーのに。今あたし達が穴のすぐ下にいるのがバレたら、デカい石で攻撃されたり開かないような蓋されたりしそーだろうが。出るに出られなくなっちゃうわ」
「む……」
ちょっとは頭冷えたかな?
「いや、ダメかもわからんとゆーのはあたしらのことじゃなくて、あんたの従者の黒服さんがさ」
「セバスチャンが? かなりの使い手だぞ?」
「できる人ってのは見りゃわかるけどさ。精神状態がどうかなってこと。さっき会った時はかなり焦ってたぞ? 昨日は寝てられなかっただろうし」
「そういえば……」
「大体黒服さんが見張ってりゃ、ロープを引き上げられちゃうことはないと思うんだよね。上で何か起きてるのは間違いないんじゃないかな」
リリーと顔を見合わせる。
「急ごうか。クララお願い!」
「わかりました。フライ!」
「おお見事、飛行魔法か!」
あたし達五人の身体がフワリと浮き、井戸のような出入口から次々と脱出、黒服を囲んでいた村人達を華麗に蹴り飛ばす。
危機一髪の場面に登場する皇女と美少女精霊使い。
くうっ、クエストの醍醐味だよ。
こうでないとね。
「ただいま! 踏んづけちゃったけどわざとだよ。ごめんね」
リリーが黒服に声をかける。
「セバスチャン! 大丈夫か?」
「お嬢様こそ、よくぞ御無事で!」
「お嬢様? 誰が?」
「こらこらこらこらっ!」
アハハ、お約束だとゆーのに。
シリアスな場面ほどエンターテインメントを求めてしまう乙女心なのだ。
「リリーなら中でグッスリ寝てたから全然問題ないよ」
「ここは感動の場面だろうが! ギャグシーンのセリフを挟んでくるな!」
エンターテインメントだってば。
まあ楽しみはともかく。
おイタをした村人達を正座させ、地下遺跡でゲットした六つの宝玉をその前に置いた。
「これあげるからさ、二人を歓待してあげてよ」
「ど、どういうことだ」
「この村の地下のダンジョン、どうやらまだ秘密があるっぽいんだよね。明日もう一度来て探索してみるよ。財宝でも出たら分け前あげるから」
わけがわからないといった面持ちの村人達。
ポカンと口を開けたり、互いに顔を見合わせたりしている。
リリーが言う。
「いいのか? せっかくの宝玉をこんな不埒な村人どもに与えて。値打ちものだぞ?」
「いいよ。村の地下にあったものだから、村に所有権があると言えないこともないし」
あたしのカンはリリーと知り合えたこと自体がメリットだと強く囁いている。
宝玉はどうでもいいかな。
盗賊村なんてお金に困ってるに決まっているのだ。
ならば宝玉を気前よくあげて村人の歓心を買った方がいい。
「あんた達が旅人を襲うのは、生活が成り立たないからなんでしょ? 追いはぎ行為の是非はひとまず置いとこうか。対価を払うからこの二人をもてなしてくれって言ってるの」
「そ、そういうことなら構わんが……」
「ほんと? 約束したからね? ちなみに約束を破ったらこうなります。ダンテ、空に向かってアレ」
「イエス、ボス!」
アレと言えばもちろんアレ。
ペペさん秘伝の最強のネタ魔法『デトネートストライク』。
凄まじいまでの魔力が凝縮され、天に放たれる。
こっそりダンテにクララのヒールのあと、衝撃と『どっかん(キュート補正)』という爆音と衝撃が来襲する。
村人達は這いつくばってるけど、よかった。
小屋や畑に被害はないようだ。
「今のはドーラ最強とも言われるマスタークラス魔道士直伝の、この世で最も威力のある魔法でーす」
この魔法、こーゆー時の脅しに使うには最高かもしれないな。
村人達も青い顔になる人と白い顔になる人がいるのが面白い。
「二人をもてなして分け前をもらうのがいいか、村ごと盛大に吹っ飛ばされるのがいいか。損得のわからない愚か者はまさかいないと思いますが、一応参考にしてください」
カラクリ仕掛けなのかってくらい首をコクコクする村人一同。
よーし、これで問題ないだろ。
その様子を見ていた皇女リリーが言ってくる。
「世話になったな。でもよかったのか? あの宝玉」
「あたしはドーラがいいところになって欲しいんだよ。悪いところを潰すって方向性じゃなくてさ」
まあ二人の安全が確保されて村人も喜ぶなら万々歳だ。
ここだって好きで盗賊村やってるわけじゃないだろうしな。
「明日、午前中にまた来るよ」
「ぬしの名を聞いておらなんだが」
「あたしはユーラシアだよ。で、うちの子がこっちから順番にクララ、アトム、ダンテね」
「ユーラシアか。神話の地母神から取ったのだろう? 大層な名だな」
「リリア何とかいう長ったらしい名前よりマシだよ。あれ、覚えらんないんだけど」
二人で笑い合っていると、黒服が深々と頭を下げる。
「ユーラシア様、ありがとうございました。この御恩決して忘れません」
「え? いいんだよ。今日はゆっくり休んでね。じゃあ詳しいことは明日で」
「おう、明日楽しみにしてるぞ」
ハハッ、黒服が敬語になっとるわ。
転移の玉を起動し帰宅する。
ふむ、やはりボーナス経験値の加算がない。
となれば明日も何かイベントの続きがあるということか。
楽しみだなー。
さて、今日は遅くまで働いた。
とっとと夕御飯食べて寝よ。
◇
――――――――――五二日目。
「カカシー、ありがとうね」
今日は六日に一度のステータスアップ薬草株分けの日。
これからは毎日株分け分を食べて、パラメーター増強を図ることができるのだ。
「いや、本当は凄草でこのサイクルが確立できさえすれば、パワーアップ効率が全然違うんだけどな。オイラの力不足ですまねえ」
「何言ってんだよもー。あんたはよくやってくれてるよ」
パワーアップもありがたいけど、単純に食料が確保できることが何より嬉しいんだぞ?
カカシ様々だ。
「よーし、植え替え終わり! 行ってくるよ」
「おう、行ってこい!」
うちの子達と魔法陣の中央に立つ。
『自由開拓民集落バボに転送いたします。よろしいですか?』
「名前が変わったね。転送先は同じとこ?」
『はい、そうです』
「転送よろしく」




