第191話:ワイバーン帯で戦ってみる
――――――――――四九日目。
フイィィーンシュパパパッ。
「おや、ユーラシアさん。今日は朝から出動ですか? 珍しいですね」
ハハッ、魔境に出勤扱いだよ。
働き者の美少女精霊使いだね。
「うん、午後からやることあるんだ。ところでオニオンさん、おイモいる?」
「や、これは結構なものを。いただきます」
「うちで取れたサツマイモなんだ。すぐに食べないでちょっと置いといたほうが甘みが増すと思うよ」
ここのところ午後から魔境パターンだった。
今日の午後は塔の村へ行く予定なので、午前中に魔境ノルマをこなしておくのだ(ノルマ言っちゃってるし)。
昨日もラルフ君と共闘扱いだから、あんまり戦闘勝利数がいってない。
とりあえず一〇〇勝挙げてクエスト終了扱いにしておかないと、宿題残してるみたいで寝覚めが悪いとゆーか。
一〇〇勝じゃなくて一〇〇体倒すだったかな?
まあ細けえことはいーんだよ。
「ユーラシアさんは毎日魔境にいらっしゃいますねえ。今日で四日連続ではないですか?」
「魔境は楽しいよね。天気がいいからつい来ちゃう」
「魔境での戦闘は、精神的肉体的に負担が大きいでしょう? 魔境行きの転送魔法陣が設置されてすぐの冒険者が毎日来るなんて、普通はないことなんですよ」
「そーなの?」
「ええ。数日おきが普通です」
「負担が大きい魔物なんてまだ戦ってないもんな。魔境いいところだから毎日来たい」
経験値もアイテムも稼げるしな。
オニオンさんがいい顔で頷く。
「ユーラシアさんの実力なら、そろそろワイバーン帯にチャレンジしていいと思いますよ」
「そお?」
「ええ。ベースキャンプからオーガやケルベロスとの戦いを拝見させていただいた限り、ワイバーンには十分勝てます」
「ワイバーン帯ってオーガ帯より推奨レベルが一〇くらい高いんじゃなかったっけ?」
「はい、確かに」
キラリと光るオニオンさんの眼鏡。
うまい策でもあるのか?
「戦い方次第です。ワイバーンは敏捷性が高く、強力な全体攻撃を持ちますけれども、ヒットポイントはさほど多くないんです」
「マジか」
「ええ、オーガやケルベロスと比べて少し多いくらいで。ユーラシアさんのパーティーの火力なら、おそらく二ターンで勝てます」
ダメージもらっても一ターンだけとゆー考えから、ワイバーンと戦うことを勧めるのか。
「ワイバーン帯平均獲得経験値は大体オーガ帯の倍くらいになります」
「なるほど、チャレンジしてみるかな。ワイバーン帯で注意することある?」
「一口にワイバーン帯と言っても、実はかなりバラエティに富んだ魔物達が出現するんですよ。だからより有利に戦えそうな魔物を相手にするのがいいと思います。例えば対竜装備を持ってるならワイバーンやヒドラなどの亜竜を相手にする。聖属性攻撃があるならレッサーデーモンと戦うなどですね。レッサーデーモンはあまり出現しませんけど」
「ふむふむ」
「最も多く出現するのがワイバーンですので、やはり弱点である対竜、対飛行、氷属性攻撃のどれかは必須でしょう」
「ありがとう、行ってくる!」
オニオンさんが教えてくれることは参考になるなあ。
ベースキャンプから出撃、より魔力濃度の濃いワイバーン帯へ真直ぐ向かう。
◇
「姐御、作戦はどうしやす?」
「クレイジーパペット以外、オーガ帯で戦うのは避けよう。対空攻撃が充実してるから、ワイバーンとガーゴイルを標的にしてみようか。人形系レアが出たら倒す、あとは無視ね」
「「「了解!」」」
少し空気が重く感じる。
今までより魔力濃度が濃いせいだろうか。
ワイバーン帯に入ったんじゃないかな。
「素材の傾向が若干異なりますね。レアなものはないようですが」
「生えてる植物も傾向違う?」
「違いますね」
ふむ、要注意だ。
「ボス、クレイジーパペットね」
ワイバーン帯にもいるのか、新経験値君ことクレイジーパペットは。
当然倒すのだ!
「経穴砕きっ!」
アトムの『経穴砕き』でとどめを刺す。
クレイジーパペット一体の倒し方は確立した。
でも二体以上同時に出現されると、『フレイム』が痛いだろうなー。
今までにないけど。
「クレイジーパペットは逃げないねえ?」
「私達のレベルが低いからじゃないでしょうか?」
「野郎、舐めくさっていやがるのか!」
「怒らない怒らない。自分が経験値になることさえ理解しないで向かってくるんだから、可愛いもんじゃないの」
うへえ、という顔を見せるアトム。
どっかであったな、似たような会話。
『リフレッシュ』で全快し、さらにワイバーン帯を進む。
「……ワイバーンです」
クララの声が緊張する。
「ボス、ミーも攻撃魔法ね?」
「いや、一ターン目は『実りある経験』でいいよ。二ターン目に攻撃魔法お願い。クララは『リカバー』で」
「あっしは『マジックボム』で?」
『透明拘束』で攻撃力を落としたいところだが、アトムは『スナイプ』を装備してないので射程が短い。
カウンター狙いで後手を踏むくらいならば、と。
「『マジックボム』で、二ターン目は通常攻撃ね。皆いいかな?」
「「「了解!」」」
レッツファイッ!
ダンテの実りある経験! ワイバーンのウインドブレス! くっ、激しい。全員がダメージを受ける。あたしのハヤブサ斬り・改! 『あやかし鏡』の効果でもう一度ハヤブサ斬り・改! アトムのマジックボム! クララのリカバー! さすがに一ターンでは倒れない。ダンテのアダマスフリーズ! ワイバーンの爪攻撃! アトムが受ける。あたしのハヤブサ斬り! 『あやかし鏡』の効果でもう一度ハヤブサ斬り! ウィーウィン!
「ふいー、『ウインドブレス』はかなりヤバイね。あ、何か落としてった?」
「『ワイバーンの爪』、素材ですね」
「ダンテ、『アダマスフリーズ』はナイス判断だった。氷魔法は効くね」
「ネクストも同じパターンね?」
「うん、ワイバーンなら同じでいい。あっ、『マジックボム』は脚に当てないで。爪が消し飛びそう」
「「「了解!」」」
アトムにも対空攻撃用のカードが欲しい。
でも敵が強いだけに、盾役の防御用カードを外すわけにはいかない。
しばらくはあたしとダンテの火力で押していこう。
レベルと魔宝玉が欲しいので、本当はワイバーンじゃなくて新経験値君がいいのだが。
「リフレッシュ! よし、もう少し戦っていこうか」




