第180話:変なスキル
オニオンさんが滔々と説明してくれる。
得意分野なのかな?
「御存じかもしれませんが、魔物にもレベルがあるのですよ。『雑魚は往ね』は術者よりレベルの低い魔物に大ダメージを与えるバトルスキルです」
「うん、その辺までは何となく知ってた。魔境の魔物のレベルってどれくらいなんだろ?」
「最も弱いオーガ帯の魔物でもレベル五〇近くはありますね」
「確かにレベル五〇って言われるとしっくりくるわ」
実際にはレベル三〇代のうちのパーティーならば、オーガをワンターンで倒せてしまう。
だけど醸し出すオーラが強者臭なんだよな。
『雑魚は往ね』が効くような気がしない。
「ですから魔境で『雑魚は往ね』を使うのは難しいです。ちなみに人形系レア魔物や魔境中央の最強魔物群、及びボスはレベルカンスト扱いになります。ですから理論上、『雑魚は往ね』のダメージ増強効果は発揮されないのです」
「オニオンさんありがとう! 『魔法スキル大全』にもそこまで詳しいこと載ってないんだ。大変ためになったよ」
逆に言えば、レベルさえ上がればドラゴンクラスまでは『雑魚は往ね』で倒せるってことか。
ドラゴンをザコ扱いってテンション上がるなー。
そしてやっぱうちのパーティーにとっては、レベルを上げることが主力攻撃の『雑魚は往ね』を生かす道だな。
「何でオニオンさんは『雑魚は往ね』に詳しいの?」
「ワタクシ、スキルに興味がありまして、以前『初心者の館』に入り浸って研究者達の話を拝聴してたことがあるのです」
スキルオタクか、とダンが呟く。
うるさい黙ってろ。
有用な知識の持ち主はすごく貴重なのだ。
「これからスキルのことはオニオンさんに聞くことにするよ。お礼に今度『精霊のヴェール』見せてあげる。見たことないでしょ?」
オニオンさんの顔が喜色に溢れる。
「精霊専用の白魔法ですね。大変美しいと聞き及びます」
うん、おっぱいさんほどじゃないけどすごく奇麗だよ。
オニオンさんがスキルに詳しいと知れたのは収穫だった。
本に載ってないことはクララ先生も知らないしな。
おっぱいさんに聞いておく。
「サクラさん、ソル君って今レベルいくつだろ? 『スキルハッカー』の固有能力持ちの子」
「一七前後だと思われます」
もう一七か。
頑張ってるな。
「オニオンさん、スキルハッカーソル君が魔境に行ったらアドバイスしてあげてよ。スキルについての意見が特に必要だと思うから」
「ほう、『スキルハッカー』」
オニオンさんが目を細める。
「確か一二までスキルを選んで習得できる固有能力でしたか?」
「そうそう。で、あたしの知ってる限り『ハヤブサ斬り』『薙ぎ払い』『リフレッシュ』の三つのスキル覚えてるんだ」
「使いでのあるスキルばかりですね。しかし『リフレッシュ』ですか」
「『リフレッシュ』はあたしが教えてあげた」
『リフレッシュ』は非戦闘時限定であるが、低コストで全体回復が可能なレア魔法だ。
習得条件は不明らしい。
オニオンさんが目を見開く。
「こいつ、変なスキルばっかり覚えてるんだぜ」
「変なスキルゆーな」
「ユーラシアさんは、相当運のパラメーターが高いですか?」
「うん、『ゴールデンラッキー』っていう固有能力持ち」
ダンが騒ぐ。
何だよ、食事中だぞ。
「おい、その話聞いてねーぞ? あんたの固有能力『精霊使い』『発気術』『自然抵抗』の三つって言ってたじゃねーか」
よく覚えてるな。
「この前、ペペさんがあたし専用のスキル作ってくれることになったんだよ。あたしの詳しいステータスを知りたいって言うから、ギルド入口にある魔道のパネルで調べたら増えてた」
「増えてたって……」
おっぱいさんが言う。
「きっかけがあってとか、イベントを通して固有能力が増えるということは稀にあるそうですね。ただ知らない間に増えてたというのは聞いたことがありません。羨ましいです」
羨ましいと言われても事実だから。
あたしはおっぱいさんのおっぱいのほうが羨ましいわ。
「こいつはそーゆーやつだよ」
どーゆーやつだ。
どう聞いても尊敬の『そ』の雰囲気も感じられないんだが。
もっとあたしを盛大に持ち上げろ。
オニオンさんが話題を戻す。
「『雑魚は往ね』は、運が高くないと覚えられないというのが研究者の定説ですね。『リフレッシュ』も、おそらくそうなのではないかと」
「条件関係なくスキルを習得できるスキルハッカーは、やっぱすごいんだよ」
「しかしユーラシアじゃあるまいし、ソールが魔境まで行けるようになるのは相当先だろ。普通は中級冒険者になると、なかなかレベルは上がらねえもんだ」
「うーん、でもソル君はやるやつだからな」
「あんたは随分ソールに入れ込むよな。何でだ?」
前にも誰かに聞かれたけど。
「美少女のカンだよ」
「何のカンだって?」
「超絶美少女のカンだよ」
「盛ればいいってもんじゃないんだぜ?」
ダンが呆れたように言う。
「本当にカンとしか言いようがないんだよね。多分あたしとデビューの近い世代では、ソル君が出世頭になると思うよ」
「……あんたが言うのならソールは化けるのかもな」
ちょっとばかり真剣な表情になるダン。
似合わねえ。
「だからスキルに詳しいオニオンさんは、ソル君に注目してて欲しいんだよね。何のスキル覚えていくかで仕上がり変わっちゃうし」
「承りました。楽しみにしています」
オニオンさんも嬉しそうだ。
実際に何のスキルを覚えてくかはソル君の選択なのだが、スキルに詳しい先達の意見があるとないとでは天と地の違いだろう。
「で、サクラさんの美容についてだけど」
タマネギは噴水でダンはひっくり返る。
「話題の展開が急だな。何の脈絡もないところがすげえ!」
「褒めてくれてありがとう。でも何も出ないよ」
「褒めてねえよ!」
「あんたもオニオンさんもおっぱいにしか目が行かないだろうけど、サクラさんの本当にすごいところは肌艶だぞ? かなーり栄養と睡眠に気をつけてなければ、ああはならない」
「その通りです。美容の基本ですね」
ほら見ろっ!
おっぱいさんが大きく頷いてるだろうが。
いや、おっぱいにしか目が行かないのはあたしも同じだけれども。
「オニオンさんも細かいとこ気付いてあげられないとダメだぞ?」
「は、はい」
楽しい夜は更けていく。
ちゃんちゃん。




