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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第168話:パワーナイン

 レイノスの人ジンに聞いておく。


「ねえジン、精霊様と精霊使いのあたしを結びつけて考えてる人、レイノスでは多いのかな?」

「僕がレイノスを出てきた時には多くなかったですけど、今はわかりませんね」


 精霊様騒動はしばらくレイノスで話題になっていたと、ピンクマンが言っていた。

 どんなふうに話が発展してるかわからんな。

 うむう、いよいよレイノスには行かないほうがいい。

 レイカが聞いてくる。


「無害で奇麗な魔法ってあれか、デカダンス戦にかけてた……」

「うん、『精霊のヴェール』。よくわかったね」

「そんなに奇麗なのか。ボクも見てみたいな」

「僕ももう一度見たいです!」

「……」


 ハオラン何か言えよ。

 さっきジンがこんなに喋るの聞いたのは初めてって言ったから、無口キャラで押そうとしてるんだろうか?


「じゃあクララ、お願いできる?」

「はい」


 皆でゾロゾロ外に出る。


「精霊のヴェール!」


 日が傾き、夕焼けとなり始めた空に精霊様の魔法が打ち上がり、光のひだがオレンジ色の空を掴んだように見える。

 バックが青空の時とはまた別の美しさだ。


「ふわー」

「これが精霊様の奇跡の魔法……」

「……」


 ハオラン何か言えよ。


「いやこれ、コケシももうちょっとレベルが上がれば覚えるはずだよ?」

「そうなのか。楽しみだな」


 効果の話だよね?

 奇麗だからじゃないよね?


「レイノスを吹き飛ばすというのはさすがに冗談ですよね?」

「冗談だよ。レイノス吹き飛ばすだけの魔法持ってるのはクララじゃなくて、オレンジ髪のダンテ」

「「「「え?」」」」

「ペペさんっていう、すごい魔道士から最強の魔法ってのを買ったの」

「買ったって……」

「一〇〇〇ゴールドと極めて格安だったから」


 レイカが呆然としている。

 まあわかる。

 ペペさんのオリジナルスキルは効果も価格もおかしい。


「いや、習得条件が厳しいの。三系統以上の魔法系固有能力を持ってること」

「確かに難しいな」


 顔をしかめるエル。


「精霊ならともかく、人間じゃ習得は難しいね」

「だろうな。実際に使ってみたことはあるのかい?」

「あるある。でも威力だけは大きいけど、使う場面のない魔法だわ。海で試し撃ちしたら、津波が起きて死にかけたんだぞ? ダンジョンで使えば崩れるだろうし、フィールドでも味方を巻き込みそうだし。おまけにコストはマジックポイント全部とヒットポイントのほとんど。実戦で使ったことはさすがに一度もないなー」


 レイカとエルが顔を見合わせる。


「まーでもこの魔法作ったペペさんは、魔境で試し撃ちしまくってドラゴンその他の強大な魔物を好き放題吹き飛ばすんだそーな。で、冒険者でもないのにレベルカンストとしてるんだってさ。ぶっ飛んだエピソードだよねえ。すげーと思わない?」

「どうして買ったんだ?」


 ハオランがボソッと言う。


「最強魔法のことかな? ネタとして面白そうだったから」

「うん、これはユーラシアを責められない。ボクもそんなすごい魔法を買える機会があったら、実用性がないことをわかっていても好奇心で買っちゃうと思う」

「同志よ」


 エルとハグする。

 こいつ本当におっぱいないのな。

 可愛そうに。


 何事か考えてたジンが言う。


「ペペさん、というのは、若年にしてケイオスワードの真理を解き明かしたという、あの『パワーナイン』の一角の魔道士ですか?」

「パワーナインというのは知らないけど、すぐオリジナルの魔法とかバトルスキルとか作ってくるかなりおかしい人だよ。でも傾向としてロマン溢れる効果のデカい魔法が好きみたいなんだ。この前の掃討戦もバイト料目当てで参加しててさ。魔法撃つと地形変わっちゃうからって、でっかい杖でプチプチ魔物潰してた」

「魔道士の戦い方じゃない……」

「ところでパワーナインって何かな?」


 重要そうなワードの気がする。


「ドーラの九人の実力者の総称です。身近なところでは、塔の村の村長も含まれていますね」

「ふーん、他にどんな人が入ってるの?」


 デス爺が実力者なのはよく知ってるけど。

 ジンが説明してくれる。


「や、僕も詳しくはないですが、『黒き先導者』にレイノスの副市長と船団長、聖火教のトップなどですよ」


 パラキアスさんも当然として、レイノスのオルムス・ヤン副市長や聖火教大祭司のミスティさんもか。

 ふむふむ、ピンクマンがこういうのよく知ってそうだから、今度会ったら聞いてみよ。

 今後あたしに関わってきそうな人達だと思う。 


「私の番か。緊張するな」


 熱血暴走少女レイカが立ち上がる。


「といっても、特段紹介するようなこともないのだ。カラーズ赤の民の村出身で、冒険者を志し塔の村まで来た。以上だ」

「こらっ、ちょっと待て! 何にも伝わらないだろーが!」


 早くも着席しようとするレイカを止める。


「しかし、語ることなど何もないのだが」


 困惑するレイカだが、口下手にもほどがあるだろ。


「あたしも西アルハーン平原掃討戦で初めてレイカを知ったから、長い付き合いではないよ? けど語ること盛りだくさんだわ。掃討戦の最後に強敵がいてさ。そいつに通用するスキルをうちのパーティーしか持ってなかったから前線に立ってたんだけど、クララがスタン食らって『精霊のヴェール』が間に合わない、ピンチ! っていう時にバツグンのタイミングで支援魔法くれたんだ。それでレイカはセンスあるって思ったんだよ」


 レイカの顔が髪の毛と同じくらい赤くなる。


「で、当日の祝勝会で、血が滾らない方がおかしいだろうがー冒険者になるーって騒いで、次の日にはもうここに来てた」

「え? カラーズからではかなり距離ありますよね?」

「デス爺の転移魔法で」

「ああ、なるほど」


 納得するジン。


「長距離を転移転送で移動できるってのは実に便利だよねえ。五日前、あたしも『アトラスの冒険者』のクエストで転送魔法陣が設置されてさ、ここ塔の村に来られるようになったから、早速来てみたんだよ」

「ところで『アトラスの冒険者』というのは何なんだい? 今頃になって聞くのは申し訳ないけれど」


 エルからの質問だ。

 『アトラスの冒険者』は向こうの世界の事業のはずだが、エルは内容を知らないようだ。

 いや、レイカパーティーも皆知りたそうだな。

 考えてみりゃあたしも『アトラスの冒険者』になるまで知らなかったしな?

 パワーナインとは『マジック:ザ・ギャザリング』というトレーディングカードゲームの初期に登場した、9枚の超強力なカードを指す言葉からいただきました。

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