第199話:掘り出し物屋さんで手に入れた
「やあ、ユーラシアさん。今日もチャーミングだね」
「ポロックさん、こんにちはー」
アルアさんの工房の外にある転移石碑からギルドへやってきた。
安定の褒め言葉『チャーミング』を浴びて、と。
さて、今日の楽しみはどうなってるかな?
「掘り出し物屋が来ているよ」
「あれ、思ったより早く来てるじゃん。良さげなのは売れちゃったかな?」
「さて、どうだろうね」
ギルド内部に足を踏み入れる。
おーおー、人集まってるね。
あれ、でもイマイチ盛り上がってないような?
「こんにちはソル君、どうなってんの?」
「あ、ユーラシアさん。遅かったじゃないですか」
「ちょっと外せない用があってさ」
「昨日言ってた、人形系の魔物を簡単に倒せるカードの受け取りですか?」
「そうそう」
『アンリミテッド』の他に、殴るだけで弱体化させられるひどいカードも手に入れたけどね。
あとで行く魔境探索が楽しみだなあ。
誰だ大体物事は思ってるようにならないなんて言ってるやつは。
おかしなフラグ立てんな。
ニヤニヤする情報屋が話しかけてくる。
「おう、ユーラシア。今日も華麗なる値切りを見せてくれよ」
ダンよ、あたしの値切りが必殺技みたいな扱いだな。
あ、掘り出し物屋さんがあたしに気付いたぞ?
嫌そーな顔するなよ。
美少女を検分する目じゃないぞ?
「今日のメインの商品は何なの?」
ダンが顎をクイッと向ける。
えーと薬草か?
この前おっぱいさんが消耗品って言ってたこと当たってたな。
アンセリが説明する。
「今日の出物は薬品と薬草なんだ」
「テンション上がんないよねえ。でも転売すれば、即儲けになるんじゃないの?」
「どうだか。掘り出し物屋が扱うのはわけあり品だから、買い取りしてもらえるとは限らねえぞ?」
「おっとっと」
当たり前っちゃ当たり前だった。
そー簡単に錬金術ってのは通用しないもんだ。
残念ではあるな。
「で、残るは凄草だけなんだけど……」
「あれ? 凄草売ってるのか。すごいな」
「値段が大変に高額で……」
凄草。
食べると全てのステータス値が上がると言われている、レア中のレア薬草だ。
あたしも初めて見たよ。
ソル君が苦い顔をしている。
「確かに素晴らしい効能で、レア度からすれば破格なのかもしれませんけど、消耗品の草一株に三〇〇〇ゴールドは出せませんよ」
ダンがニヤニヤする。
「買っていくんだろう? あんたはそういうやつだ」
「ダンはあたしを何だと思っているんだ」
「天下の超絶美少女精霊使い様だろう?」
「合ってるけれども」
誤魔化されたような気がするな?
冒険者連中は遠巻きに見ているだけで、誰も買おうとしない。
常識的に考えれば、ソル君の言ったことが正論だ。
草一株に三〇〇〇ゴールドはとても出せない。
普通ならば、だ。
「欲しいけど、ちょっとお金足りないんだよね」
「ユーラシアさん、あの凄草を買うつもりなんですか?」
「わけあって手に入れたいんだ。今後見かける機会があるとも限らないから」
「値切れよ。十八番だろ」
「十八番じゃないわ。この前買ったパワーカード、今も全員装備してるくらいよかったんだよなー。値切って悪かったから、今日は正規の値段で買いたいんだ」
「じゃ、どーすんだよ」
「ダン、五〇〇ゴールド貸して」
あからさまにガッカリしたような表情になるダン。
何でだ。
あんたあたしがいつも真っ当じゃないことしてると思ってるんじゃないだろうな?
「ユーラシアにしちゃつまんねえこと言うじゃねーか」
「今日中に倍にして返すから」
「え?」
「さあ、ダン君の気風の見せどころだよ。精霊使いユーラシアを信じられるかい?」
ダンがまじまじと見つめてくる。
「ちっ、何て煽るのが上手いんだ」
「ダンがこーゆーの好きってわかってるからなー。ちょっとエンターテインメントを提供しちゃったよ」
「ほらよ、五〇〇ゴールド」
「サンキュー。夕方五時頃ギルドに戻ってきて返すね」
「おう」
もう一度凄草をよく見る。
うん、ヘタってはいるけどしっかり根っこはついてるな。
これなら大丈夫だろう。
「掘り出し物屋さん、凄草もらってくよ」
「この前の精霊使いか。今日はまけねえぞ」
「わかってるってばよ」
おいおい掘り出し物屋さんよ、露骨に警戒してんじゃねーか。
「はい、三〇〇〇ゴールド」
「……確かに」
こら掘り出し物屋、キツネにつままれたような顔すんな。
ニセ金じゃないってば。
「ありがと、またよろしくね」
「毎度」
何事もなく取り引き終了。
冒険者達も散って行く中、ソル君に声をかけられた。
「ユーラシアさんはこの凄草、どうされるおつもりですか?」
腑に落ちないようだ。
まあわかる。
一食分と考えればこんなに割に合わない取り引きもないから。
「ここに来てない子だけど、うちに畑番としてよく働いてくれてる精霊がいるんだよ。その子が一度でいいから凄草を拝んでみたいって言ってるんだ」
「ああ、あのステータスアップ薬草持ってこいってクエストの時の案山子だな?」
「そうそう、精霊カカシ。頑張ってるから報いてあげたいの」
ダンはカカシを知ってたっけな。
「つまり御褒美みたいなものですね?」
「なるほど。ユーラシアさんらしい」
ソル君パーティーも納得したようだ。
「きちんと金返せよ」
「わかってるってばよ。この面白そうなことにはサイフの紐が緩む男め」
さて、用は終わったな。
「じゃあねー」
「ユーラシアさんは魔境ですか」
「うん。おサイフ空でマジで小銭しかないの。怖くない借金取りもいるし、稼いでこないと」
「何だその怖くない借金取りって。身体で返せ」
「いやーん、えっち」
皆で大笑い。
ソル君パーティーとダンに別れを告げ、転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「カカシやったぞ! ついに凄草手に入ったぞお!」
「本当かよ! さすがだぜユーちゃん」
畑番の精霊カカシが大喜びだ。
うんうん、これだけで高いおゼゼ払った価値があったよ。
「えーと、どこに植えておけばいいかな?」
「オイラの正面のところに頼むぜ。滅多に見つからないってんだから相当生育条件が厳しいには違いないぜ。しかしオイラは必ずそれを解き明かしてみせる!」
「カカシかっくいー!」
よしよし、カカシもやる気だ。
これでいい。
あとはカカシにお任せだ。
「あたし達は魔境行ってくるね。ガンガン稼いでくるぞお!」
ユーラシアが飛躍的に強くなります。




