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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第182話:魔境エレジー

「エル、いらっしゃーい!」

「話は聞いた。色々考えてくれてありがとう」


 デス爺がすぐエルを連れてきてくれた。

 緩衝地帯の店々を見て感心するエル。


「随分賑わっているんだね」

「いや、ここでカラーズの各村が店を出すようになったのは四日前なんだ。それまではただの荒地だったんだよ」

「ええ? 全然荒地だったようには見えないな」


 キョロキョロと店を眺めるエルの服装を見て、青の民族長セレシアさんは思うところがあるようだ。


「……なるほど、上下のセパレーツ、伸びる生地でピッタリめ、コントラストの利いた配色ね。チェックでも似合いそう。丸い帽子も可愛いわ」

「どう? 野暮ったいところがなくて動きやすそうでしょ?」

「ええ、こういうアプローチがあったか……」


 おお、セレシアさんやる気出てきたみたいだね。

 デザイナーの感性については知らんけど、見たことないものを見るのは刺激になるだろ。


「試作品ができたら、一着エルにあげてよ」

「もちろんよろしいですわ。じゃあ身体のサイズを測らせていただいてよろしいかしら?」

「どこのサイズ? ある部分のサイズについてエルは敏感だよ?」

「余計なこと言うな!」


 笑いが起きる。

 これで一件落着だ。


「さーてと、あたしの用は終わったな。帰るよ。また塔の村行くから」

「ああ、元気でな」

「あっ、ユーラシアさんお待ちになって」


 セレシアさん、まだ何か?


「これ、差し上げます」


 太めのフリフリのリボン?


「お礼です。ユーラシアさんには必要のないものかもしれないけど、今のところワタシ達の持つ最高の技術で作った品です」

「ありがとう!」

「えっ」


 これはいい。

 本の世界のマスター、アリスへのプレゼントにピッタリじゃないか。

 セレシアさんは面食らってるようだけど。


「いつも迷惑かけちゃってる子がいてさ。可愛い系のものをお返ししたいなとは思ってたんだけど、あたしそーゆーのわかんないから困ってたんだ。セレシアさんの見立てなら間違いないよ。本当にありがとう!」

「そ、そお?」


 セレシアさんも満更でもなさそう。


「いつも迷惑かけちゃってるってオレのことかな」

「いや、ボクのことだろう」

「ワシじゃな」

「お前らのことじゃねー! ハゲにリボンはいらねー!」


 何てずうずうしいんだ。

 サイナス、エル、ハゲ爺、あんたらあとで説教だ!


          ◇


 午後は魔境でまったり魔物を倒した。

 今日はクレイジーパペットに会えなかったのが残念だけど、オニオンさんに『精霊のヴェール』を見せることもできた。

 まずまず充実した一日と言えるだろう。


「『魔境トレーニング』って名前からして、もっとたくさん上級冒険者が訓練とかしてるのかと思ったよ」


 オニオンさんが顔を顰める。


「本来、冒険者としての実力をアップさせるためには、魔境探索が望ましいです。魔境は大変経験値稼ぎの効率がいいですから。しかし新しいクエストが出ればそちらへ行きたくなるでしょうし。また魔境へ来られるようになって、冒険者を辞めてしまう者も比較的多いのです」

「せっかく魔境来られるようになったのに、冒険者辞めちゃうの? 何でだろ?」


 レベルもおゼゼも稼げるのにな?

 むしろあたしは肉狩りの次にモチベーション高いんだけど。


「達成感、でしょうか。レベルアップで覚えるスキルは一通り習得した。ドラゴンも見た。しばらく遊んで暮らせる金もできたとなると、わざわざ危険を冒して冒険者を続ける動機が薄くなるんですかね」

「ドラゴンって見ただけで満足できちゃうの?」


 ビックリだわ。

 ドラゴンを倒して得られるレア素材『逆鱗』は、結構な収入になるのにな。

 らしくない、やや乱暴な口調で言うオニオンさん。


「ドラゴンを倒せるパーティーなんてほとんどありませんよ。だからこそ『ドラゴンスレイヤー』の称号は希少なのです。魔境に来たばかりなのに、ポコポコ魔物を倒せてるユーラシアさん達がおかしいんです」


 じゃあ昨日の剣士と魔法使いのお兄さんズはやる気があったんだな。

 ステータスアップ薬草で強くなろうとしてたし。


「ユーラシアさんはお若いから理解できないかも知れませんね。レベルアップでのステータスの上昇より年を取っての肉体の衰えの方が大きくなれば、強い魔物を倒そうなんて考えなくなりますって」

「そーゆーもんなのかー」


 悲しいな。

 でも冒険者がいつまでも続けられる職業じゃないってのはわかる。

 マウ爺みたいな人が例外なのだ。


「ユーラシアさんがどうして嬉々として魔境に足を運ぶのか、そちらの方が知りたいくらいですよ」

「儲かるから。あたしあんまりお金持ってないんだよね」


 オニオンさんが絶句する。

 何ゆえ?


「どういうことです? いや、昨日レベルあってもおゼゼがカツカツとおっしゃっていたのは覚えていますが、てっきり冗談だと思っていました。魔境まで到達する冒険者が金銭的に困ることなんてないでしょう? あ、ユーラシアさんはスキルコレクターですか?」


 スキルコレクターとは汎用スキルを買い集めていくマニアのことだ。

 オニオンさんが少し嬉しそう。

 昨晩の話からすると、相当スキルが好きみたいだしな。  

 でもあたしはあんたの同好の士じゃねーよ。


「いや、違くて」


 経験値倍増スキル『実りある経験』と経験値五割増しとなるパワーカード『ポンコツトーイ』のことを話す。

 うちのパーティーはレベルアップが早いだけなんだよ。

 大きく頷くオニオンさん。


「なるほど、ペペさんのオリジナルスキルと一掃スキル『雑魚は往ね』のコンボですか。実に効率的だ。マジックポイントをほとんど使用せず、探索に長い時間をかけられるというのが素晴らしいです」

「あと掃討戦の時、デカダンスの経験値が全部あたし達のところに来て、いっぺんにレベルが一〇以上も上がったの」

「一〇以上? まさかデカダンス戦でも『実りある経験』を使ってたんですか?」

「人形系魔物なんて経験値多いのわかりきってるじゃん?」

「何とまあ……」


 もっともデカダンス戦はギリギリの戦いだった。

 ダンテに『実りある経験』を使わせたことが、必ずしも正解だったとは思わない。


「だからあたし達は普通の冒険者ほど苦労してここに来たわけじゃないんだよ。ごめんね、幻滅した?」


 オニオンさんが面白い玩具を与えられた子供のような顔をしている。

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