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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第194話:あたしにもちょっぴり責任が

 デス爺の話を聞いてたら、納得できることが多かった。

 世界の謎を解き明かした感じで気分がいいな。


「すっごくためになったよ。今日塔の村へ来てよかった」

「うむ、『アトラスの冒険者』には謎が多い。そのチュートリアルルームの女人には、エルと本の世界のことは話さぬようにな」

「わかってるんだけど、本の世界については、話しちゃったあとにまずいって気がついたんだよね。石板クエストの転送先のことなんで、ある程度触れないと逆に不自然とゆーか」


 デス爺がふっと息を吐く。


「まあ仕方あるまいの。反応はどうじゃった?」

「聞いたことあるかも、くらいの反応だったよ。向こうで本の世界とアリスがすごく知られてるってことは多分なさそう。おとぎ話的な存在なのか、っていう雰囲気だった」

「なるほどの」

「本の世界についてはあんまり話題にしないことにしとくね」


 相手がバエちゃんじゃなくてもだ。

 考えてみりゃ『全てを知る者』って字面が既にヤバいから。

 存在を知られると悪用されかねない。


 さてと、行くかな。


「何か塔の村で変わったことある?」

「ふむ、お主に言われたように、脱出用の使い捨てアイテムを販売したのじゃ。そうしたら様子見の冒険者達が皆こぞって買い、塔に入るようになったな」

「よかったじゃん。これで素材やアイテムの売買が捗るんでしょ? 商売繁盛だね」

「うむ」

「順調なことはいいことだなー」


 デス爺機嫌良さそうだね。

 頭のてかりが違うよ。


「コルム兄はもうこっち来てるんだよね?」

「うむ、パワーカードが売れるとこの村も潤うでの」

「何なの、その『買え』というほぼ有言の圧力は」

「工房を兼ねた店は路地裏にあるのじゃ」


 店くらいは見ておこうか。

 開店祝いは持ってきてないけど。

 えーと、どっちだっけ?

 わかりにくいところだなー。

 路地を抜けてパワーカード屋へ。


「こんにちはー」

「ああユーラシア、いらっしゃい」

「元気そうだね」

「元気に見えるか?」

「見えない」


 コルム兄はアルアさんの弟子のパワーカード職人だ。

 あたしの従兄であり、あたしと似た髪色髪質なのだが、くしゃくしゃさ加減が増しているように思える。

 どーした?


「いや、単純に忙しいんだ。寝る暇もないくらい」

「何でだろ? 店の位置はこんなにわかりづらいし、大体パワーカード自体の知名度もほぼないだろうにな?」

「精霊使いエルと火魔法使いレイカのパーティーが揃ってパワーカード装備だろう? 自然と注目度が高くなるんだよ」

「あ、なるほど」


 エースとそれに次ぐ存在が採用してりゃ、いいものだと思うもんな。

 特に冒険初心者が多く、装備もこれからだっていう塔の村では取り入れる人いそう。


「おまけに掃討戦で活躍したユーラシアもパワーカードを使用していると、知っている者は知っている」

「あたしのせいみたいな話にすんな。商売繁盛自体は悪いことではないじゃん」


 あたしはパワーカード普及活動をしているのだ。

 職人だって増えて欲しいから。


「量産できるものじゃないだろう? 品薄だとさらに人気を呼ぶのが世の常なのか、完全に需給バランスが崩れてるんだ」

「売れるのはいいことだって、前向きに考えようよ。デス爺も買っていけってニュアンスだったぞ?」

「加工品は利幅が大きいからな。冒険者が塔に入り始めて、素材買い取りの現金が足りなくなってるからという理由であって、オレの睡眠不足や疲労やストレスを考えての発言じゃない」


 えらく陰険に毒づくじゃないか。

 相当切羽詰ってるのか?

 まだ塔の村に来たばかりで、生活も慣れてないだろうしな。


「おまけにコケシが『死亡認定されてるんだからエア葬式分代金負けろ』とか、わけのわからん絡み方してくるんだ。精神が削られるなんてもんじゃない」


 死亡認定は単なるギャグのつもりだったのに、まさかそんな斜め上を行くとか。

 撲殺系精霊コケシはヒットポイントがゼロになるまで、もといゼロになっても削りにくるからヤバい。


「ごめん、死亡認定ネタはあたしが振った。コミュニケーションが円滑になるかなーって親切心だったんだけど」

「おかげでこっちはギザギザハートなんだが」

「サディスティックコケシは遠慮がないからなー」


 どうやらあたしにもちょっぴり責任があるようだ。


「どんなカードをいくらで売ってるの? 足りない売れ筋のカードは何?」

「まだごく基本的なものしか販売してないんだ。『ホワイトベーシック』が一番の売れ筋だな。あとは武器系か。一律一枚一五〇〇ゴールドで売ってる」


 どうやらギルドで販売している値段と一緒だな。


「わかった。『ホワイトベーシック』四枚、『スラッシュ』二枚、『ナックル』、『ニードル』、『シールド』、『マジシャンシール』を一枚ずつ買ってくるよ。当座は間に合うでしょ」


 とゆーかあたしもそれくらいしかおゼゼ持ってない。

 コルム兄の顔に赤みが差す。


「アルア師匠がギルドに卸してるやつだな?」

「うん。余ってるところから仕入れて足りないところで売る。商売の鉄則。でもこの場合利益にはならんけど」

「こっちに回してくれれば非常に助かる。しかし手許に金がないんだ」

「貸しだよ。どうせブームなんて一時的なもんだ。売れ行きが落ち着いてきたら一〇枚ちょうだい」


 あれ、コルム兄微妙な顔ですね?


「君、こっちで一〇枚もカード欲しいことなんかあるか? クエストを進めていれば自然に交換ポイントは増えるだろう?」

「いや、この塔は昔のパワーカードの祖のドワーフが住んでたから、製法が失われてる古いタイプのカードを拾えることがあるって聞いたんだよ。塔で回収したやつも買い取ってここで売るんでしょ? それにコルム兄だって、またオリジナルのカード作るかもしれないじゃん」


 コルム兄にはかつて『プチエンジェル』という、オリジナルカードをもらったことがある。

 あれはヒットポイントとマジックポイントの自動回復、即死無効、防御力低下無効、敏捷性上昇、おまけに蘇生スキル『天使の鐘』使用可能と、かなりいろんな機能を盛り込んであったテクニカルなカードだったしな。

 コルム兄のパワーカード制作技術は信頼できる。


「だったら……悪いな。頼んでいいか?」

「もちろんだよ。気にしない気にしない。すぐ戻ってくるからね」


 転移の玉を起動し、一旦家に戻る。

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