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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1797話:今日はダメだとゆーのに

 フイィィーンシュパパパッ。

 ダンを連れてガリアの王宮にやって来た。

 今日はプニル君が比較的転送先の近くで草をはむはむしている。


「広いな……おい、ありゃ何だ? デカいウマ? 脚何本あるんだ?」

「脚八本のスレイプニルだよ。神話上の存在なんだって。おーい!」


 あたし達が来たのに気付いたか、尻尾をフリフリして寄ってくるプニル君。


『おお、汝か。御機嫌よう』

「お土産にニンジン持ってきたよ。食べてね」

『すまんな。その者は?』

「ドーラの冒険者ダンだよ」

『そうか、よろしく』


 親しげに尻尾を振るプニル君。

 ダンが言う。


「おい、あんたウマと意思疎通できるのかよ?」

「プニル君とは普通に喋れるぞ? 普通のウマも大体あたしの言うことわかってくれるけど」


 サイナスさん曰く、あたしの異種族コミュニケーションは、カンで相手の言ってることがわかって説得力で自分の言いたいことを伝えるらしい。

 大体合ってる気がするけど、プニル君とは会話に苦労しないからな?


「普通に喋るにはどういう条件が必要なんだ?」

「プニル君よりレベルが高いこと」

「使えねえ条件だな!」


 これに関しては同感。

 世の中ままならんことはあるものだ。


「プニル君は相手の人間のレベルが低かろうが言ったことは理解してるから、話したいことがあるならあたしが通訳してもいいけど」

「話したいことか。咄嗟に出てこねえ」


 いつでもいいよ。

 ニンジンを食べ終わったプニル君が言う。


『本日は何用だ?』

「王様連れてサラセニア行くんだよ。クーデター起きちゃったから様子見に」

『我が連れて行ってやろうか?』

「えっ?」


 飛んで行くってこと?

 サラセニアは遠いぞ?


『我は一度行ったことのあるところならば転移できるのだ。一〇人くらいは同行できる』

「マジかよ。スペック高っ!」


 素の能力で一〇人一度に転移ってどんだけだ。

 プニル君すげえ。

 神馬って言われてるだけあるなあ。


「今日は目立たない行動が必要だからいいや。でもプニル君が転移できるなら、この先力を借りたい場面があると思う。そゆ時はよろしくね」

『うむ、そうか。ではさらばだ』


 駆け去っていくプニル君。

 プニル君はあたしに借りがあることを気にしてるみたいだけど、ぜんぜん気にする必要ないのにな。

 プニル君が客分として王宮の庭にいることで、ガリアの王権強化に無形の役割を果たしてると思う。

 世界の安定すなわちあたしの利益なんだから。


「あれよーく見てみ? 脚が地面についてないの。踏みつけると草が不味くなっちゃうからだって」

「へえ」


 ハハッ、ダン感心してら。

 プニル君格好いいしな。


「あんたといると不思議なことに出会えるな」

「あ、シチュエーションに感心してたのか。つまり意訳するとあたし偉い?」

「おう、そう思ってろ」

「信じてるぬ!」


 アハハと笑いながら王宮へ。


「王様おっはよー」

「おはようぬ!」

「おう、来たかユーラシア。ダンも手伝ってくれるのか?」

「優秀な護衛はいらないかって、売り込んでくるんだもん」


 王様上機嫌だ。

 楽しみだったのかなあ?

 あたしも楽しみだけれども。

 ダンとぽにょスパルタコちゃんガリレオちゃんを互いに軽く紹介する、と?


「今からサラセニアに行かれるんでしょう? 私も連れていってください!」

「オレも!」

「ボクも!」

「ダメだとゆーのに」


 あたしが単独行動するとかで、王様を護衛する手が足りなくなることはあるかもしれない。

 だから高レベル冒険者であるダンが一緒に行くことには意味がある。

 ぽにょとスパルタコガリレオの両公子がついて来たがるのは何故だ?


「ユーラシアさんのおかげで私はかなりのレベルになりました。足手まといにはならないはずです!」

「この前のダイオネアと違って今日はダメ。ぽにょはどう見たっていいとこのお嬢だから、潜入捜査には不向き。目立ってしょうがない」

「ならばオレ達はどうだ! 父大公の遺児であるオレ達の姿を市民に見せておくことは、十分なメリットがある!


 大公弟が即位することに対する抑止になり得るということか。

 一理ある。

 しかし……。


「もっともではあるけど、サラセニアの状況が明らかになってからで遅くないよ。情報収集の段階で公子出現のイベントはいらないな。却って混乱と争いの元だわ。スパルタコちゃんガリレオちゃんの出番はもう少しあとだね」


 残念そうな三人と頷く王様。

 えっ、この三人王様にも食ってかかったの?

 どんだけ行きたかったんだ。

 ニヤニヤするダン。


「あんたのことだから、面白がって連れてくのかと思ったぜ」

「エンタメより優先すべきことがあるわ。あたしは慎重派だから、不測の事態を招きかねない要因はいらんわ」

「つまりエンタメイベントは別にあるってことか?」

「あれ、何か起きちゃうのかな?」


 お楽しみが待ち構えてる気がしてきたけれども。

 まーでも今日は現地の様子が全くわからんのだ。

 ぽにょと両公子の同行はちょっと許可できない。


「ぽにょはサラセニア行きたいなら新婚旅行で行けばいいよ。王様今回のサラセニア事変は、手早く始末をつける気でいるみたいだから。サラセニア市民に大歓迎してもらえるって」

「は、はい」

「スパルタコちゃんガリレオちゃんも帰国することは決まってるんだから、情報が集まるのを待ってなよ。焦って一兵卒みたいな動きしようとすんな。ここは泰然自若とした君主の余裕が必要な場面だぞ?」

「わかった」「わかりました」


 こんなもんだろ。

 ん? 王様どうかした?


「ガリレオが似顔絵を描いたのだ」

「似顔絵?」


 おお、大公弟ヒラルス殿下とベルナルド騎士団長、ジョコンド商業ギルド長の、仮想敵と見做される三人の似顔絵か。


「すげえ、そっくり!」

「あんたこの三人知ってるのかよ?」

「全然知らんけれども」


 大笑い。

 いや、だってえらくリアルな絵なんだもん。

 こんなの似てるに決まってるじゃん。

 同じ絵の才能でも、どこぞのスケベジジイとは随分と傾向が違うもんだ。


「ありがとうね。大いに参考にする」

「いえ、ボクにはこれくらいしかできなくて……。よろしくお願いします」


 頭を下げ、おかっぱのさらりとした髪が揺れるガリレオちゃん。

 任せろ。

 ここからはあたしのターンだ。


「じゃ、行こうか」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し、王様とダンを連れて一旦帰宅する。

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