第200話:いい女にはお金がかかるものだから
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
最近の大いなる楽しみ、魔境へやってきた。
魔境ガイドのオニオンさんは大体いつもニコニコしている。
総合受付のポロックさんや依頼受付所のおっぱいさんもだが、ギルドの正職員は知的で優しくていい人ばっかりだなあ。
「本当に毎日いらっしゃいますねえ」
「あたし魔境好きだからね。しょっちゅう来たくなっちゃうわ」
「ユーラシアさんほど熱心に魔境に来る人はいませんよ」
魔境で戦うのは、肉体的精神的に負担が大きいって話だったか?
うちは四人パーティーだから、負担は四分の一、喜びは四倍なのだ。
「ユーラシアさんはすぐ魔境もクリアしていきそうで寂しいですねえ」
「んー? でも魔境は稼げるし、レベル上げの効率はいいんでしょ?」
「クエストクリアの報酬であるボーナス経験値まで遠いことを除けばですけどね」
「あたしは少なくとも一年間は魔境に来ると思うけどなあ」
どうも有用な植物がかなりありそうなのだ。
年間通して来てみないと、チェック漏れがありそう。
クララが張り切ってるのでお邪魔するよ。
「ところで人形系レア魔物を簡単に倒せる装備を手に入れたんだ」
オニオンさんが目を丸くしている。
「え? ユーラシアさんは今までもかなりクレイジーパペットを効率的に倒していたと思いますが……」
コルム兄謹製のパワーカード『アンリミテッド』を見せる。
「これ、通常攻撃が衝波属性になるカードなんだ。クレイジーパペットが二体出ても『薙ぎ払い』で一発だよ!」
「そ、そんな都合のよい武器が?」
「あたしの従兄がアルアさんのパワーカード工房に勤めてた職人でさ。頼んだら作ってくれたんだ。前から対人形系レアのカードの研究してたんだって」
「パワーカードのフレキシブルな応用と、スピーディーな生産という利点の結晶というわけですか」
「あたし借金持ちになっちゃったからさ。ガンガン人形系レア倒して稼がないと」
オニオンさんが驚く。
「どうしてですか? 今までもかなり魔宝玉ドロップがあったでしょう?」
「いい女にはお金がかかるものだから!」
「そ、そうですか」
勢いに思わず納得するオニオンさん。
いや、たまたま物入りが重なっただけだけどね。
借金持ちなのは事実だ。
稼がねば。
「オニオンさんがクレイジーパペットだけ狙えって、アドバイスくれたからね。やっぱ人形系レアを倒すのが、レベルアップと大富豪への早道だねえ。今日はデカダンスも狙ってみようと思ってるんだ」
慌てるオニオンさん。
「ちょっと待ってください。デカダンスはドラゴン帯より中にしか出現しません。ドラゴン帯は魔物の密度が高く、気も荒いですから、戦闘を避けるのが難しいですよ?」
「そーなんだ……あっ、絶対逃げられるスキルがあるから大丈夫!」
クララが装備している『逃げ足サンダル』には、正の速度補正付きの逃走魔法『煙玉』が付属している。
今まで使ったことなかったけど、こういう戦略的撤退の時に使えばいいんだな。
「だ、大丈夫かなあ……」
心配そーだけど大丈夫だぞ?
人形系を倒していれば自然とレベルも上がって強くなるだろうし。
「行ってくる!」
「い、行ってらっしゃいませ。ムリしないでくださいよーっ!」
ユーラシア隊喜び勇んで出撃。
◇
もはやザコと言っていいだろう、オーガやケルベロスを無視しながら、より魔力濃度の高い中のエリアを目指して進む。
「魔境探索には自動回復が重要な気がするな」
「私も同じ意見です。ヒットポイントはともかく、マジックポイント自動回復の手段は、特にユー様に必要になりそうです」
強敵が出れば『ハヤブサ斬り・改』を連続で使うし、ダメージ食らえば『リフレッシュ』するしな。
考えなきゃならんわ。
「……クレイジーパペットね」
ダンテは目がいいな。
接近してレッツファイッ!
クレイジーパペットのフレイム! ダンテの実りある経験! あたしの攻撃! よーし倒した、簡単だ!
「藍珠と透輝珠。これで借金返せるな。目指せお金持ち!」
目指せ大金持ちじゃないところが控えめで現実的なあたし。
『リフレッシュ』で回復し、さらに獲物を目指して進む。
「とゆーか、『実りある経験』かけてからクレイジーパペットを倒すコンボはいいねえ」
「掃討戦の時のデカブツが相手だと、きっともっと楽できやすぜ!」
「うん。デカダンス出ないかな」
敏捷性のないデカダンスなら、ダメージ受けずに一太刀で倒せる。
最も経験値効率がいい。
ダンテが遠くを指差す。
「……デカダンスね。バット、近くに大型のモンスターがいるね」
「グリフォンだと思われます。ユー様、どうします?」
「デカダンスと交戦、グリフォンに絡まれたら『煙玉』で逃げるよ」
「「「了解!」」」
レッツファイッ!
ダンテの実りある経験! あたしの攻撃! ぱーふぇくとびくとりぃ!
「レベル上がったし、透輝珠ゲット!」
しかしグリフォンが襲いかかってくる!
レッツファイッ!
クララの煙玉! 無事逃走成功!
「いいぞいいぞ、計算通りだ」
「おーおー、グリフォンがデカダンスの亡骸を食らっていやがるぜ」
「うーん、多分グリフォンだとデカダンス倒せないよねえ。ほとんど食べる機会なんかないから御馳走なのかな?」
魔境の食物連鎖はよく知らんけれども。
「デカダンスだと先手取れるし経験値も高いし、うんと効率がいいね」
「こんなデイがカムするとはノットシンクだったね」
掃討戦ではデカダンス倒すのあんなに苦労したのにな。
今やただのザコだ。
クレイジーパペットが新経験値君なら、デカダンスは真経験値君でしかない。
「ねえクララ、デカダンスってレアドロップないのかなあ?」
「本には記載されてませんでしたけど、あるかもしれませんね」
楽しみだなあ。
「よし、今の感じでどんどん行こう。デカダンスをメインで狙って、ヤバそーな魔物に絡まれた時は即『煙玉』で離脱する」
「「「了解!」」」
「それからクララ。クレイジーパペットが二体出た時は、一応『乙女の祈り』かけといてね。『薙ぎ払い』避けられることがあるかもしれないから」
「わかりました」
これならかなりマジックポイントを節約しながら人形系魔物を狩れるのではないか?
新たなる獲物を目指して進む。




