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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2083/2453

第2083話:魔王島の生活環境

「クオンか。会いたかったぞ!」

「うおー暑苦しい」

「暑苦しいぬ!」


 クオンなるやや小柄のガッチリした体つきの男と抱き合うザップさん。

 ザップさんが海へ出ることを知っていた人なのかなあ?

 数ヶ月ぶりに無事を確認できて嬉しいということはわかる。

 よかったね。


「怪力少女と知り合いなのか?」

「まあそうだ。怪力とは知らなかったが」

「怪力少女て。あたしは美少女精霊使いユーラシアね」

「わっちはヴィルだぬよ?」

「積もる話もある。入ってくれ」


 あ、ここクオンさん家か。

 話しながら中へ。


「ザップ達は新天地を求めて海へ出たのだろう? 本当に生きていてよかった」

「運が良かったな。それに尽きる」

「結局戻ってきたのか? 戻ってくるのにも大変な苦労が必要だったんだろうが。怪力少女の船でか?」

「あたしは船持っとらんわ」

「違うんだ。オレ達一四人は一人も欠けることなく魔王島に辿り着いた」

「全員無事か! めでたいことだ。しかし魔王島?」

「地図でいうとここ」


 地図を取り出して見せる。

 目を丸くするクオンさん。


「……こりゃまた随分遠いところだな。どうやって戻ってきたんだ? 潮の流れが逆だろう?」

「ユーラシアは転移術の使い手なんだ。世界中どこへでも行けるらしい」

「転移術の使い手っていうと語弊があるな。転移できるアイテムを持ってるってだけだよ。ヴィルに協力してもらえば世界中どこへでも行けるのは本当」

「君は外国人なんだな?」

「あたしはドーラ人だよ。地図だとここ」

「ほう、大きな国だな」

「人口は少ないけどね」

「ドーラ人がどうしてザップと知り合った? ドーラだって魔王島とは関係のない国なんだろう? それともドーラの植民地なのか?」


 まあ疑問は多かろう。

 ややこしい話なんだが。


「えーとまず魔王島は高位魔族の王バビロンが統治する島なんだ。元々人間はいなくて、魔王とその配下の悪魔一〇人ちょいがいたの」

「人間のいない、悪魔だけの島だったのか」

「うん。地図では長ったらしい名前の島になってるけど、覚えられんわ。皆魔王島って呼んでる」


 魔王一派もソル君達もね。


「魔王島にザップ達が漂着した、と?」

「そゆこと。漂着民が悪魔を怖がっちゃってコミュニケーションが取れないって、悪魔からドーラに連絡があったんだ。あたしが魔王島行って仲立ちした」

「ふうん、悪魔と一定の関係を保ちえていると……」


 ヴィルを見るクオンさん。


「君は悪魔と親しいということだな?」

「ヴィルが悪魔ってわかる? どの悪魔とも親しいってわけじゃないけど、多分あたしは世界で一番悪魔と関わってるんじゃないかな。悪魔関係で困ってることあったら相談に乗るよ」

「ふむ……ザップの考えは? 魔王の支配する島から逃げ出したいってことなのか?」

「逆だ。魔王島に移民を呼びたい。ユーラシアが協力してくれる」

「何故だザップ。魔王の手下に成り下がったのか!」


 魔王の手下ってのは間違いじゃないんだが。

 え? クオンさんに説明してやってくれ?

 聖グラントの人はある程度悪魔を知ってるみたいだけど、どんな理解だかわからんしな?


「クオンさんは悪魔をどういうものだと思ってるかな?」

「人間をあの手この手で食い物にする悪党だ。中には君のように使い魔を行使する者もいるようだが、稀有な例外だろう」


 ザップさんをはじめとする漂着民も大体似たような認識だったな。

 弧海州にはかなりひどい悪魔がいるんだろうか?


「あの手この手で人間を食い物にするのも本当だな。天使や悪魔は生きていくためのエネルギー源として、人間の感情を欲しがるんだ」

「感情?」

「そうそう。で、大体の悪魔が欲しがるのは悪感情。だから悪魔は人間をひどい目に遭わせようとする。ところが悪魔は悪感情よりも、尊敬されたり認められたりすることがもっとずっと好きなんだよね。ただ悪魔はイメージが悪くて、ほぼ疑いの目で見られてるから尊敬されることなんてないじゃん? だから手っ取り早く悪感情を得ようとするんだ。人間側も悪魔を嫌なことしてくるやつだと思っちゃう悪循環」

「……なるほど。理屈はそうかもしれない。魔王島の状況は?」

「オレ達が魔王様以下の悪魔を崇める。代わりに悪魔はオレ達のために魔物を退治してくれるという関係だ。つまり統治者である魔王様に税金を納める必要がない」

「税金を納める必要がない?」


 クオンさん相当驚いたようだ。


「魔王は統治者っていうより、人間から見れば大家だな。将来的に魔王島のノーマル人コミュニティが発達してくりゃ、大きな事業を起こすために税金取らなきゃいけなくなるかもしれないけど、そりゃ人間側の都合じゃん? 魔王島の大家である魔王は、尊敬さえしていればそれ以上の対価を求めないよってこと」

「理想の社会を作れるじゃないか! 土地はどうだ? 肥えてるか?」

「イモ、大豆、トウモロコシの生育には全く問題はねえ。……こっちへ戻ってきて初めて気付いたが、魔王島の方が涼しいな」

「とゆーか聖グラントは暑いね」

「ふむ、作物は考えにゃならんな」

「モロヘイヤの種が欲しいんだ」

「モロヘイヤ?」


 聞いたことない植物だ。

 どんなやつ?


「葉野菜なんだが、成長しきると繊維が取れるんだ。布が作れる」

「ほう。そんな便利な植物が。あたしも欲しいな。買ってこ」


 衣料に向く作物は漂着民達の手持ちになかったか。

 魔王島はドーラに気候が似てるから、綿花の栽培は向くと思うけどね。

 クオンさんが言う。


「残念ながらまだ時期が早いな。モロヘイヤの種が出回るのは秋だ」

「そうだったか」

「また秋に来ようよ」

「待った、俺に魔王島の様子を見せてもらいたい」


 思わずザップさんと顔を見合わせる。


「……クオンには移住するなら魔王島という選択肢もあるぞということを広めてもらいたかったんだ」

「まーでも一度見てもらわないとどういうところか伝わらないよね」

「頼めるか?」

「もちろん」

「クオン、時間があるなら今から魔王島に連れていくがどうする?」

「本当か! 行く! ぜひ頼む!」


 大喜びのクオンさん。

 聖グラント王国の現状には不満があるんだろうなあ。

 何で人が流出しないんだろ?

 弧海州はどこも似たようなもんだって話だったか。

 弧海州の外へっていう選択肢はほぼないんだな?


「じゃ、買い物したら行こうか」

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