第178話:化学反応を期待してる
結局この日は、お兄さん達も含め全員のレベルが一上がった。
あたしとクララ、アトムが三五、ダンテが三四だ。
めでたしめでたし。
レベルは高くなってくるとなかなか上がらないものだとは聞く。
でも中央に近い魔力濃度の高いエリアの魔物は、強い分もっと経験値が高いらしい。
魔境にしょっちゅう来てればすぐレベルアップしそうだな。
今日の感じだと、経験値の高い人形系魔物クレージーパペットも結構生息してるみたいだし。
ベースキャンプに帰ってきて、オニオンさん及びお兄さん達とスキル談義だ。
「~の連続衝ってスキルのシリーズは強いねえ」
「魔物の弱点属性を連続で突けるのがいいよ。射程が長いことは隠れた利点だね。ワイバーンとかの飛行魔物用に『風の連続衝』がいいと思うんだが、まだ生息域まで行けないんだよな」
「これって確か、チュートリアルルームで売ってたよね?」
「そう、汎用スキルの一つだ」
「ユーラシアさんのパーティーの主力攻撃は何ですか?」
「この子の『ハヤブサ斬り・改』なんだよ。それをチートな装備品で攻撃回数をさらに倍にしてるんだ」
「え? じゃあ四回攻撃ですか?」
「うん」
スキルの体験談は楽しい。
使ったことないスキルで有用なのがあると欲しくなるな。
あたしには『ハヤブサ斬り・改』があるから、『スナイプ』装備で射程を長くしている限り連続衝系のバトルスキルは必要ない。
けど特にクリティカル頻発能力持ちのアトムには、『マジックボム』より向いてそう。
『マジックボム』より消費マジックポイント小さいしな。
導入を検討するか。
「俺らは帰るよ。早速ステータスアップ薬草を食べないとね。またね」
「さいならー」
さーて、あたしらも帰るか。
遅くなっちゃったからギルドで食べていこうかな。
「オニオンさんはいつまで仕事なの?」
「五時までです」
「あ、もうちょっとだね。ギルドの職員は皆そうなの?」
「はい。勤務終了時間は全員午後五時ですよ」
「夜、あまりギルド行かないから知らなかったよ。あっ、ってことは買い取り屋さんも同じなのかな?」
「そうです。お店では武器・防具屋と道具屋、買い取り屋はギルドの正職員ですので、勤務時間は午後五時時までですね」
へー、知らんかったわ。
お店の店主は全部嘱託かと思ってたよ。
考えてみればお店が皆ペペさんみたいに自由人じゃ困るもんな。
「五時になりました。お疲れ様でした。また明日もよろしくお願いします」
「オニオンさんはこれからどうするの?」
「はい? 帰宅いたしますが」
「ギルドで何か食べていかない? 今日、透輝珠二つ手に入れて儲かったから奢るよ」
「ハハッ、でしたら喜んでお供いたします」
買い取り屋さんでアイテム売却するのは明日以降だな。
透輝珠は一個一五〇〇ゴールドで売れたはず。
他に藍珠も二つある。
どうやらクレイジーパペットは透輝珠と藍珠の魔宝玉二つを必ずドロップするようなのだ。
経験値が高い上に、何てお財布に優しい魔物だろう。
素晴らしい。
必ず先制『フレイム』で炙られるのが玉に瑕ではあるけれども。
今後の魔境探索が楽しみだ。
「じゃ、行こうか」
フイィィーンシュパパパッ。
うちの子達及びオニオンさんとともにギルドにやって来た。
魔境から直通の魔法陣は便利だな。
買い取り屋さんで売るにしても食堂行くにしても、今後何度も使いそう。
あ、ポロックさんはもう帰っちゃったか。
「ポロックさんは奥さんと娘さんがいますので、定時になるとすぐ帰られますよ。娘さんが少し身体が弱いらしく、猫可愛がりだそうで」
「ポロックさんがいいパパってのはわかる気がするよ」
いつもニコニコしてるし、あたしの顔を見るたび必ずチャーミングって言ってくれるくらい正直者だし。
奥さんと娘さんを大事にしてるんだろうな。
そういえば娘さん、魚の一夜干し好きって言ってたか。
「ヴィルカモン!」
赤プレートに呼びかける。
オニオンさんが何です? と言ってる間に幼女悪魔が現れる。
「御主人の求めに応じ、ヴィル参上ぬ!」
オニオンさんが驚愕する。
「こ、高位魔族?」
「悪魔ぬよ?」
「うちの子なんだ。今は主に偵察任務に就いてもらってるの。幸せの感情が好きないい子だから心配いらないよ」
「そ、そうですか」
まだビクつくオニオンさんに、ヴィルが礼儀正しく挨拶する。
「よろしくお願いしますぬ!」
「よ、よろしく」
ヴィルは本当にいい子だな。
挨拶も随分様になってきた。
入り口から中へ。
あ、依頼受付所のおっぱいさんが荷物まとめてる。
「サクラさーん、今帰り?」
「はい。あら、ヴィルちゃんもこんばんは」
「すごいお姉さん、こんばんはぬ!」
すごいお姉さん言ってるぞ?
すごいけれども。
「食堂で御飯食べてかない? 今日儲かったから奢るよ」
「よろしいんですか?」
「もちろん。オニオンさんも一緒なんだ。ギルド正職員の話も聞きたいの」
おっぱいさんが一瞬オニオン? って顔したが、すぐ了解したようだ。
そうです、魔境ガイドの彼のことです。
本名は忘れたけれども。
「では遠慮なく」
オニオンさん、おっぱいさん合流に動揺してる?
男ならアタフタすんな。
ただのあたしの酔狂だ。
「おっ、ユーラシアのパーティーか。ヴィルも一緒か」
「こんばんはぬ!」
ヴィルの頭を撫でながらダンが言う。
いいタイミングで現れるじゃないか。
さすがゴシップ屋。
「夜に来るのは珍しいな」
「今日初めて魔境に行ったんだ。遅くなっちゃったから、ギルドの食堂で食べていこうかと思って」
「ハハッ、初めて魔境に行って夜まで働くのかよ」
チラッとオニオンさんとおっぱいさんを見るダン。
「珍しい組み合わせだな?」
「魔境のベースキャンプでオニオンさんと知り合ったからさ。ギルドで奢るよって連れて来た。サクラさんにもいつも世話になってるからね。ちょうど仕事引けるところだったから誘ったの」
何か魂胆があるんだな? この二人の化学反応を期待してるんだけどノープランなんだ。つまりエンターテインメント期待だな? ザッツライト、どうにかなんない? よし、俺も混ぜろ。助かる、今日は奢るよ。お、珍しいじゃねーか。
……というやり取りを一瞬の目配せで行う。
こういう時のダンは察しが良くて頼りになるなあ。
「ヴィルはクララ達と一緒にいてね」
「わかったぬ!」




