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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第184話:ダブルでぎゅー

「ヴィル、今の本の世界はどういう空間だった?」


 肉狩りから帰宅後、ヴィルを交えて家で小会議だ。


「亜空間に浮かぶ独立した空間だぬ。わっちの家よりはかなり大きいぬよ?」

「ふむふむ、そーかそーか。予想通りだな」

「姐御、本の世界の人形は、向こうの世界の回し者ですかい?」


 率直に切り込んでくれるアトムは嬉しいね。


「アリスが『アトラスの冒険者』について口止めされてたことから考えるとね。とゆーか本の世界はエルやバエちゃんの世界が膨大な知識を整理するための空間であり、アリスはその管理人なんじゃないかな。回し者という言い方は可哀そうだよ」

「メイビー、アナザーワールドのヒューマンは、亜空間のスペースをチェックしてジャンプできるようね」

「うん、だから困ったことがあるんだよねえ」


 クララが聞いてくる。


「何が困るんですか?」

「向こうの世界の住人がアリスに接触すれば、簡単にエルの居場所がバレちゃうってこと」

「「「「!」」」」

「何でも知ってるってのも困ったもんだなあ」


 うちの子達が目に見えて動揺している。


「姐御、どうしやしょう?」

「わっちはどうすればいいかぬ?」

「はい、慌てない。深呼吸しようか。吸って~吐いて~吸って~吐いて~吐いて~吐いて~吐いて~」

「ボ、ボス、アイがチカチカするね」

「死んじゃうぬ!」


 うちの子達は素直だなあ。

 クララよ、またユー様がおかしなこと始めて、なんて目で見てるのはあんただけだぞ?

 もう少しあたしを信用しなさい。


「落ち着いたかな? 現状、騒ぎ立てる必要はないでーす。何故なら向こうの住人がアリスに接触していないから」

「あっ、一〇年も本の世界に誰も来てなかったということからですか?」

「そゆこと。エルがいなくなったことが重要視されてないのかもしれないし、本の世界にアクセスする権限が今の向こうの権力者階級にないのかもしれない」

「な、るほど」

「もっと言うと、向こうの世界も一枚岩じゃないかもしれない」

「どういうことです?」


 クララは随分と冷静だな。

 こういう時、あたしが何らかの結論を既に出していることを知っているからだろう。


「あたし達に本の世界のクエストを振ってきたからだよ。これは変だと思わない?」

「……アナザーワールドがボスにインフォメーションをギブするのはストレンジ?」

「どうやら異世界は、こっちの世界には情報を与えまいとしているっぽいじゃん? なのにあたし達をアリスと接触させたのは明らかにおかしい。多分『アトラスの冒険者』本部も考えてなかったような穴があるんだ」


 クララが頷く。

 似たようなことを考えていたのかもしれないな。


「もっとも本の世界のクエストは単なる偶然だったかもしれない。でも情報統制が完全ならそんなことするわけがないからさ。隙があるのは間違いないね」

「オー、アイシーね」

「あっしも理解しやしたぜ」


 完全に平静になったかな。


「そしてアリスの知識も完全じゃないということがわかったね。ヴィルのこと知らなかったじゃん?」

「ミーも思ったね」

「アリスは本の世界に『世界の知恵と知識が集まっている』って言ったんだ。つまり文献や書類として残されていることは知ってる、ってことなんじゃないかな」

「ヴィルは文献や書類として記録されてねえ?」

「おそらく」


 ヴィルはうちの子になるまであんまり人と関わってこなかったようだから。


「パラキアスさんとデス爺が、アリスのことを『全てを知る者』って言ってたんだ。重要な情報を持ってるかもしれないから、『全てを知る者』について何を知ってるのかはいずれ問い質したい。あとはデス爺に、『全てを知る者』からエルの居場所が突き止められる可能性については知らせておくべき。やっとかなきゃいけないのはそんなとこかな、急ぎじゃないけど。ヴィルは今まで通り偵察してくれればいいからね。他に意見のある人いる?」

「ないです」

「ないな」

「ないね」

「ないぬ」


 ふむ、意思の統一は図れただろう。


「よーし、この話はここまで。クララはお肉捌いておいて。アトムとダンテはクララのサポートお願い」

「「「了解!」」」

「明日バエちゃんとこ行くから連絡してくるね。ヴィルついておいで」

「はいだぬ!」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「ユーちゃんいらっしゃい。あら、今日はヴィルちゃんも一緒なの?」

「うん、バエちゃんとダブルでぎゅーしたらどうなるかと思って」

「ぬ?」

「「ダブルでぎゅー」」

「ふおおおおおおおおお?」


 心持ちいつもより声が高い気がする。


「き、気持ち良すぎて死んじゃいそうだぬ」

「力抜けちゃった? ねんねしてていいからね」


 高位魔族が一日に二度も死にそうになることって、あんまりないかもしれないな。

 死んじゃいそうってのは一種のジョークだろうけど。


「明日お肉持ってくるよ、って連絡しに来たんだ」

「あっ、明日カレーにするのよ。カレーパーティーにしよ?」

「いいねえ。お肉どうする? かれえに入れて煮込むなら今から持ってくるし、焼いて別に食べるなら明日にするよ」


 おお、考えてる考えてる。

 こんなに真剣なバエちゃん見るの初めてかな。

 この前『こっちで暮らす気はあるのか』って聞いたときより悩んでるんじゃないか?


「うーん、両方!」

「当然そう言うと思ったよ。今から少し持ってくる。あ、そうだ。かれえのもとに入ってる香辛料って調べられる?」

「あら、手に入れられる当てでもできたの?」


 まだ何とも言えないんだが。


「今クエストで魔境っていう、魔物が強いとこ行ってるんだ。そこでクララが香辛料の取れる草や木を何種類か見つけたんだよ。ひょっとしたらかれえに似たものは作れるかもしれないと思って」

「えっ、すごいじゃない!」

「いやー、どうかな? あの味と香りが再現できないとかれえになんないからね。似て非なるものじゃなくて、ちゃんとしたかれえを作りたいんだ」


 相当難しいとは思う。

 でもかれえという素晴らしい料理をドーラに広めたい。

 どこでも食べられるようにしたい。

 エルだって喜ぶだろうしな。

 チャレンジする価値は十分ある。


「じゃ、カレー粉は調べとくね」

「お願いしまーす。煮込む分のお肉はすぐ持ってくるよ、じゃあね」


 ヴィルを抱っこして転移の玉を起動する。

 明日楽しみだなー。

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