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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2096話:モイワチャッカとピラウチの会談が実現しそう

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「君か」

「あたしだよ」

「わっちだぬ!」


 『世界最大のダンジョン』から帰ったあと、魔境で少し楽しんでモイワチャッカへやって来たのだ。

 何と意味のない会話だって?

 いーんだよ、会話そのものに意味はなくたって。

 隻腕の傭兵隊長カムイさんの機嫌が今日はいいなってことくらいわかるんだわ。


 ついでに言うと、ぴー子が今か今かとエサを待っている。

 つぶらな目であたしから視線を外しゃしないわ。

 可愛いやつめ。


「ぴー子、エサ持ってきたぞー」

「ぴい!」

「毎日毎日すまんな」

「いいんだよ。あたしもぴー子に顔忘れられると悲しいからね。ぴー子、待て」

「ぴい」

「よし!」

「ぴい!」


 ガツガツとクレイジーパペットの亡骸を食べるぴー子。

 待ても完璧にできるようになった。

 いい子だなあ。


「それにしてもでっかくなったなー」

「もう少しで成鳥の大きさだろう」

「まだ大きくなるのか。綿毛ふっかふかだから、成鳥よりもデカく見えるわ」

「そうだな。天真爛漫に伸び伸びと育っている」


 カムイ隊長が目を細めている。

 『神の親』として、ぴー子の成長は感慨深いものがあるんだろうなあ。


「ねえ、これっていつまでぴいって鳴くのかな?」

「幼鳥の鳴き声はエサのおねだりだと聞いたことがあるな。巣立つ頃には成鳥の鳴き声に変わるのではないか?」

「そーか、とゆーことはあと一ヶ月ちょい?」

「来月一杯くらいかもしれんな」

「ぴいって鳴かなくなっちゃったら、ちょっと寂しく感じるかも」


 ぴー子は巣立ったらどうするんだろうな?

 ガルーダ本来の生息域に帰るのか、それともカムイ隊長とともに生きるのか。

 これだけ人慣れしちゃうと、野生に戻るのは難しい気がするなあ。

 このままずっと神様扱いされてりゃいいんじゃないかと思う。


「モイワチャッカとピラウチの会談が実現しそうなんだ」

「へー、やったねえ。平和を実現できそう?」


 口を『へ』の字にして肩を竦めるカムイ隊長。

 あれ、かなり難しいのか。

 戦争なんてバカなことはやめりゃいいのに。

 得なことなんかありゃしないわ。


「どうだかな。互いに相手のことを全然信用してないだろう? おまけに間に入る傭兵隊も信用されてないときたもんだ」

「そんな状態でよく会談にこぎつけたね?」

「平和会談を行うとなれば、戦争に飽き飽きしている両国の国民は喜ぶからな。戦闘抜きに状況がいい方向に動くチャンスなんて、今までほぼなかったんだ。会談が実現するとなれば、平和への希望だけはあるように見える。蹴ったとなれば国民が納得しない」

「おおう、メッチャ消極的な理由だったぞ。じゃあモイワチャッカとピラウチ両国の首脳は、あんまり会談を歓迎していないの?」

「歓迎していないわけでもないな。ある程度の期待感は持っているんじゃないか? しかしどの陣営にとっても、信用してない連中に囲まれての会談だ。カメのように甲羅に閉じこもって、揚げ足を取られない発言をするだけになるんじゃないかな。実のある結果を残すことは非常に難しい」


 むーん?

 さすがに三〇年も戦争やってると、凝り固まっちゃってほぐすのが大変ってことだな。

 気分だけでも和らげる材料を投入してやらないと、会談するだけムダって空気になっちゃうかもしれない。


「何とかならないか?」

「あたしに投げてくるのかよ。各陣営が信用できる相手を放り込んでやれば、ちょっとは話しやすくなると思うけど」

「具体的には?」

「外国の要人を親善大使なりオブザーバーなりの名目で参加させる」

「それだ。何とかならないか?」


 あ、だからあたしに振ったのか。

 誰か連れてこいって意味だった。


「あたし自身がカル帝国の施政館参与だし、この前紹介したドミティウス殿下みたいな重みのありそーな人を連れてくることはできるよ」

「帝国はそれでいいとしてもう一ヶ国。ここいら近隣の諸国で最も影響力のある国はフェルペダなんだ。フェルペダから誰か参加してもらえまいか?」

「うーん?」


 フェルペダであたしと仲がいいのはビバちゃんだ。

 でもビバちゃんが会談に興味あるか?

 つまんなくて不機嫌になったら、『アイドル』が悪い方に作用してメチャクチャになりそーだしな?


「……あたしもフェルペダの国情はわからんから、ちょっと約束はできないな。でもフェルペダの偉い人に話を通すことはできると思う。どの程度のランクの人を寄越してくれるかはわかんない」

「いや、大国の実力者の名代が来てくれれば十分だ」

「そお?」


 誰でもいいから来てくれることが大事みたいだな。


「ところで会談はいつ頃になりそーなん?」

「来月の頭くらいだな」

「あたし来月の頭でダメな日が二日ほどあるな」

「何日がダメなんだ?」

「一日と……」


 新『アトラスの冒険者』用転意の玉を配る日は、『アトラスの冒険者』廃止を正式に通告する日である来月一日になるだろう。

 もう一日、アルハーン平原開拓地を北に広げる作戦行動の日がダメだ。

 何日だかは知らない。


「聞かなきゃわからんな。ヴィル、サブローさんと連絡取ってくれる?」

「わかったぬ!」


 掻き消えるヴィル。

 感心するカムイ隊長。


「遠隔地と連絡か。つくづく便利だな」


 便利なんだよ。

 赤プレートに反応がある。


『御主人! サブローだぬ!』

『おいおい、精霊使いのお嬢ちゃんかい? 何かと思ったぜ』

「そうそう、とびきりの美少女のあたし。開拓民居住区を北に広げるの、いつだか決まった?」

『ああ、相談しようと思ってたんだぜ。いつが都合がいいんだ?』

「飽魚の月一日から何日か過ぎれば大丈夫」

『七日でどうだ?』

「了解、来月七日ね。開拓地の皆さんにもそう伝えといてよ」

『わかったぜ』

「じゃーねー。ヴィルありがとう。通常任務に戻っててくれる?」

『わかったぬ!』

「とゆーわけで、来月の一日と七日以外ならオーケーだよ」

「要人は君の転移で連れてくる、移動時間は考えなくていいという理解でいいんだな?」

「うん。構わない」

「数日中に日を決定する。ガルーダにエサやりにくる時にでも伝えよう。それでいいか?」

「問題ないでーす」


 二つの国が一歩を踏み出そうとする瞬間に立ち会えるなんて嬉しいなあ。


「じゃ、また来るね」


 転意の玉を起動して帰宅する。

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