第195話:待望のパワーカード
フイィィーンシュパパパッ。
再び塔の村、コルム兄のパワーカード屋へ。
だから場所がわかりにくいとゆーのに。
二度目なのに迷いそうになったわ。
「精霊使いユーラシアが帰還したぞお! これさっき言ってたカードね」
「助かるよ」
反応鈍いね?
やっぱ疲れてるからかな。
ギルドで仕入れた一〇枚のパワーカードを渡すと、コルム兄の表情が和らぐ。
魔境で得た魔宝玉などのアイテムを処分したが、一万五〇〇〇ゴールド出て行くとさすがに懐が寂しくなるなー。
「『ホワイトベーシック』四枚、『スラッシュ』二枚、『ナックル』、『ニードル』、『シールド』、『マジシャンシール』を一枚ずつ。はい、確かに」
「精霊使いユーラシアの貸しは高いぞ?」
「脅かすなよ」
脅えるなよ。
「ま、あたしも製法が廃れた昔のパワーカードをすげー欲しいわけじゃないんだ。興味はあるけど」
「わかる。使い道が限定されているから作られなくなったと考えるのが妥当だしな」
「だから本当はコルム兄がすごいカード作ってくれれば嬉しいんだけどなー」
「どんなやつだ? 希望はあるか?」
あれ? 忙しいはずなのに比較的乗り気だな?
職人として現場の冒険者の希望を聞きたいってこともあるのかもしれない。
「今一番欲しいのは、人形系レア魔物を簡単に倒せるやつかな」
「できるぞ」
「うそっ!」
えらく安請け合いするけどマジかよ?
防御力無視系の攻撃って相当難しいんじゃなかったかな?
コルム兄がちょっと自慢げに話す。
「人形系を倒すのは需要があるかと思って、研究したことがあるからな。通常攻撃を防御力無視にしてもいいし、衝波属性攻撃のスキルをつけてもいい。というか、応用利かせることができるのがパワーカードのいいところだよ」
「コルム兄ができる子だって初めて知ったよ」
「ただし」
うあー条件つきだよ。
新経験値君クレイジーパペットを簡単に倒せるようになるなら、少々のことは聞くとも。
「いわゆる防御力無視の衝波系の攻撃って、滅多に見ないだろう? 極めて特殊だからさ。特殊な機能を実装しようと思えば特殊な材料が必要になる」
「……つまりレア素材を持ってこいと?」
コルム兄が首を振る。
「いや、オレが研究してた時の素材がまだ残ってるから大丈夫だ。しかしさすがにレア素材をふんだんに使ったカードを一五〇〇ゴールドってわけにはいかない」
「いいよ。さっきの一〇枚分一万五〇〇〇ゴールドと引き換えで」
「えっ? そこまで吹っかける気はないんだが」
ビックリしてるけど構わないぞ?
人形系を簡単に倒せるよーな素敵カードを作ってくれるなら、すぐ元取れるんだから。
新経験値君を一体倒すだけで、ドロップ魔宝玉の売値は二〇〇〇ゴールド以上になる計算だ。
全然遠慮しなくていいのに。
「じゃあ明日までに作ってくれるなら、今日のカード一〇枚分一万五〇〇〇ゴールドチャラでいい。明後日になるなら四枚分六〇〇〇ゴールド戻しで。その次の日になるなら八枚分……」
「明日までに製作しよう」
おや? 目一杯被っての即答じゃないですか。
「疲れてるコルム兄をムリヤリ働かせるのも忍びないから、一〇日間くらい遅れても構わないんだけど?」
「利子が聞いたことないほどえぐい」
アハハと笑い合う。
大分コルム兄もストレスが抜けただろうか?
「じゃあ、どんな機能にしようか?」
「選べるの? 面白いなあ」
「以下の三種なら、今手持ちの素材で可能だよ」
一:通常攻撃に【衝波】属性が付き、さらに攻撃力+二〇%
二:衝波属性の単体強攻撃のスキルが付き、さらに攻撃力+二〇%
三:衝波属性の全体に五〇ダメージずつ与えるスキルが付き、さらに攻撃力+二〇%
ほうほう、研究していたと言うだけあるなあ。
ふーむ、一は『スラッシュ』みたいな基本の物理攻撃系パワーカードの攻撃属性が【衝波】になったもの。
最もオーソドックスだな。
二はスキルを重視するケースにいい。
例えば物理攻撃が効きにくいボスが現れた場合にも応用が利きそう。
三は完全に人形系専用装備と言っていい。
ズラズラ並んだ人形系魔物を一掃できるロマンに溢れている。
与えるのが五〇ダメージ固定なら、前衛のアタッカーに拘らず後衛が装備してもいいんじゃないかな。
「どれがいい? これ以上の注文があるなら明日までにはできないぞ?」
「うーん、全部」
「オレも全部作ってぼったくってやりたい気分だが、残念ながら材料が足りないから一枚だけだ」
クララが『また全部とか』なんて思ってるに違いないが、欲しいものは欲しいんだよ。
「一がいい」
属性の乗るスキルと相性がいいからだ。
一を装備して『ハヤブサ斬り・改』なら防御力無視で連続強攻撃だ。
二とほぼ同じことができる。
また『薙ぎ払い』を使えば人形系を一掃できるので、三がやれることもカバーできる。
あたしが装備すること前提なら応用力が最も高い。
しかし『サイドワインダー』でカードの装備枠使うより、『薙ぎ払い』のスクロール買った方が合理的だな。
わあん、おゼゼがどんどん飛んでく!
「うん、明日の朝にはできてるから取りにおいで」
「わかった、ありがとう!」
「礼を言われるようなことじゃないけど」
コルム兄が微笑む。
「今日はこれからどうするんだい?」
「晩御飯の肉狩りに行ってから、『薙ぎ払い』のスキルスクロール買うんだ。明日は魔境の人形系レア魔物ガンガン倒す予定」
「え? 人形系レア魔物なんて滅多に出ないんじゃないのか? オレも日常的に人形系を狩るために考案したパワーカードじゃないんだが」
「魔境は比較的出現率が高いんだよ。今日の午前中もクレイジーパペットってやつ、何体か倒してきたんだ」
「ほお?」
コルム兄が感心している。
「人形系って確か、魔宝玉をドロップするんだよな。ユーラシアって実は金持ちなのか?」
「ついさっきまで小金持ちのつもりだったけど、一万五〇〇〇ゴールドなくなったら大分寂しくなった。デス爺の頭髪くらい」
「ハハッ、そこまで寂しくはないだろう」
デス爺の頭髪は言い過ぎにしても、あんまり手持ちがないことは確かなのだ。
魔境行くようになる前まで、ほとんど文無しみたいなもんだったしな。
「じゃあ帰る。明日朝に来るね。新カード楽しみにしてるよ」
「ああ」
マジで楽しみだぞ?
転移の玉を起動し帰宅する。




