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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第164話:ちょんまげ精霊

 塔のダンジョン最下層入り口フロアにある階段を昇る。


「ふーん、なるほど。こうなるのか」

「転移に近いですねえ」


 昇ってきたはずの階段が跡形もなくなったのだ。 

 うちのパーティーには転移の玉があるけど、自力で脱出する手段を持ってなかったら、結構緊張感のあるダンジョンだな。

 とゆーか、この仕様だけで初心者に嫌がられるだろ。


「ボス、モンスターね」

「しかしザコだぜ」

「まー浅い階層からボスクラスの魔物がいたら笑えちゃうしな」


 見渡せば魔物は食獣植物や殺人蜂などだ。

 〇階でレベル五程度まで訓練したパーティーだったら、単体で現れたやつを狙えば普通に戦えるな。

 情報が豊富に出回ってるなら、状態異常攻撃についてもわかるだろうし。


 脱出口のある五階までは、出現する魔物に変化はないってことだった。

 確かにレイカが苦戦しそうな相手じゃないが?


「張り切り過ぎるとマジックポイントを切らすことはあるかもな」

「……踊る人形が複数体出て魔法を集中して浴びせられると、レベルの低い者は危ないかもしれません」

「あり得るね、さすがクララ。レイカのパーティーを探すことが最優先だよ。通路の狭いとこで偶発的に戦闘になるケース以外なら戦闘は避けられると思うので、不必要に戦わないこと。あとは通路の端々までチェックすることね」

「「「了解!」」」

「でも素材とアイテムはしっかり回収してね。冒険者の義務だから」


 笑うな。

 あたしは経済観念の発達した冒険者なのだ。


          ◇


 レイカ達は簡単に見つかった。

 一階の隅だったので、確かに見つけるつもりじゃなかったら見逃してしまった可能性はあった。

 ただし置かれている状況が尋常ではないぞ?


「……何やってんのよ?」

「おお、ユーラシア! 待ちかねたぞ!」


 待ちかねられていた。

 現場にはレイカと男の子二人、それから精霊が一人。

 男の子二人はレイカが誘ったパーティーメンバーだろう。


 で、何故かレイカと精霊がにらめっこしているのだ。

 どゆこと?

 いや、精霊は顔を背けているからにらめっことは違うか。

 レイカがキスしようとして精霊が嫌がってる感じ?


「えーと、じゃああとはお若いお二人で?」

「こらこら、放っていくな」

「何なのよ? 状況がわからん」

「僕らから状況を説明します。ここで精霊を見つけまして、どうしてだか身動きが取れないようなんです」


 濃い青の髪の比較的背の高い子が簡潔に説明してくれる。

 おそらく白魔法を使えるという剣士の方だろう。

 だが木刀一本を持っているだけで、およそ冒険者らしいところがない。

 いや格好のこと言ったらあたし達もほぼ手ぶらだけど。

 冒険者始めたばっかりだとこんなもんかもな。


「精霊、理由も状況も話さない」


 ぶっきらぼうな物言いの体格のいい子。

 こっちが拳士だな。

 どことなく黄の民の無骨さを思わせる。


「皆心配してたんだよ。レイカ達が帰ってこないって」

「うん、まあそうなればユーラシア達が我々を捜索しに塔に入るだろうなって思ったんだ。今日来ることは知ってたから」


 苦笑い。

 確信犯かよ。


「他所の冒険者のテリトリーだから、塔に入るのを遠慮していたのだろう? 理由があれば堂々と入れるしな。どうせユーラシアは塔のダンジョンにも興味があるに決まっている」

「まいったなー。完全に読まれてたわ。ところで君達名前は?」

「ジンです」

「ハオラン」


 剣士がジンで拳士がハオランか。


「二人ともなかなか素質あるって聞いたよ。先々楽しみだね。じゃあ行こうか」

「ちょまちょまちょまっ! おいちゃんを助けておくれよ!」


 精霊が急に喋り出したのでジンとハオランが驚いている。

 このヘアスタイルちょんまげの精霊は、あたしがいれば他にノーマル人がいても割と喋る子のようだな。

 カカシと同じタイプだ。


「ごめん、忘れてた」

「忘れるて忘れるて! 最重要案件でしょお?」

「知らんがな。で、あんたはこんなところで何をいちびってるの?」

「おいちゃんのどの辺がいちびってるのよ!」

「ちょんまげ?」


 レイカが割って入る。


「漫才はいいから、どうにかしてやっておくれよ」

「エンターテインメントが生きがいなんだけど。まあいいや」


 ちょんまげ精霊を無造作に引っ張り、壁から剥がす。


「皆離れて。クララ、お願い」

「はい、ウインドカッター!」


 手を当ててみてももう引っ張られる感じはない。

 よし、いいだろう。


「やあ助かった助かった! ありがとありがと!」


 大喜びするちょんまげ精霊を見ながらジンが聞いてくる。


「今のは何でしょう? 後学のために教えていただきたいのですが」

「ファントムバインド。精霊が捕まると逃げ出せなくなる、閉回路になってる魔力の罠だよ。実体を持つ人間だと危険はないから引っ張ってやればいいんだ。でも精霊は基本的に人間と接触持つのを嫌がるから、もし見つけたらあたしみたいな精霊親和性の高い者、具体的にはデス爺かエルに知らせてくれるといいな」

「最後の風魔法は何ですか? 正直、僕には意図のわからない作業なのですが」

「魔力の流れが正常化すればファントムバインドは消えるんだ。解除するには魔法ぶつけてやるのが一番簡単なの」


 レイカが感心する。


「ユーラシアは物知りだな」

「いや、これかなり稀な現象のはずなんだよ。でもうちの子の内二人が以前引っかかったことあってさ。それで知ってたの」


 レイカパーティーの三人が納得したようだ。

 さて、レイカパーティーと合流を果たしたし、あとは帰るだけだが?


「では、行こうか。目指すは五階の脱出魔法陣だ」

「ジンとハオランはレベルいくつなの?」

「二人とも二です」


 レイカがいるとしても不安なレベルだな。

 きっと熱血に浮かされて、〇階でのトレーニングをおろそかにしたに違いない。

 でも開かれたばかりの塔の村が発展するためには、レイカパーティーが働くのが一番ではあるんだよな。

 エルのパーティーは精霊で構成されてるから、ふつーの冒険者が近寄りがたいかもしれないし。


「せっかくだから、パワーレベリングしながら五階脱出口を目指そうか。魔物は全部こっちで片付けるから、レイカパーティーの三人は防御さえしてくれればいいよ。魔物ドロップはそっちのものでダンジョンのアイテム・素材はこっちのもの、どう?」

「うん、了解だ。お願いしよう」

「よーし、出発!」

 パワーレベリングはユーラシアの得意技になります。

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