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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1638話:サイナスさんは鋭い

「合言葉いきまーす! 『しっちゃか』」

『……『めっちゃか』』

「おお、何の打ち合わせもないのに、サイナスさんすげえ! 尊敬する!」

『オレも君と付き合っていて、大分超常能力を獲得した気がするよ』

「あたしと付き合ってだなんて、いやん」


 気兼ねなく、アハハと笑う夜中かな。

 いや、笑うのに気兼ねなんてしたことないけど。


『どうしたんだい? 今日は御機嫌だね』

「まー大体あたしはいつも御機嫌だよ」

『ルキウス皇子の結婚披露で、よっぽど君好みのハプニングが起きたということか?』

「ハプニングなんて起きないわ。今日はあたしが主役じゃないから、ヒロイン補正が適用されないんだわ」

『なるほど』


 こういう理屈だと、サイナスさんも一発で納得してくれるのな?

 とゆーことは、あたしが主役の場面ではハプニングが起きるのが当たり前と考えてるわけか。

 あたしは笑いの神様が贔屓筋なので、あたし自身も否定できない理屈ではある。


『黄色い冒険者の妹さんと、帝都でパレード見物という話だったな』

「そうそう。ギルドで落ち合ってイシュトバーンさん家飛んで」

『ああ、イシュトバーン氏も同行か』

「いや、パレードの様子を取材したいレイノスの新聞記者と待ち合わせだったんだ。イシュトバーンさんはお留守番」

『氏は好奇心旺盛な人なんだろう? 留守番というのは意外だな』

「あたしも誘ったんだけど行かないって。何でだと思う? 理由が振るってたよ」

『……ちょっと思いつかないな。人混みが嫌いとか君のトラブルに巻き込まれたくないとかじゃないんだろう?』

「後ろの理由何なんだ。イシュトバーンさんはあたしのトラブルに巻き込まれたい人だわ」


 サイナスさんたらこれだけあたしと毎晩通信してるのに、全くイシュトバーンさんを理解してないんだから。


「答えいきまーす。いい女が他人のものになる儀式を見させられて、何が面白いんだかわからないって」

『氏の生き様を感じさせる回答だな』

「ほんとそう。印象に残った答えだったからさ、ぜひ後世に伝えなきゃと思って」

『大袈裟な』

「見習わないとなー。あたしも受け手の心に刻みつけるような返しがしたいんだよね。『精霊使いユーラシアのサーガ』を面白い本にするために」

『それもユーラシアの生き様を感じさせる珍回答だからな?』


 珍回答だったか。

 面白要素はあった方が本は売れそう。


『どうせ大勢の人でごった返していたんだろう? よく見えたかい?』

「帝都ではあたし達のために、警備用の馬車を用意してくれたんだ。特等席からパレードを見物できた。ありがたいことこの上なし」

『どうして警備を外してまで馬車を君に融通したんだろう?』

「代わりに不測の事態が起きた時は助けてくれって言われた。あたしがいる方が安心だからって」


 騎士も総出だったのだ。

 確かに騎士で対応できないアクシデントが起きたとしても、あたしなら即応できる可能性が高い。

 近衛兵長さんの判断は正しい。


『トラブル解決能力を高く評価されてるなあ』

「えへへー、エキスパートだからねって違うわ! トラブルメーカーじゃないわ!」

『もうそのノリはいいよ。つまり何か起こる可能性が高いと、警備担当者に思われていたイベントなんだな?』

「かもしれないね」


 あたしも細かい帝都の事情や人間関係は知らんしな。

 実際にはパウリーネさんのヴェールが風に飛ばされただけで、他に何も起きなかったけど。

 ……いや、何か不穏な計画はあったけど、プリンスルキウスのレベル五〇『威厳』が未然に押しとどめたということはあったかもしれない。

 今となっては知ることができないな。


「もう一人、向こうで伯爵令嬢ニライちゃんと合流したんだ」

『スライムの子だな?』

「うん……スライムの子って結構なパワーワードだね」


 まあいいけれども。


「伯爵夫妻が結婚式に出席、天才剣士兄ちゃんも警備でいないから、あたしに遊んでもらえってことだったみたい」

『随分雑で、よくわからない展開だね』

「あたしに振っときゃ何とかなると思ったんじゃないの? あたしへの信頼感が溢れているというか」

『破れかぶれだったんだな?』

「一か八かだったんだよ、きっと」

『どこが違うかわからない』


 ニライちゃんを言い聞かせられない、時間もないってことで、苦し紛れだったんだろうけどな。

 裏町の屋台は楽しかった。


「スライムは普通に飼えてるみたいなんだ。ニライちゃんも個性的な子だから、時々遊んでやりたいな。結婚式終わったから領地に帰っちゃうかもだけど」

『おかしいな?』

「えっ、何が?」

『今話を聞いてる限りだと、君が上機嫌になる理由がないんだが。まだ隠し玉があるんだろう?』


 何でサイナスさんはこんなに鋭いのか。

 何でサイナスさんはこの鋭さを灰の民族長として発揮しようとしないのか。


「エンタメ要素らしきものが二つ浮上したんだ。明日施政館に呼ばれてるってことと、ルーネの新しい友達と会えること」

『施政館って、また君何かやらかしたのか?』

「違うとゆーのに。来月の頭からプリンスが次席執政官に復帰するとか、ラグランド総督ホルガーさんの任期が切れるとかあるじゃん? 主要閣僚や植民地総督とかの高官のポスト入れ替えるみたいなんだよね」

『ユーラシアに何の関係が?』

「あたしも役をもらえちゃうというもっぱらの噂」


 しばしの沈黙。


『……いいのかい? 第二皇子中心の政権に利用されるだけだろう?』

「とゆー考え方もあるけど、あたしも有力者と会うのに肩書きはあった方がいいとゆーか」

『トータルで得という判断か。皇女の友達というのは?』

「プリンスルキウスの母方の実家ドレッセル子爵家の令嬢だそーな。プリンスの代わりにドレッセル子爵家に出入りしていたウルピウス殿下が、ルーネの友達としてどうかって薦めたんだって。一クセありそーな気配がするから楽しみで」


 ラグランドが一応の解決をみてから大きな事件がない。

 プリンスの結婚イベントも終了だし、ささやかな楽しみを発掘していかないとな。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日は施政館。

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