第186話:振り返ればやつがいる
『大王結石』の交換対象カードがないなーって思ってたことが顔に出ていただろうか?
アルアさんがつけ加える。
「『大王結石』の交換対象となるパワーカードは、試験していい具合に仕上がってきてるよ。完成はもう二、三日先になる」
「どんなカードなのかな?」
「物理攻撃用だよ。攻撃属性はつかないが、ちょっと驚くような性能になる」
「そーかー」
「物理アタッカーなら常時装備しておきたいカードだよ。魔境のお供に持ってこいだ」
笑顔のアルアさん。
相当な自信作みたいだな。
そしてどうやら主力アタッカーのあたしが装備すべきパワーカードのようだ。
今装備してるカードの内、何を外そう?
魔境では『雑魚は往ね』が使えないから、状態異常耐性用の『オールレジスト』の必要性が低下するとは感じていた。
何故なら昨日の経験では、魔物の攻撃を食らうまでにワンターンで倒せてるので。
『オールレジスト』の代わりか?
まあ新カードができあがってきてから考えりゃいいことだが。
「しかし交換ポイントもバカ高くならないと釣り合わないカードになるから、なるたけ貯めときなよ。何か交換していくかい?」
「わかった。今日はいいでーす。交換ポイントたっぷり貯めておくね」
「かかかっ。それがいいだろうね」
どっちにしろどうしても交換したいカードはなかった。
魔境でもオーガ、ケルベロス、クレイジーパペットを相手にしている分には、今持ってるカードで十分だから。
アルアさん上機嫌だ。
どんなカードができてくるんだろう?
期待を持たせるなあ。
「じゃあ、さようなら」
「気をつけてお行きよ」
アルアさん家から外に出、転移石碑からギルドへ行く。
◇
「やあユーラシアさん。今日もチャーミングだね」
「ポロックさん、こんにちはー。ヴィルカモン!」
「今日もヴィルちゃんを呼ぶのかい?」
大男だけれども当たりが柔らかく、正直者のギルド総合受付ポロックさんが、角帽を傾けて聞いてくる。
「なるべく皆がヴィルに慣れてくれるといいなーって思ってるんだ」
「ヴィルちゃんは悪さしないし可愛いから、ギルドのメンバーも見慣れてくれるといいねえ」
「ポロックさんがそう思ってくれるのは嬉しいなあ。あ、ヴィルの固有能力に面白いのがあるんだよ」
「ほう? 悪魔の固有能力なんて、滅多に見る機会がないな」
ヴィルが出現する。
「じゃーん、ヴィル参上ぬ!」
「よーし、ヴィルよく来た!」
「ヴィルちゃん、こんにちは」
「こんにちはぬ!」
「ポロックさん。魔道のパネルでヴィルのステータス見てもいいかな?」
「もちろんだよ。興味あるねえ」
ポロックさんが青いパネルを起動、ヴィルが掌を当てると文字が浮かんでくる。
「レベル四九か。やはり各種パラメーターが高いねえ。特に最大マジックポイントは見たことないような数値だ。固有能力はと……『闇魔法』『マジックポイント自動回復四%』『いい子』か。『いい子』?」
ポロックさんが首をかしげる。
見たことない固有能力でしょ?
「褒めたり頭撫でたりぎゅーしたりすると、パワーアップしたり状態異常から回復したりヒットポイントが回復したりする超レア能力、なんだって」
「『闇魔法』を見るのも初めてだが、『いい子』とはね。ヴィルちゃんは本当にいい子なんだねえ」
ポロックさんがヴィルの頭を撫でる。
「いい子ぬよ?」
「いや、面白いものを見た。ありがとう」
あ、そうだ。
あれを聞いておかねば。
「掘り出し物屋さんがもうじき来るって、二日前おっぱいさんに聞いたんだ。いつ来るのか決まったかなあ?」
「ああ、明後日の午前中と聞いてるよ。時間はあんまり当てにならないけど、明後日であることは間違いないと思う」
「ありがとう!」
今若干お金に余裕あるしな。
いい出物があるんだったら手に入れたい。
でもおっぱいさんの予想では、売り残したくない消耗品がメインの商材なんじゃないかって言ってたな。
消耗品はあたしもあんまり欲しくない。
さて、ギルド内部へ。
「こんにちはー」
買い取り屋でアイテムを処分した後、武器・防具屋に顔を出す。
特に用があるわけではないんだが。
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
「今ここで売ってるパワーカードのリスト見せてくれる?」
「はい、こちらになります」
『ナックル』【殴打】、攻撃力+二〇%
『ニードル』【刺突】、攻撃力+二〇%
『スラッシュ』【斬撃】、攻撃力+二〇%
『スナイプ』攻撃が遠隔化、攻撃力+二〇%
『サイドワインダー』【斬撃】、攻撃力+一五%、スキル:『薙ぎ払い』
『シールド』防御力+二五%、回避率+七%
『光の幕』防御力+一五%、魔法防御+一五%、沈黙無効
『シンプルガード』防御力+二五%、クリティカル無効
『ハードボード』防御力+三〇%、暗闇無効
『火の杖』魔法力+一五%、スキル:『プチファイア』
『ホワイトベーシック』魔法力+一五%、スキル:『ヒール』、『キュア』
『マジシャンシール』魔法力+二〇%、MP再生三%
『オールレジスト』基本八状態異常および即死に耐性五〇%
『ボトムアッパー』攻撃力/防御力/魔法力/魔法防御/敏捷性全て+七%
『誰も寝てはならぬ』防御力+一〇%、睡眠無効、最大HP+一〇%
『ヒット&乱』攻撃力+一〇%、混乱付与、混乱無効
「随分ラインナップが充実したねえ。前衛も後衛も一通り揃えられるじゃん」
「ええ。他の装備品と重複するのがよろしくないらしいので、パワーカードだけで編成することができるようにしてみました」
「お値段はおいくらなの?」
「『サイドワインダー』のみ二〇〇〇ゴールド、他は一五〇〇ゴールドです」
ふむふむ、下の二種類以外は、使い勝手のいい売れ線のカードを揃えてるんだな。
「これ、下二種類がアルアさんのところにないカードだよね?」
「はい、そうです」
「『ヒット&乱』一枚ちょうだい」
あたし達のパーティーにとって特別に必要なカードじゃないけど、武器・防具屋さんとも付き合いがあるしね。
混乱は敵味方関係なく攻撃対象にしてしまうヤバい状態異常だ。
今のところ混乱を無効化できるカードはこいつだけなので、一応手に入れておく。
「はい、毎度ありがとうございます」
「あ、あの、有名な精霊使いのユーラシアさんですか?」
後ろから声をかけられる。
何やつ?




