第1799話:天使登場
「ふーん?」
「ほう!」
声をかけてきたのは、中性的でビックリするくらい美形の子供達だ。
銀髪ロングと白髪ロングと白髪ボブの三人組。
一〇歳くらいに見えるが結構なレベルだな。
どことなく威張った態度が透けて見える。
これは……。
「知らん子達だった。あたしも用はない。行こうか」
「ちょっと待って!」
「何慌ててるんだ銀髪ロング」
「何か言うことあるでしょ! 美しいとか綺麗とか素敵とか!」
「あたしに要求すんな。代金を請求するぞ?」
何なのだ、余裕ぶって小バカにしたような目で見て。
まことに気に入らんな。
「あなたが肩車してる子、悪魔でしょ?」
「そーだよ」
「そーぬよ?」
これが天使か。
なるほど、レダがちょっと大きくなったらこんな感じの見た目だろうな。
でもレダの方がよっぽどいい子だわ。
天使の横柄なところも聞いてた通りだ。
あっ、王様とダンが観客の目をしている。
完全に面白がるモードやないけ。
こいつら何してくるかわかんないんだから、油断してとばっちり受けんなよ?
銀髪ロングがそっくり返りながら言う。
「悪魔とあっては見逃すわけにいかないの」
「何でよ?」
「何故なら私達は天使だから!」
「おお、ポーズは格好いい!」
天使ってゆーか、道化か芸人みたいだな。
悪魔と相容れないのはその通りらしい。
しかしどうしてこいつらはサラセニアでデカい面を晒しているのだ。
天崇教布教活動の梃入れか?
デカい面はともかく、あたしらに絡んでくるとはどーゆー了見だ!
「天崇教国家アンヘルモーセンなら、百歩譲ってあんたの言い分に理があるかもしれない。けどここはサラセニアだぞ? 何も悪いことしてない善良な悪魔に嫌がらせしようとするとはいい度胸だ」
「ゴチャゴチャうるさいですわね。常識で考えて悪魔は悪でしょう?」
「どんな常識だ。言うこと聞かない子だな。で? 見逃すわけにいかないって、具体的にどうしたいの?」
「その悪魔と戦わせなさい」
「正気かよ?」
あんたらレベル三〇~四〇くらいじゃないか。
ヴィルはレベルカンストしてるんだぞ?
いや、闇属性攻撃は天使に効果が薄いんだったか。
そしてやつらの持つであろう聖属性攻撃は、ヴィルに大きなダメージを与え得る、が……。
「御託はいいから、とっととあなたの主人を寄越しなさいな。それとも代わりにあなたが相手をしてくれるのかしら?」
「あんたらあたしに勝つつもりなのかよ。天をも恐れぬ所業だな。相当自信があるらしいけど、一つ誤解があるぞ? ヴィルはうちの子だ。あたしの主人じゃない」
「は?」
「わっちの御主人は御主人だぬよ?」
「だ、だって悪魔があなたに肩車させてるんじゃないの?」
「ヴィルがいい子だから肩車してるだけだわ」
あたしとヴィルのレベルを見て、主従を判断してるんじゃないのかよ?
どんだけ節穴だ。
悪魔と人間をえらく侮ってるみたいだけど大丈夫か?
天使ってこんなもんなのか?
「まーいーや。上下関係をわからせてからだな。あんた達がすっ転がったとこ捕まえて尋問することにしよう」
「ななななな……!」
ヴィルをぎゅっとしてやる。
固有能力『いい子』の効果でパワーアップだ!
「ヴィル、適当に手加減してやるんだよ? やっつけ過ぎると何も聞き出せなくなっちゃうからね」
「わかったぬ!」
「悪魔風情が何をほざくのですかっ!」
レッツファイッ!
「ホロレクイエム!」
「ファストシールドだぬ!」
「……へ?」
必殺の聖属性魔法みたいだけど、ペペさんの盾魔法には通用しない。
間抜け面を晒す天使三人にヴィルの攻撃!
「どーんだぬ!」
「はい、勝負あり」
レベルの暴力を思い知ったか。
聖属性魔法さえ封じれば天使など敵ではないわ。
ヴィルの体当たりを食らって吹っ飛ぶ天使三人を、うねうね動く魔法のロープでお縄にする。
「よーし、捕まえたぞー」
「な、何なのこのロープ。力が抜ける……」
「あっ、そんな効果があったのか」
どうやら拘束したいっていう意思を込めると、抵抗力を失わせることができるみたい。
さすがバアルのお宝だけのことはあるな。
王様とダンがニヤニヤしとるわ。
「敗者は勝者に従うのが古今東西の原則とゆーものだ。大人しく質問に答えなさい」
「私は負けてないっ! ホロレクイエム!」
拘束しても魔法は撃てるのか。
グイッと引っ張り白髪ロングの天使を盾にする。
「きゃっ!」
「あっ、ピュリエル!」
「わーっ! 消えちゃう消えちゃう! リフレッシュ!」
何とか消滅は免れたようだが、薄ぼんやりぐったりしている白髪ロングの天使。
『リフレッシュ』ではほとんど回復できないダメージか。
単なるヒットポイントの問題じゃないみたいだ。
どういう理屈だろ?
「ひっじょーにヤバい状態です。予断を許しません。消滅の危機です。ねえ銀髪ロング、『ホロレイクエム』ってどんな効果の魔法なん?」
「……虚体に致命的なダメージを与える聖魔法よ」
「虚体にダメージ?」
例えば人間は姿形である実体と精神である虚体からなる。
実体を持たない天使・悪魔・精霊なんかは、虚体で仮の実体を作り出してるんだとのこと。
さっき白髪ロングの天使は『ホロレイクエム』で虚体に大ダメージを受けたので、存在を失いかけたんだそーな。
実体を持つ人間がこの魔法を受けた場合、一旦精神が破壊されて気を失うけど、実体に問題がなければ数日で精神である虚体が再構成されて元通りなんだって。
「とゆーことは、元気が出れば復活するということだな? ぎゅー」
白髪ロングをハグしてやる。
あたしのパワーが強いことは、ほこら守りの村の御神体リタで証明済みだ。
あっ、ヴィルも来たぞ?
一緒にぎゅー。
「よーし、大分輪郭がハッキリしてきたね。大丈夫かな?」
「あ、ありがとうございます」
「に、憎き悪魔の手を借りねばならないとは……」
「おいこら銀髪ロング。消滅しちゃったら蘇生も効かないだろーが。何て危ない魔法を撃つんだ。しかも味方に向かって」
「あ、あなたが盾にしたせいなのでは?」
「あたしのせいにすんな。危機意識が高いから反射的に盾にしちゃうんだって。次撃つと冗談抜きでこの子消滅しちゃうから、マジでやめなよ?」
「ひ……」
「わ、わかってるわよ」
銀髪ロングにも白髪ロングにも相当なトラウマを植えつけたようだ。
大分やりやすくなったわ。




