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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第171話:フルコンブ

 ――――――――――四五日目。


 今日は雨か。

 雨が降るたびに一日くらい休みを取ってもいい、と思いはするんだが。


「本の世界でコブタ狩るじゃん? お肉お土産に海の女王のところ行こうか。あそこなら雨でも関係ないし」

「賛成。何もしてねえと手持ち無沙汰でいけねえ」

「わかる」


 手持ち無沙汰、まさにそれ。

 『アトラスの冒険者』になる前の雨の日はマジで何もすることなくて、本を読むクララの顔を眺めて一日過ごすしかなかった。

 今のあたしには転送魔法陣と転移の玉がある。

 となればどこか行きたくなっちゃうのが人情とゆーものだ。


「じゃ用意しててよ。新しい『地図の石板』が来てると思うから、回収だけしてくる」


 ちょっと小降りになっただろうか?

 海岸まで走る。

 今日は素材はパスだ。

 『地図の石板』をと、やはりあるある。

 手に取ると地鳴りがする。

 新しい転送魔法陣が形成されているのだろう。

 急いで家まで駆ける。


「ぶあーっ、ただいま!」

「ユー様、着替えてください。カゼ引きますよ」

「ん、ありがと」


 一度カゼとゆーものを引いてみたい気もする。

 とゆーのはさておき、行かないんだったら『地図の石板』の回収は今じゃなくてもいいんじゃないかって思うかもしれない。

 まあね。

 でもクエストを完了するとすぐ次の『地図の石板』が発行されるらしいから、確認したかっただけだ。


 着替えて用意完了、これ昨日青の民の店で買ったやつだな。

 なかなかいい。

 本の世界の転送魔法陣へ。

 新しい一二個目の魔法陣がどこ行きかは気になるが、まあ今じゃなくてもいいや。

 三トンのコブタを狩って、今度は海の王国へ。


 フイィィーンシュパパパッ。

 回廊の中だが大広間のすぐ手前だ。

 なるほど、ここに転送されるのか。


「たのもう! 精霊使いユーラシアがお肉持ってきたぞお!」


 女王が転げ出てくるのが早いこと。

 衛兵よりうんと早いじゃないか。

 どんだけお肉楽しみだったんだよ。


「おお、待ちかねたぞにく……ユーラシアよ! 早速にく……こちらへ」


 ……マジで楽しみだったみたいだなあ。

 三トンしか持ってこなかったけど、もっと取ってくればよかったか?

 まーいーや、次回の楽しみだ。


「コブタマンだよ。あたしらの間では、よく脂の乗った美味い肉質で知られてる。女王の口に合えばいいけど」

「ありがとうの。口の方を合わせるから心配いらぬわい」

「料理人はどこかな? クララが捌き方を教えるよ」

「うむ、調理場はあちらじゃ。誰か案内してたもれ」


 衛兵に導かれて、クララとコブタが調理場へ行く。


「ここ来るたびに『たのもー』って大声出すのも何だから、もうちょっとスマートになんないかな?」

「ふむ。おんし、どこへ転移したのじゃ?」

「そこの回廊の大広間入口に近いところだよ」

「銅鑼をぶら下げておこう。訪問した際にグオーンと鳴らしてたもれ」


 豪快だな、おい。

 でも面白そう。


「わかった、思いっきり鳴らす」

「ハハハ、遠慮のう叩いておくれ」


 あと気になるのは回廊だな。


「大広間に一杯繋がってるじゃん? これって似てるけど、どこ繋がってるか間違えないの?」

「回廊のことか? 上にナンバーが書いてあるゆえ、どこに繋がってるかさえ覚えておけば間違えることはないぞよ」


 ナンバー?

 あ、本当だ。


「一番回廊の船着き場と一〇番回廊の調理場はわかったけど、他はどういうところに通じてるの?」


「色々じゃぞ。わらわのプライベート空間や衛兵の訓練所、牢屋、商店街などじゃな。地上に通じてるものもある」

「ふーん、商店街があるんだ。あたし達も使っていい?」

「もちろん。金を落としてくれるのは大歓迎じゃ!」


 おお、しっかりしてる。

 これが商売人の顔か。

 女王の表情は読みにくいんだけど、この顔は理解したぞ。


「商店街のみに用がある場合は銅鑼は鳴らさなくともよい。五番回廊の先ゆえ、勝手に通ってたもれ。地上のゴールドで通用するからの」

「五番回廊の先ね。わかった、ありがとう」

「何なら今から行ってもよいのじゃぞ?」


 商売人の表情ですね。

 覚えたとゆーのに。


「あとにするわ。ごめん、今お腹減っちゃって。御飯食べないと動く気にならない」

「確かにの。待ち遠しいの」


 女王もソワソワし始めたっぽい。

 クララが仕切ってるからもうじき出てくるはずだよ。

 手際がメッチャいいからね。

 ほら、来た来た。


「お待たせしました。肉をシンプルに焼いたものでございます。こちらの塩を振りかけて御賞味ください」

「おお、待ちかねたぞ!」

「あたしも待ちかねたわ。スリムなあたしがなおスリムになってしまったわ」


 女王大喜びだ。

 クララも席につく。


「大地と大洋の恵みに感謝し、いただきます」


 ……何だこれ、想像以上に美味い。

 いやコブタ肉は元々美味いのだが、味の輪郭が際立ってるというか赤身と脂身のコントラストが絶妙というか。

 美味さを引き立ててるのは塩か?


「この塩、何? 黒い粒々が入ってるけど」


 感激のあまりのたうち回る女王に聞く。


「はあはあ、何かの。塩? 塩は普通じゃぞ。ただし海藻を乾燥させて粉末にしたものを混ぜてある」

「へー。海底にはすごいもんがあるな」


 『フルコンブ』というのだそうだ。

 海底で品種改良された、旨みの塊である海藻とのこと。


「肉との相性は最高であるの。よいことを知った」

「フルコンブか。これは地上でもウケるわ。欲しがる人は必ずいる」

「何、本当か?」

「うん、抜群においしいもん。でも売れない」

「な、何故じゃ!」


 商売人の顔で迫る女王に説明する。

 美食におゼゼ出せるとすると裕福なレイノスなのだが、亜人差別の激しいレイノスで魚人の海藻が売れるわけはない。

 海藻を食べるという文化を根付かせることすら難しいだろう。

 女王が肩を落とすが……。


「女王は地上と交易したいという考えを持っている、でいいのかな?」

「もちろんじゃ! 海だけでは退屈でつまらぬ。地上の美味を味わいたいのじゃ!」

「おおう、実によくわかる考え方だな。じゃあ別のところから攻めよう。フルコンブは切り札でいいよ。どうせ地上じゃマネできないからね」

「別のところ、とは?」

「まずはお魚からがいいと思う」

「魚? 魚は地上でも獲れるであろ?」

「獲れるんだけどさ」


 海の女王には理解できまい。

 ドーラで魚は珍味扱いなのだ。

 これは説明が必要だろう。

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