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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第181話:コンセプト?

 ――――――――――四七日目。


「晴れてる日は実に気持ちがいいねえ」

「そうですねえ」


 うちの子達を連れて、コブタ肉を土産に灰の民の村へ行く。

 クララの歩くスピードに合わせてゆっくりだ。

 あたしはせっかちなほうだけど、歩くのはゆっくりが好き。


 カラーズ緩衝地帯への出店も、各村そろそろ慣れてきている頃ではないだろーか。

 灰の民の村が掃討戦後に得た新しい土地をどうするのかも知りたいし。

 トマト作ってくんないかな。

 けちゃっぷはおいしいし、保存が利くので勧めたい。


「サイナスさーん、おっはよー。あれ?」


 青の民の族長であるセレシアさんがいる。

 何でだ?

 まさか逢引きってわけじゃないだろうし。

 何故ならサイナスさんがセレシアさんをコントロールできるわけがないから。


「セレシアさん、この前のチュニックすごくいいよ。気に入った」

「ちょうど君の話をしてたところなんだ」

「そーなんだ? 噂されちゃう美少女精霊使い。まいったなあ」


 まいってないけど。

 イマイチ噛み合わない会話の中でお土産を渡す。


「これお肉。セレシアさんにも半分あげるから、皆で食べてね」

「あら、ありがとう」

「じゃーねー」

「「ちょっと待って!」」


 何だどうした?

 あたしだって暇じゃない。

 灰の民の村が得た東の新領地がどうなってるか見たいんだが。


「まだ整地中だよ。急がせてはいるけど、当分何もできない」

「じゃ、見てもしょうがないな。こっちで何か用ある?」

「いや、セレシア族長が君の意見を聞きたいというんだ」


 商売人もどきユーラシアの意見が聞きたいか。

 神託と同等の価値のあるあたしの言葉をありがたく拝聴しなさい。


「ファッションについてなのだけれど……」

「パス」


 あたしがファッションの何を語れるとゆーんだ。

 興味ないわ。


「オレもユーラシアにファッションの意見を聞くのは時間のムダだって言ったんだけど……」

「あたし自身もムダだと思うけど、他人に言われるのはカチンとくるね」


 あたしに対する挑戦状と受け取った。

 とっとと話せ、さあ話せ。


「コンセプトが揺らいでるのよ」

「コンセプト?」


 何じゃそら?


「ワタシは奇麗で可愛い装いを世に送り出したいと思っているの」

「うん、知ってる。青の民のお店見ればわかる」

「ユーラシアさんは実用一辺倒でしょう? でも実に堂々としていて魅力的です。ワタシの考え方が間違っているのかと……」

「だってあたしは冒険者だもん」


 兼業ではあっても、ぴらぴらの服で魔物と戦うほど無分別じゃないんだなー。

 つまり奇麗で可愛い装いが女性を魅力的に見せられると考えていたけど、あたしが真逆だからコンセプトが揺らぐってことか?


「関係ないですよ。あなたも女性なのですから」


 セレシアさんが左手でこめかみのあたりを抑える。

 一人の女性を悩ませてしまったか。

 あまりにもあたしが魅力的なのも罪なことだ。


「要は可愛いだけじゃなくて、何か別の軸が欲しいということ?」

「ええ、実用的ということでもいいのですけれども、中途半端なものになりそうなのです。ユーラシアさんの知恵を拝借いたしたく……」


 可愛くて実用的で中途半端じゃないやつ?

 ファッションに欠片も興味のないあたしが考えろと?

 これが無茶振りとゆーものか。


「ほら、ユーラシアの守備範囲じゃないだろう?」

「ファールゾーンだけど、得意げにゆーな」


 何が面白くてサイナスさんは煽ってくるのだ。

 しかしあたしは急に閃いた。


「あっ、あるある!」

「「えっ?」」


 セレシアさんとサイナスさんの声がハモった。

 でも二人の声には温度差がある。

 セレシアさんの『え』は希望の叫びであり、サイナスさんの『え』は疑問符の集積だろう。


「デス爺いつこっちに来るかな?」

「今日来てるよ。緩衝地帯で店を見てるはずだ」

「二人とも来てっ!」


 セレシアさんとサイナスさんを連れ、緩衝地帯の出店会場に行く。

 さすがに初日に見たほどの賑わいはないが、それでも多くの人がいる。

 以前にはほとんど考えられなかった、他色民同士で話し合ってる光景も散見される。

 うんうん、いいことだね。


「じっちゃーん!」

「何じゃユーラシア。それにサイナスと……青の民のセレシア殿?」

「エルの服、あれ売ろう!」

「どういうことじゃ? 説明せい」


 エルの服にはこっちの世界では見られない異質さがある。

 異世界がもしエルを探そうとするなら、いずれ服装方面から足がつかないとも限らない。


「こっちの世界でもあの服装が流行っちゃえば心配なくなるでしょ?」

「かもしれぬが、そのためにセレシア殿の手を煩わせるというのか?」

「セレシアさんはセレシアさんで、可愛さと実用性を追求した新しいファッションを模索してるんだよ。エルの服装ならピッタリだ!」

「……確かに。互いに利があることならばワシも賛成しよう」

「どういうことです?」


 事情を知らないセレシアさんとサイナスさんに、声を潜めて説明する。

 陰謀チックなことも大好きな乙女のあたし。


「……これから話すことは他言無用だよ」


 コクコク頷く二人。


「サイナスさんは知ってると思うけど、灰の民が移住した先である塔の村には精霊使いがいる。エルという名前で、異世界人なんだよ」

「「異世界人?」」

「亜空間で隔てられた別の世界の人ってことね。エルの服装は変わってるんだ。でもセレシアさんなら独自性や機能性は理解できると思う。そのファッションを売り出せばいい」

「で、でも丸々マネするなんて……」


 動揺するセレシアさんに告げる。


「人助けになるかもしれないんだ。協力してくれないかな」

「どういうこと?」

「エルは異世界から追われる可能性があるんだ。でもこっちの世界で似た格好が広まれば、服装から特定される可能性は減る」


 セレシアさんが息を呑む。


「もちろん全部コピーして売り出せって言ってるんじゃないよ。セレシアさんのインスピレーションの助けになればいいし、コンセプトの軸にするってことでもいい。逆にエルがセレシアさんデザインの服を着てくれても、目くらましの目的は果たせる。どう?」

「面白い申し出だわ。エルさんの服装を見てみたいわね」

「よおし、じっちゃん、エル連れてきてよ。あ、塔に入ってるかな?」

「いや、まだいるはずじゃ。すぐ連れてこよう」

「あたし達は村に戻ってるね」

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