第197話:パワーカード『アンリミテッド』
セリカとアンが口々に言う。
「ユーラシアさんはいつも楽しそうですねえ」
「うん、ありがたいことに楽しいね」
「何でもすぐに解決方法を見つけるじゃないか。すごいと思う」
「いやー、そんなことはないよ。魔境に行った時は、ドラゴンまでの道のりが遠くて嫌になりそうだったもん。でもいろんな人の話聞いて、レベル上げさえすればどうにでもなるかなって思えるようになったんだ。で、方法も何とかなりそうになって、今やる気になってるの」
「『薙ぎ払い』のスキルスクロール、三〇〇〇ゴールドです」
実に事務的だな。
バエちゃん、空気読んでよ。
「ソル君も順調でよかったよ。そーだ、明日の午前中、ギルドに掘り出し物屋さん来るってポロックさんが言ってた」
「掘り出し物屋ですか。覗いてみようかな」
「あたし前の時、すごくいいものだったのにメッチャ値切っちゃったからさあ。今度は欲しい物だったら言い値で買ってあげようと思って。いや、お金足りればだけど」
『ポンコツトーイ』、ホントお世話になってます。
アンが面白そうに口に出す。
「ユーラシアさんが掘り出し物屋を値切ったというのは、ギルドの伝説になっているぞ。主にダンが広めてるんだが」
「ダンも気が利かないな。もっと格好いい逸話を広めてくれればいいのに」
笑いがあり、解散となる。
◇
「さて、明日どうしようかねえ。塔の村でカードもらってくるのが先か、ギルドで掘り出し物屋をひやかすのが先か」
夕食にコブタ肉と野草の栄養たっぷりシチューとふかしたサツマイモをいただきながら、ゆるりと明日の方針決めだ。
うちの子達がどう考えているのかも知りたい。
「掘り出し物屋はいつ来るかわからねえ。塔の村が先でいいんじゃねえでやすか?」
「塔の村コルム兄は待ってくれる。掘り出し物屋さんは待ってくれないっていう考え方もあるけど?」
「マネーが足りるかもアンノウンね」
「おゼゼはなー」
問題はそこだ。
おゼゼが十分にあるなら一期一会の掘り出し物屋を優先したい。
だがたとえ掘り出し物屋に欲しいものがあったとしても、手持ちのお金で足りる可能性は小さいんじゃないか。
消耗品がメインの商材かもって、おっぱいさんが言ってたのも気にかかる。
消耗品じゃ欲しいものなさそうだし。
クララが発言する。
「塔の村とアルアさんのところへ行ってからギルドでいいんじゃないでしょうか。換金してギリギリ届くということもあり得ますし、そもそも現在の私達に掘り出し物屋さんの重要性は高くないです」
うむ、パワーカード以外の武器や防具ならあたし達に用はない。
何が来るかわからないからドキドキはするけど、掘り出し物屋であたし達にどうしても必要なものを売る可能性なんて大きくないのだ。
「よし、塔の村とアルアさん家寄ってからギルド行こう。午後は魔境ね」
「「「了解!」」」
「ごちそうさま。今日はおやすみ」
◇
――――――――――五〇日目。
フイィィーンシュパパパッ。
朝から早速塔の村へ飛ぶ。
いよいよあたしも冒険者生活五〇日目か。
キリのいい日だから、何か大きなイベントがありそうだと思った。
結果としてその予感は当たることになる。
「あっ、皆おはよう!」
コルム兄のこぢんまりとしたパワーカード屋の前に、精霊使いエルのパーティーがたむろしていた。
「ゴーグルかっちょいいよ」
「そうかい?」
「うん。ちょっと変わった人みたい」
「褒められてる感じがしないんだけど」
エルが赤い瞳の色を隠すためのゴーグルを装着している。
ジンの見立てでレイノスで買ってきたもののはずだ。
なかなか似合ってるじゃないか。
ん? エルのパーティーに一人増えてるな?
ああ、こいつは……。
「ちょんまげ精霊じゃないか。やっぱりエルのパーティーに入ったんだ?」
「いよっ、姐さん。その節はお世話になりまして」
塔の一階でファントムバインドに捕らわれていた、変な髪形の精霊だ。
「名はニポポと言うんだよ。見かけはこんな精霊だけど、かなり戦えるんだ」
「よかったねえ」
エルのパーティーもこれで四人か。
各メンバーに役を割り振っていくと、三、四人を最小単位にするのが冒険者パーティーとして最善の気がする。
もちろん人数が多けりゃ火力は大きくなるけど、小回り利かないし転移の玉の人数制限の問題もあるしな?
「話は聞いたよ。特注のパワーカードを受け取りに来たんだろう?」
「一万五〇〇〇ゴールドもぼったくられたよ」
「「「「一万五〇〇〇ゴールド?」」」」
エルのパーティー一同が驚く。
値段までは知らなかったか。
結構な大金だもんな。
「おいおい、一万五〇〇〇ゴールドでいいって君が言ったんじゃないか」
「だから文句なんて言ってないってば。それだけの価値があるカードだよ」
「ふうん、興味あるな。どんなカードなんだい?」
コルム兄がカードを取り出す。
「ほら、これだ。『アンリミテッド』と命名した」
「武器系のカードか。【衝波】と攻撃力+二〇%……衝波って何かな?」
「衝撃を内部に伝えるから防御力を無視してダメージが入るっていう、武器の属性だよ。簡単に言うと、これ装備しとけば人形系レア魔物を簡単に倒せるようになる」
「……人形系が倒しづらいのはわかるけど」
エルが難しそうな顔をする。
「ボクには他のカード一〇枚分の価値があるとは思えないんだが」
まだ七枚の装備枠を埋めてないだろうエルのパーティーは、枚数の方をより必要とするのは間違いない。
「どんな敵を相手にするとか、その時の状況とかで使うカードなんて変わるじゃん? 今のあたし達にはこれが必要なんだ」
「なるほど、必要性か……。コルムさん、ボクもこのカードが欲しい状況になったら作ってもらえるだろうか?」
コルム兄は首を振る。
「今は材料が足りなくて作れない。ガンガン素材を回収してきてレアなやつが揃えばまた作れるよ」
「レア素材か」
「必要になった時考えればいいよ。あたしに今必要なのはおゼゼなんだ。コルム兄に毟られてすっかりビンボーになっちゃったから、人形系狩りまくって稼がないと」
「ユーラシアは人形系がたくさん出るエリアで戦っているのか」
「うん。じゃあね、また来るよ。レイカにもよろしく」
「ああ、またな」
よーし、これで稼げるぞー。
転移の玉を起動して帰宅する。




