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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第192話:新経験値君狩り

 オニオンさんの勧めに従い、魔境ワイバーン帯で戦ってみた。

 オーガやケルベロスを相手にしている時と違ってワンターンキルはまだできないが、二ターン目は『ハヤブサ斬り・改』は必要ない。

 あたしの優秀な全体回復魔法『リフレッシュ』があるので、消費マジックポイントはあまり変わらない感じだ。

 経験値が高い分、ワイバーンと戦うほうがお得か。


 マジックポイントが心許なくなってきた段階で、一旦ベースキャンプへ戻る。

 回復魔法陣があるのは便利だなあ。

 魔境『トレーニング』なだけはある。


「お帰りなさい。いかがでした?」


 魔境ガイドオニオンさんが、にこやかな表情とともに迎えてくれる。


「ワイバーンとガーゴイルは勝てるかな。ワイバーンの『ウインドブレス』は強烈だけどヒットポイントはそれほどでもない。ガーゴイルはタフだね。倒すの時間かかるよ。でも攻撃力は脅威じゃない感じ」

「ふむ、思った以上に余裕がありますね」

「いや、でも敵を選ばずってわけにはいかないな。攻撃はキツくてもワイバーンを標的にするのが一番良さそう」

「まあ普通ワイバーン帯で安定して戦うためには、最低レベル四五は必要とされていますからね。ユーラシアさんのパーティーはとても優秀です」


 褒められちゃいるが、現状力が足りないのは痛感してるんだよなあ。

 パワーカード『あやかし鏡』を装備していることによる二回行動と、うちのパーティーの攻守のバランスで何とか戦えているようなもん。

 オニオンさんが言うほど余裕があるわけではないのだ。

 もう少しレベルが欲しいもんだが。


 いや、目の前にぶら下がってるドラゴンに手が届かないから、焦れてるだけかもしれない。

 ドラゴン倒せればお高いレア素材『逆鱗』が手に入るから、ぜひ倒せるようになりたい。

 あたしせっかちだからな。


「ガーゴイルは固くて不味そう。でもワイバーンは食べられそうだなあ」

「ハハハ。肉食魔物は総じて不味いという話ですよ」

「お兄さんズも同じこと言ってたわ。不味い亡骸を食べてる魔物のお肉が美味いわけないよなあ」


 魔境はおいしいお肉の調達ができないところだけは残念だ。

 ま、そんなのは本の世界のコブタマンが全てを解決するわけだが。


「魔境は人形系レア魔物がよく出る気がするんだけど?」

「クレイジーパペットは多いですね。ワイバーン帯だと無作為に一〇回戦闘を行って一回クレイジーパペットに当たるくらいです」

「あ、ワイバーン帯の方がオーガ帯より出るんだ? 一〇回に一回も出るならレア魔物って言えないくらいだねえ」

「さらにドラゴン帯だと二体いっぺんに出ることがあるそうです」

「二体はきついなー」


 クレイジーパペット二体だと、あの強烈な『フレイム』に三回耐えなきゃいけないことになる。

 やつらが逃げなければだが。

 今のあたし達にはちょっとムリっぽい。


「おや、そうですか? 素早さを上げるのに使ってるカードを外して、火耐性と魔法防御に振ればイケるんじゃないですか?」

「……何だかイケそーな気がする」


 そーか、工夫次第だな。

 頻繁に入れ替えられるほどのカード持ちじゃないからあんまり考えてなかったけど、今後は魔物ごとに必須なのかも。


「魔境に出現する人形系レア魔物はクレイジーパペットだけではありません。ドラゴン帯以上ではデカダンスが出ることがありますよ」


 デカダンスか。

 今ならあたし達だけで勝てるだろう。

 やつの経験値は極端に高いから狙い目だ。

 でも生息してるのはドラゴン帯かー。

 もうちょっとこっちのレベルが上がらないと危なくて行けないとゆージレンマ。


「ドラゴン帯へ行けるようになるのが楽しみになってきたよ」

「ユーラシアさんのパーティーなら当然ですよね。でもパワーカードの種類を揃えるのが重要と思いますよ」


 あれ、オニオンさんってパワーカード詳しいんだったか?


「昨日、仕事が引けてからギルドで最年長冒険者のマウルスさんに教えてもらったんですよ。あの方は装備について詳しいですよね」

「マウさんかー。神経痛の具合どうなんだろ?」

「掃討戦前後はひどかったらしいですけど、今はよろしいみたいですよ」


 あの時アンセリを鍛えてくれって頼んじゃったからな。

 結構厳しかったのかも。

 マウ爺ごめんなさい。


「同じオーガ帯でも東側と西側、またここから遠い位置ではかなり得られる素材が異なります。なるべく戦闘を避けてクレイジーパペットだけを狙い、遠くに行ってみるというのもありかと」

「人形系だけを狙うか。いいかも。オニオンさんありがとう!」

「いえいえ、お気になさらず。魔境に来るほどの冒険者でも、なかなかクレイジーパペットは倒せないものなのです」


 オニオンさんがいいヒントをくれた。

 レア魔物という意識は捨てよう。

 経験値とお金を稼ぎやすいクレイジーパペットをメインターゲットにすればいい。

 せっかくうちのパーティーはやつを倒せるんだから。

 レベルが上がってからその他の魔物と戦ってもいいくらいだ。


 ベースキャンプより出撃。

 魔境は広いので、いきなり魔物と鉢合わせるということはまずない。

 大回りしながらまだ見ぬオーガ帯を探索、素材と薬草を回収し、じっくりクレイジーパペットを狙っていく。


「あ、この辺から植物相が変わりましたね」

「土質も違うぜ。素材も変わるんじゃねえか?」

「あんた達はそーゆーの詳しいな。頼りにしてるよ」

「クレイジーパペットがいるね」


 ふむ、いい感じだ。


 その後四体の新経験値君ことクレイジーパペットを倒し、今日もレベルが上がった。

 あたしとクララ、アトムが三七、ダンテが三六となる。

 クレイジーパペットだけ狙った方がマジックポイント消費量が少ないし、レベル上げには効率がいいな。

 選り好みする分、戦闘勝利回数はあんまり増えないけど。


 アトムが敵単体に土属性・混乱・即死付加の攻撃を行うバトルスキル『地叫撃』を覚えた。

 負の速度補正があるので出は遅いが、非常に攻撃力の高いスキルだという。

 パワーカード『石舞台』に付属するので存在は知ってたけど、強敵相手に有効なこれを覚えるのは嬉しいなあ。

 『マジックボム』より消費マジックポイントが少ないのもいい。


「ただいまー。今日は帰るね」

「お疲れ様です」


 転移の玉を起動、オニオンさんに見送られて帰宅する。

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