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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第207話:遭難皇女

 海の王国で買い物をすませ、うちに帰ってきた。

 あ、よかった。

 雨上がってるね。


「ユーちゃん……」

「おおう」


 暗い声をかけてきたのは、畑番をしている涅土の精霊カカシだ。

 こんな陰気な声を出す子じゃないんだけどな?


「どうしたの? 役目を終えて薪になる寸前の案山子みたいな声出して」

「マジで勘弁してくれ!」

「だからどーしたのよ。このあたしの聖母の慈愛に縋ってみそ?」

「いや、昨日持ってきてもらった凄草だが、今のままじゃどうやっても増やせそうにないんだ……」

「ふーん、凄草ともなると簡単じゃないんだなあ」

「大言壮語した手前、面目ねえんだが……」


 カカシが言うには、地中の魔力の絶対量が足りないらしい。


「他のステータスアップ薬草は生育できる魔力濃度に繊細だってだけなんだが、凄草は量そのものもかなり必要だということがわかった。今のオイラでは、何とか枯らさないようにするのが精一杯だ」


 魔力量はさすがにカカシでも増やせないだろうしなあ。


「ユー様、魔法の葉なりマジックポイントを分け与えるなりして、魔力濃度を上げることは可能かと思いますが」

「ノンノン、マジックパワーをストックしておく媒体がないと、マジックパワーはすぐディスアピアーしてしまうね」

「むーん?」


 ……魔力を溜めておける何かがあればどうだ?

 そこに魔力を注ぎ込んでおけば、カカシなら魔力を引き出して地中の魔力濃度を高めることができるだろう。

 となれば凄草の栽培に限りなく近付けそうだ。

 カギは魔力を溜めておける何か、か……あっ!


「アトム! 転移石碑に使われてる黒くて硬い石、あれのでっかいやつ、どっかで手に入らないかな? 見かけたことない?」


 クララとダンテの顔が明るくなる。

 二人もあれなら使えると気がついたらしい。

 しかしアトムは眉を『ハ』の字にして考え込む。


「黒妖石ですかい? 小さいやつは珍しくないんでやすが、魔力を蓄えられるほどの大きさとなるとトンと心当たりが……」


 ダメか。

 あたしも転移石碑でしか見たことないしな。

 いや、今後手に入るかもしれないから、諦めるのは早い。


「カカシー、今すぐはどうにもなんないっぽい。ごめんね。でも将来打開できるかもしれないから、凄草を枯らさないようにしといてくれる?」

「わかった。オイラこそすまねえ。大口叩いておきながら……」

「何言ってんの。あんたはよくやってくれてるよ」


 まあ明日は凄草以外のステータスアップ薬草株分けの日。

 いよいよ栽培ものが食卓に上がることになるわけだし。

 たとえ凄草栽培がものにならなかったとしても、カカシには本当に感謝してるんだぞ?


「凄草はひとまずおいとくとして。今度チュートリアルルーム行く時フルコンブ塩持ってくから、クララはバエちゃんにあげる分を小分けにしといてくれる? あたしはアトムダンテと海行ってくるよ」

「わかりました。夕御飯のお肉はスープにしときましょうか? 野草入れて煮れば食べられるくらいに」

「よし、任せた。アトムダンテ、海行くよー」

「「了解!」」


          ◇


「やっぱりあるある、ほい、石板回収と」


 波打ち際に漂着していた『地図の石板』を手にすると、ズズズウンンンという、聞き慣れた地響きがした。

 今度はどこ行きの転送魔法陣が設置されたのだろうか?

 『アトラスの冒険者』の石板クエストは実にワクワクするなあ。


「姐御、明日はクエストでやすか?」

「うん。新しいクエストは久しぶりで楽しみだよワクワク」


 久しぶりってほどでもないか。

 それだけ魔境での探索が刺激的で印象的だったってことだ。

 魔境はいいところだから、またぜひ行こう。


 素材もあるある。

 海の王国で買ってきた素材もかなりあるから、アルアさんとこの工房に行くのもいいな。

 今日は海藻もかなり拾えたからラッキーだ。


「あたし先に帰ってるね。海藻洗って干しとくよ。アトムとダンテは野草摘んできて」

「「了解!」」


 季節的に野草摘みも厳しくなってきた。

 普通ならそろそろ冬支度を真剣に考えねばならないのだが、『アトラスの冒険者』になったおかげでお肉を狩れるのが非常に大きい。

 カカシが畑を管理してくれるので、冬でも野菜や薬草に不自由しなさそう。

 春の計画からアトムとダンテ二人分の食い扶持が増えたにも拘らず、楽に冬を越せそうなのはいいことだ。


「ただいまー。海藻も手に入ったよ」

「よかったですねえ」


 クララが骨を煮ている。

 いいスープが取れそうだな。

 さてあたしは海藻を洗って干さねば。


 干しているところへアトムとダンテが帰ってくる。


「アトム、新しい転送魔法陣の行く先チェックしといてー。ダンテはクララの手伝いよろしく」

「わかりやしたぜ!」「オーケー、ボス!」


 ふんふーん、これで最後だ。

 海藻はスープに入れるとおいしい。

 以前大量に干したやつもあるし、この冬海藻には困らないな。


 あれ、アトムが泡食って戻ってくるが何事だ?

 新しい転送先に問題あり?


「姐御、大変でやす!」

「慌てない慌てない。深呼吸しようか。吐いて~」

「そんな場合じゃないんで!」


 乗ってこないところみるとマジのようだ。


「どーした。簡潔に説明して」

「転送魔法陣の行き先が『遭難皇女:至急』でやす!」


 遭難? 皇女? 至急?

 字面が風雲急を告げてるがな。

 メッチャヤバい案件じゃん!


「クララ、ダンテ、大変だ!」


 状況を説明すると、ダンテが難色を示す。


「タイムが遅いね。トゥモローにしてはどうね?」

「これおそらく朝には既に来てた石板だから、少なく見積もっても半日以上ロスしてる。もし救出に失敗したら大変なことになるかもしれない」

「ど、どういうことですかい?」

「『アトラスの冒険者』をクビになっちゃうかもしれないでしょ。ということは転送魔法陣が使えなくなってコブタ肉を狩れない。冬の食料大ピンチだ!」


 急いで用意する。

 暗くなる前に始末つけないと!

 昨日魔境クエストを終えたところだ。

 雨降ってさえなければ、朝に海岸を確認してたんだが。

 巡り合わせが悪いな。


 遭難とのことなので携帯食の干し肉と飲料水を持っていく。

 あたし達だけなら転移の玉で戻ればいいんだけど、皇女の状況がわからん。

 東の区画の新しい魔法陣の中央に立つ。


『遭難皇女:至急に転送いたします。よろしいですか?』

「特急でよろしく!」

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